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頭脳と異能に筋肉で勝利するデスゲーム<Ⅱ>  作者: もちもち物質
第五章:地獄の沙汰もバカ次第
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ゲームフェイズ2:天井裏4

「うわああああああああああああああ!」

「おわあああああああああああああああ!?」

 そうして、バカと四郎の絶叫が天井裏に響き渡った。

 ついでに、リンゴン、リンゴン、と、鐘の音も響き渡った!




「どうした!?」

「何かあったのか!?」

 ということで、当然、バカと四郎のバカデカい絶叫は海斗とデュオの耳にも届き、2人がばたばたと駆けつけてきた。

「火が!」

「火が!」

「火がどうした!?」

 ……そして、海斗とデュオも、見つけることになる。

 カンテラの中、一生懸命にぴょんぴょこぴょん、とやっている、火の姿を!


「うわあああああああああああああ!?」

「うわっ……あー、そっか、そういう……?」

 ……そうして、海斗は遠慮なく、デュオは慣れ故か控えめに声を上げることになったのだった!




「成程。つまり、これが、むつさんだ、と」

「うん!俺、そう思う!だってむつの匂い、するもん!」

 ということで、バカは早速、ランタンの中からむつの魂と思しき謎ファイアーを取り出して肩に乗っけつつ、そう主張した。

「まあ……火がそういう風に手づかみできて、肩の上に留まっているところを見るに、どうも、そういうことらしいが……あの、魂って、こういうものなのか……?」

「……俺も、デスゲームにはもう何度も参加してるけど、こういう風に魂を取り出したことは無いから、何とも言えない」

「……俺も、魂に直で触ったことはそんなにねえよ。つうかなんなんだよ樺島、お前、躊躇なくいくじゃねえかよ……」

 バカ以外は、ちょっと遠巻きにこの状況を見守っている。何せ、魂を手づかみして肩に乗っける奴など、他に居ないからである。そしてそもそも、魂を見たことも無い海斗にとっては、『これは、火……じゃないように見えるが、その、本当にこれが魂……?』というところからの疑問なのだ!

「あー、まあ、それが魂だっていうことは、確かだと思う。思うけれど……その、本当にむつさんなのかな?」

「うん!ほら、むつもそう言ってる!」

 ……そして、バカの肩の上では、魂がぴょこ、と跳ねて主張している。つまり魂も『そうだそうだ』と言っているのだ。これを見てしまったら、デュオも海斗も四郎も、『そ、そうか……』となるしかない!

「いい手触り!」

 更に、バカはむつの魂をちょっと揉んでみた。ふかふかの焼き立てホットケーキみたいな手触りである!

 バカは、『むつの魂は……ちょっとぎっしりでふわふわしたかんじ!』と、にこにこ笑顔である。バカは海斗やミナや土屋の魂も揉んだことがあるが、それぞれ異なる手触りだった。特に、海斗の魂は若いススキの穂みたいなすべすべしっとりの手触りで、『毛並みがいい!』と思った覚えがある。

 だが。

「……樺島。もしそれがむつさんの魂だというのならば、それはセクシャルハラスメントじゃないか……?」

 海斗は海斗で、この状況に混乱しつつ、適応していた。なので、火の玉を揉むバカを見て、そういう結論に至ったのだが……。

「……そうかもしれねえ!うわあ!そうだった!むつは女の子なんだった!」

 バカは、『ごめぇええええん!』と絶叫した。しこたまうるさい。火はバカの声量に驚いたのか、バカの肩の上で『ぴゃっ』と跳ねた。

「……人間っぽい魂であることは間違いないね」

「そう、だな……」

「……俺は頭が痛くなってきたぜ。なんなんだこりゃあ」

 バカが謝り、むつの魂が『いいよいいよ気にしないで』とばかりゆらゆらしているのを眺めて、残された者達は、只々、困惑するのだった……。




「よ、よし。じゃあもうその火の玉はむつさんの魂だ、として話を進めるぞ!」

 やがて、開き直った海斗がそう切り出した。なのでバカは正座して、頭の上にむつの魂を乗っけたまま真剣に海斗に向き合うこととした。むつの魂もお行儀よく、バカの頭の上でちょこんとしていた!

「……まあ、分からないでもない、とは思うよ。ほら、彼女が入っていたこのランタン、『9』のアルカナルームにあった訳だから。燕の腕輪は『9』だったよね。だから、まあ……彼が『9』の部屋にむつさんの魂を隠した、ということなんだと思うけれど」

 デュオも、ちょっと開き直ったのか、バカの向かいあたりで脚を投げ出して座って考え始めた。

「その場合は……ええと、順序としては、『燕がむつさんの魂をランタンに入れる』、『燕がランタンを9番アルカナルームに隠す』、『燕が天井裏の隠し部屋に戻って、そこで自分の魂をむつさんの体に入れる』ということになる、のかな」

「そうだな。ついでに、それらを全て、『ゲーム開始前に』行った、ということになると思う」

 海斗もちょっとお行儀よく座って……そして、頭を抱えた。

「……いや、どうやって……?」

「……ゲーム開始前にエレベーターを動かさないと、『9』の部屋には到着できない、よね……?」

 デュオも、頭を抱えた。四郎は天井を仰いて『あー……』とぼやいているし、バカは首を傾げた!

