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頭脳と異能に筋肉で勝利するデスゲーム<Ⅱ>  作者: もちもち物質
第五章:地獄の沙汰もバカ次第
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ゲームフェイズ2:『20』審判2

 バカ達は、暫し、燕と見つめ合っていた。だが……。

「燕……!」

 バカが声を掛けようとしたその瞬間、四郎と七香が、動いていた。


「……容赦、ない、じゃん」

「……一撃で殺さなかったのは、『容赦』だけどな」

 七香が見えない手で燕を押さえつけ、そこに、四郎が放った氷柱が飛んだ。

 燕は一撃で首を切断されこそしなかったが……その胴が氷柱に圧し潰されているところを見ると、もう、助からないだろう。

「まあ、彼がこの姿で復活した、っていうことは、魂が元々入っていた体が再現される、ってことかな。俺やタヌキが死んだ場合も検証してみたくはあるけれど……」

「デュオさん!?何かとてつもなく不穏なことを言いませんでしたか!?」

 デュオが呟くと、タヌキが尻尾を『ぼわっ』と膨らませて慄いた。バカも慄いた。『死んで検証とかしようとするのやめようよぉ!』という気持ちでいっぱいである!

「さて……燕。『むつ』さんはどこに居る?」

「答える訳、無いだろ」

「それはそうか」

 一方の燕は、デュオの問いにもすげない調子である。デュオが肩を竦めてみせると、燕は苦い顔をした。

 そして。

「どうせ……俺が死んでも、『やり直し』する、んだろ」

「えっ、知ってたのか!?」

 燕の言葉に、バカはびっくりした!

 なんと!燕は、バカが『やり直し』をすることを知っているらしい!これは一体、どういうことだろうか!


 だが。

「あー……まあ、悪いけど、そこは騙されないよ」

 デュオがちょっと笑って、燕の顔を覗き込んだ。

「君、樺島君の異能を『元々』知ってたわけじゃないね?さっきの会話の中で推測して、カマを掛けた、ってところかな。或いは、今、俺達がこうやって『検証』をしている以上、『二度目』が無いとおかしい、ってところか……」

 デュオの言葉に、燕は答えない。……燕は、こういう時に返事をしてくれないのでコミュニケーションが取れなくて、困る。バカとしては、非常にやりにくい相手である!

「そ、そうか?僕は『元々』知っていたとしてもおかしくないと思うが……」

「いや、おかしい。そうじゃなきゃ……彼が初手で樺島君の異能をコピーしに来ないのは、おかしいから」

 海斗もデュオの話を聞いて『あ、ああ、そうか……』と納得したらしい。バカは割と最初の方から理解を諦めて『ほげえ……』とやっているので、あまり関係が無い。

「とはいえ、君の言う通りだ。俺達は『やり直し』をすることになる。……そう分かっていたから、結構無茶な行動に出た、ってことかな」

 デュオはまた問いかけるが、燕は答えない。……答えられない、のかもしれない。氷柱に圧し潰された燕の体は、もう、限界に近いのだろうから。

「……君、言い残すことはある?」

「無い」

 ……それでも、燕は最後まで、この調子だった。この調子のまま、また、死んでしまった。

 バカは、『もっと上手くやる方法、無かったのかなあ……』と、しょんぼりするのだった……。




 ……それから、バカ達はまた、大広間へ戻った。

 そして。

「……ということで、その……樺島がこのデスゲームを何度もやり直して、最善の終わり方を目指している途中、という訳だ。理解してもらえただろうか……」

 海斗が、五右衛門やヤエや四郎、そして、『実は私、イマイチ事情が分かって無いんですけど……え?分かってるわけないじゃないですか、私、デュオさんが私のボディで起業してたとか、私と七香さんが元々知り合いだったとか、そういうところでいっぱいいっぱいですけど……?』とちょっと恨みがまし気なタヌキに色々と説明した。

 バカは、『タヌキも色々分かってなかったのかぁ!』と大変びっくりした。てっきり、分かってるモンだと思っていたのだが!タヌキが今の今まで協力してくれていたのは、単に、タヌキの人の好さ故だったらしい!バカはまたもう一段階、タヌキへの信頼を深めた!このタヌキは信頼できる!良すぎるタヌキだ!

「ま、まあ、信じらんない話だけどぉ……でも、そう考えると、まあ、アタシとヤエちゃんの事情知ってたのとか、四郎ちゃんとさっさと仲良くなっちゃったのとか、そこらへんに納得がいくのよねぇー……」

 そうして、五右衛門はひとまず、納得してくれたらしい。バカは、『よかった!』とにこにこした!