「9番アルカナルームに向かうためには、『ケセド』か『ティファレト』の個室を使う必要がある。……つまり、四郎さんの個室か、むつさんの個室だな」

「まあ、その2択だったらむつさんの個室を使うだろうね。うーん……けれど、ゲーム開始前にエレベーターが動いていた、っていうことは、無いわけだしなあ……」

 更に、デュオと海斗はまた頭を抱えて『あああー』とやっている。

 だが。

「そんなの簡単だろ。燕は悪魔だから、俺達が目覚めるより前に動いていた。そういうことじゃねえのか」

 四郎がそう言ったことによって、海斗もデュオも、そっと、視線を四郎にやった。四郎は四郎で、どっかりとその場に胡坐をかいて座っており、そして、堂々としている。

「ゲーム開始前、お前らが起きてからゲーム開始までの間に、エレベーターが動いてたか?動いてりゃ、気づくだろ?」

「……まあ、そうだね。俺達も、ゲーム開始前の天井裏の状況を全て確認できていたとは言えないけれど……流石に、エレベーターが動いていたら、気づくか」

「そもそも、最初から樺島が大暴れしていたからな……。その状況の中でエレベーターを動かしたら樺島に見つかるおそれがある。そんなリスクは冒さないだろうな……」

 バカは、ちょっと考えてみたが、やっぱり、バカが起きてからの間に、エレベーターが動くことは無かったように思う。

 というよりは……そもそも、動かせないのだ。ゲーム開始前、各個室の操作盤は『残り時間』の表示があるばかりで、階層のボタンは無いのだから!

「……『21』の部屋には、『ダァト』の個室から行けるんだったな?アレを使う、というのは……」

「それにしたって、同じことだろ。それも『ダァト』の個室がエレベーターになるんだから、それが動いてねえとおかしい」

「ああ、そうか……うん。そうなるといよいよ、ゲーム開始前の、更にその前に燕が動けていた、ということになる、のか……」

 皆でしばらく、唸っていた。……どうにも、決定打になりそうなものが見つからない。




「あっ……お、おい、むつさん、それ、大丈夫なのか?」

 が、そこでふと、海斗が声を上げる。おや、と思ってむつの魂を見てみると……。

「あ、ああっ、むつ!大丈夫か!?元気ないのか!?」

 ……なんと。むつの魂が、サイズダウンしてしまっている!


「ど、どういう状況だ!?縮んだが!?」

「わ、わかんない!あの、むつ!むつ!しっかりしろぉ!」

 如何せん、謎ファイアーが相手であるので勝手が分からない。が、どうも、縮んでしまって、ちょっと弱った様子で、ちろ、と炎を揺らめかせているむつの魂を見る限り、どうも、元気とは言い難い様子である。

「……まあ、そりゃそうだろうな」

 だが、この状況を見て、四郎は険しい表情ながら、悲しそうな眼でむつの魂を見つめていた。

「この魂を抜き出した悪魔が燕だった、ってことなら……その燕が死んだ今、この魂はもう、誰にも管理されてねえ魂だ。当然、ほっといたら消える」

「えええええええええ!?むつ、消えちゃうのぉ!?」

「そりゃ、悪魔が手ェ加えてねえ状態に戻るに決まってんだろ」

 どうやら、この手のことは四郎が詳しそうである。四郎はそう言って、ふう、と重い溜息を吐いた。

「いいか?普通、人間ってのは死んでも魂がこういうフヨフヨした状態になるモンじゃねえだろ?こういう風になっちまうのは悪魔が手ェ加えた時だけだ。これは自然な状態じゃ、ねえんだよ」

「……そうだね。俺も、それは知ってるよ。つぐみを戻すために色々と調べたからね」

 デュオも四郎と同じくらい険しい表情になったのを見て、バカは思い出す。確か、デュオは……否、天城は、『つぐみを戻そうとしたが、魂をただ戻そうとしても抜け殻のような状態のままだった』と言っていたのだった。

「じゃ、じゃあ、むつは……」

 バカは、『むつは、死んじゃうのか?』と聞こうとして、でもなんか違うのか、と、言葉を途切れさせた。

 ……『死んじゃうのか』という点については、『もう死んじゃってる』のが、正しいのだろう。こうして、魂だけがある状態になっている人間は……生きている、とは、言い難いのだから。