「あー……なんつうか、天使にしても、なんか妙な奴だとは思ったんだが……成程な、そういう異能を持っていて、そういう任務を背負った奴だった、ってことか……。納得はいったぜ」

 更に、四郎もなんか呆れつつ、しっかり納得してくれたらしい。バカは、『え?俺、妙な奴なのぉ……?』と、ちょっと不服である!

「私もなんかやっと色々分かりましたよぉー!もう!もっと早く説明してくれてもよかったじゃないですかぁ!もう!」

「ごめん。俺としても、まだ『誰が本当に味方なのか』が確定しきっていない状況だったから。むつさんが燕で敵対関係、っていうのが確定するまでは、あんまり説明したくなかったんだよね……ははは……」

 ……そして、タヌキはデュオに向かって、『もう!んもう!』と怒りのぽんぽこパンチを繰り出している。短い前脚から繰り出されるパンチは、まるで攻撃力が無い。ぽぬぽぬぽぬぽぬ、となんとも気の抜けた音と共にパンチされていたデュオは、そっとタヌキを抱き上げて、そのまま七香に預けた。七香は粛々とタヌキを引き取った。

「私、は……その、まだ、納得、できません」

 そしてヤエは……複雑そうな顔をしていた。

「だって、むつちゃん……なんで、死ななきゃ、いけなかったんですか」

「あー……まあ、あれがむつさんじゃなくて、『駒井燕』だったから、なんだけど……」

「……だったら、私が知りあったのは、『駒井燕』さんだった、ってことですか」

「……そうだね。正確には、『駒井燕がむつさんを模倣して演じた嘘の人格』ってことになると思うけれど。……だから、っていうわけじゃないけれど、ヤエさんが仲良くなった相手は、そもそも、最初から存在しなかった。そういうことになると思う」

 デュオは容赦が無い。だが、容赦が無い分、嘘も何も無い言葉は、それなりにヤエに届いたらしい。ヤエは、こく、と頷いた。……それでも浮かない顔をしていたヤエのことは、五右衛門に任せることにする。

 そして。

「……彼がむつさんを演じていた理由として、俺は『樺島君の異能をずっと知っていたから』だと思っていたんだよね」

「えっ?俺の?」

 デュオがまた新しい話を始めて『どういうことかなぁ……』と考え始めたので、バカは首を傾げる。

 ……すると。

「だから、『やり直し』の中で本物のむつさんと出会っているかもしれない樺島君にバレないように、むつさんっぽく演じていた。そういうことかな、って。……まあ、それだと彼が樺島君の異能を真っ先にコピーしに来なかったのはおかしいから、そうじゃなかったわけだけれど……あー……」

 デュオは、なんとも頭の痛そうな顔をして……ため息を吐いた。

「つまり、俺が原因だね……」

「へ?」

「或いは、海斗かもしれないけれど、多分、俺だ。……『駒井つぐみ』について調べ回っている奴がいる、ってことは、事前に分かってたんじゃないかな。俺、もう、デスゲームの常連みたいなもんだし……」

「じょ、常連……?ちょっとぉ、デスゲームの常連って、それ、デュオアンタ、ヤバい奴だったってコトぉ……?」

「……まあ、ヤバい奴かはさておき、駒井燕にとっては警戒対象だっただろうね。だって、自分自身のことを知っている可能性が高い相手が居る、っていうことだから……。まあ、実際のところ、俺はつぐみの弟のこと、ほとんど知らなかったんだけれどね……」

 デュオは、『ぬかったなあ……』と1人、反省している様子であったが、バカには何が何やら分からない!

「あー……つまり、その、デュオのことは、『駒井燕』も予め知っていた、ということか」

「うん。そういうことだと思う。彼が警戒していたのは樺島君じゃなくて……多分、俺だったんじゃ、ないかな……」

 ……海斗は『そういうことか……』と天井を仰ぎ、デュオは『俺、方々に敵を作りまくってるからなあ……』と俯いた。バカは、『げ、元気出せよぉ……』と2人の背中をぽふぽふやることしかできない!無力!考察とか頭脳戦とかにおいて、バカは……無力なのだ!




 さて。そうして一通り、説明と考察が済んだところで……。

「……まあ、とりあえず、これで今出せる情報は大体、出揃った。後は、『次』の樺島君にお願いするしかないものがかなりあるけれど……ひとまず、天井裏の探索と『リプレイ』を試してみようか。もし『むつ』さんの居場所が分かれば儲けものだけれど……」

 デュオはそう言って、『上手くいくといいんだけれど』とぼやいた。

 ……そう。結局のところ、燕はあまり情報を齎さずに死んでしまった。多分、彼は口を割る気は無かったのだ。それは、バカにも分かる。

 燕は多分、何か、強い信念を持っていた。死んでも守りたいものが……或いは、死んでも達成したかったものが、多分、あるのだ。

 だが……バカは、燕に死なれては、困る。

 バカが目指すのは、そもそもが『駒井燕の救出』なのだ。そして……勿論、燕だけじゃなくて、全員が、幸せに、脱出できなくてはならない。

「……結局、僕達は一度も『むつ』さんを観測していない。本物の『むつ』さんを観測しているのは……樺島。お前だけなんだ」

 そう。『全員』だ。

 燕もそうだし……この場に居ないけれど、むつも、そうなのだ。今、むつがどこに居るのかは分からないが……それでもバカは、本物のむつと会って、話したことがある。

『燕もあれで案外、いい奴なんだよ』と話してくれたむつのことを、バカは忘れていない。彼女も必ず、連れて帰る。

「だから、樺島。お前は『むつ』さんを探せ」

「うん」

 海斗に背を叩かれ、バカは気合を入れ直した。

 ……必ずや、『むつ』も『燕』も、探し出してみせる、と。




 それから、バカ達は天井裏へ向かうことになった。

 七香とタヌキとヤエと五右衛門がエレベーターの操作をやってくれて、バカと海斗とデュオ、そして四郎が、エレベーターの上に乗っかって天井裏へ向かう。

「……なあ、樺島」

 天井裏へ向かう途中、ふと、四郎が声を掛けてきた。

「俺としてはよ、もう、『やり直し』なんざ、やらなくてもいいんじゃねえか、って、思ってんだが」

「えっ……それは困るよぉ、俺、ちゃんと燕もむつも、一緒にここ出るんだから……」

 バカは当然、おろおろするしかない。だが……四郎はそんなバカを見て、苦笑した。

「ああ、まあ、そうだろうな。……いいよ。お前はお前の思うようにやれ。俺が決められることじゃ、ねえもんな」

 ……四郎はそう言って、ふ、と視線を床に落として……ごそ、と、ズボンのポッケに手を突っ込んで、中から財布を取り出した。

 そして、財布を開いて、カード入れであろうあたりを見つめて、きゅ、と、口を引き結んでいる。

 ……バカは、ちょっと気になって、四郎の手元を覗き込んでみた。すると四郎は、『ああ、見るか?』と苦笑しつつ、それを見せてくれた。

「写真だ。俺と、妻と、娘達の」

 そこに写っているのは、幸せそうな家族の写真だ。今より若い四郎の姿と、優しそうな女性の姿、そして……。


「……双子!?」

 バカは、びっくりした。

「いや、年子だ。だがそっくりでなあ。よく、双子か、って言われてたんだが」

 四郎は笑いながら説明してくれたが、バカはそれどころではない。

 そう。それどころではないのだ。何せ……。

「海斗!海斗!海斗ぉ!」

「は?おいどうした樺島……えっ?」

 慌てて海斗を呼び寄せ、海斗と一緒に写真を見ることになったバカは、海斗と一緒に改めて、『わああ……』と声を漏らし……そして。


「これ、知り合い!」

「は?」

「今!うちの社食!バイト!ソフトクリーム大好き!」

 大慌てで説明するあまり、バカの説明は単語のつぎはぎの片言になった。

 だが。

「双子の乙女っていう!悪魔ぁ!」

「はああああああああああ!?」

 バカの説明によって、四郎もまた、語彙を失って叫ぶばかりとなってしまったのであった!

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― 新着の感想 ―
良すぎるタヌキは動画のタイトルにつけたら人気沸騰。 燕の屈託が解明されないと真のゴールにはいけない感じですね。 でも、でも! でも‼ 双子インパクトで全部吹っ飛びましたよ。うわあ凄い、凄いですよこの展…
元天使の自分の娘が拐われたうえ悪魔になってるって聞いたらなかなか絶望指数が高い気がするのですが、現在彼女たちは鍋パやソフトクリーム巡りを経てデスゲームナニソレ状態で悪魔生を満喫しているのである!どうし…
よかったねえ四郎さん 奥さんはいなそうだし仇の悪魔がいるのは間違いないんだろうけど、次の周からは落ち着いて話せる余地があるかな? リプレイ対策が話題に上がってたけど4章の燕(むつのすがた)の反応的に…
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