「……だが、燕の管理が消えたからこそ、今、むつはこうやって意思表示できたんじゃねえのか。お前が、燕のこと褒めてんの聞いて、ぴょこぴょこ元気に……」

「ああぁ……むつぅ……」

 バカが打ちひしがれていると、ふと、バカの手の上でむつの魂が、ふよ、と揺れた。『気にしないでね』というかのような、温かな光が、ぽや、とバカの掌の中を照らす。

「……悪いことじゃ、ないと思うよ。少なくとも、むつさんの魂が他の悪魔の手に渡るくらいなら、まあ、このまま自然に消えてしまった方がマシなのかもしれない」

「そうだな。自然なままにしときゃ、雲の上で天使になるかもしれねえし、野生のショベルカーとかになるかもしれねえし……」

「……うん」

 バカは、そっと、むつの魂を撫でる。ぽや、と、焼き立てホットケーキのような温かさと柔らかさが指先に伝わってきた。


「なあ、むつ……」

 バカは、掌の中のむつの魂に話しかける。

 むつの魂は、どんどん小さくなって、ちろ、と小さく揺れて……今にも消えてしまいそうだった。だが、彼女が消えてしまう前に、なんとかして、伝えたかったのだ。

「あの、燕は、むつのこと、ちゃんと友達だと思ってるみたいだぞ。だから……」

 ……むつの魂が、一瞬、ぱっ、と明るく光った。

「……だから、次は、絶対に、2人とも、仲良く、やっていられるように……俺、頑張るから……」

 バカの声が、最後まで聞こえたかは分からない。

 ただ、むつの魂は、バカの掌の中から消えてしまっていた。

 ……ふっ、と暗くなってしまった空間の中、バカはただ、しょんぼりと、座り込んでいた。




 ……しばらく、誰も何も言わないままだった。

 バカはしょんぼりとしていたし、他の皆も、何かお喋りするには……あまりにも、暗かったのだ。

 むつが居なくなってしまって、本当に、天井裏は暗かった。ただぼんやりと、光の線が床に走っているだけで……それだけでは、人は、明るい気分にはなれやしない。

 だが。

「……逆かもしれない」

 ふと、デュオがそう言った。

 バカは、『何の話だ……?』と思ったが、どうやら、むつの魂が消えかけていってしまう時の前の話の続き、であるらしい。バカはもう、そこらへんは忘れているが……。

「燕がどうやって、むつさんの魂をランタンに入れて『9』のアルカナルームに隠しに行ったか、っていうことを考えたんだけれど……俺達に気付かれずにエレベーターを動かす方法があるとすれば、それはやっぱり、四郎さんが言う通り、俺達より先に燕が動いていたからだと思うんだ」

 デュオは、まだちょっと暗い表情ながらも、冷静だった。悲しみはあるのだろうが……前を向いて、進もうとしている。

「けれどそれは……『燕が』先に動けていたんじゃなくて、『俺達が』遅かった……つまり、長く寝ていて、目覚めるのが遅かった、っていうのは……どうかな」

 バカはぼんやりと、『そういや俺、一周目はちょっと寝坊してたけどなあ……?』とふと、あんまり関係ないことを思い出したが……。

「つまり、むつさんの異能が、『俺達を眠らせる』ような異能だったら、それは十分可能だったと思うんだよね」

 ……デュオの発言に、バカは『そういうのもあるのか!』とびっくりした。同時に、少しばかり活力を取り戻す。

 そうだ。バカは、前を向いて頑張らねばならないのだ。……むつと、約束したのだ。ちゃんと、むつと燕が2人揃って仲良くやれるように頑張る、と。

「まあ、それを確かめるには……むつさんに聞くしかない、けれどね」

「そう、だな……」

 が!バカが活力を取り戻そうとも、もう遅い!

 むつに聞きたかったことがあっても、むつはもう、消えてしまったのだ!バカは『俺がバカやったばっかりに!』と嘆いた!

 ……が。


「……まあ、そういうことだ、樺島」

 そんなバカの肩を、海斗がちょっと強めに、ばし、と叩いた。

「お前は『次』、なんとかしてむつさんを確保しろ!」

 ……今回はダメでも、『次』は、まだある。

 バカが諦めない限り……『次』は、ずっとあるのだ!

 つまり!バカはまだ、頑張れる!

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― 新着の感想 ―
しょぼん。でも夜空を見上げて、あれがむつの野生のショベルカー星座だ、とでっち上げて次回に期待するしかない。今回もみんな一筋縄ではいかないなあ。
一周目は燕がむつ部屋スタートダッシュ→むつが異能を使って眠らせる、ならバカ君のお寝坊は筋が通るけど真っ先にその異能を使わせる理由がなあ…まさかバカ君の一周目が燕のやり直した二周目だったりする? 燕の異…
かにたまがいるんだから、ショベムツがいたって良い。 何なら燕が操縦者になって2人でキューティラブリーエンジェルに入社すればOK。
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