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66話 その3

「……どういうことですか?」

「……昨日話したように、『教団』にはもう一人人員がいるわけです……! それは我の見立てでは間違いなく幹部なので、シャルルとユッカを合わせて三人になります……! つまり、ユッカは最弱で、シャルルはその次に弱いです……!」

「……そうなんですか」


 アヴィさんのお話とシャルルさんから聞いたお話を繋げてみると、その最後の一人は『教団』の幹部で、私の知り合いの……親しい女性の可能性が高いということです。それに、『集い』の幹部のグレイスさんよりもシャルルさんの方が明らかに強かったので、その方はそれ以上に強いことになりますよね……。

 そう考えていると、夜空さんのほっぺをむにむにしているシエラさんが私に聞いてきました。


「そういえば、ユノは昨日ユッカとなにを話したわけ? ユッカは全然答えてくれないのよ」

「……そうですか。なら秘密です」

「ええ、あの話は秘密よ」

「なによそれ、気になるじゃない」


 不満そうにそう言うシエラさんですけど、すぐに機嫌を直して夜空さんの方に集中し始めます。

 そしてしばらくオルさんたちで癒されてもらったあとは、私たちも歩き出すことにしました。


「あの、ノエルさん? 『月を呼ぶ旅人』を読んでみましたよ」

「そうなんですね! ……その、どうでしたか?」

「とっても面白かったです。『囚われの島』の続編という感じは途中まで全然でしたけど、守護蝶が出てきたところで分かりました」

「えっと、モーティナさんのですね。……私はもう少し先ですけど、ユノちゃんはすごいです!」

「いえ、ノエルさんに続編と教えてもらっていたからです。そうじゃないときっと分かりませんでした」


 そう言ってみると、シエラさんに「ユノにしてはすごいじゃない」と褒められます。ユッカさんもそれに頷いてくれて、オルさんまでなんとなくで「マスターはすごいです」と言ってくれたのです。ノエルさんはなぜかあたふたした感じだったのですけど、私は「頑張ってみました」と言っておきました。


「主様はアホの子ですね! 我は嬉しいです!」

「……? 違いますよ?」

「ならこの大きなアホ毛はなんですか!? ポンコツの証です!」

「えと、違います」

「えへへ、可愛すぎます!!」


 そんな感じで全然お話の通じないアヴィさんですけど、オルさんたちに見つめられていると、目をキラキラさせて「大丈夫です! 可愛いです!」とお話しているのでした。……三人もそんな言葉を聞いて喜んでいました。……いい子です。

 それからしばらく本のお話をしたあとは、学院祭のお話になりました。


「ユノちゃんはなにかしますか?」

「いえ、なにもしません。私もたくさん頑張らないといけないんです」

「「――?」」


 なぜかノエルさんとシエラさんが首を傾げてしまうのですけど、ユッカさんは特に気にせずに言うのです。


「私たちはダンスパーティーでも開こうと思ってるの。夜だけの開催にするから管理もそこまで大変じゃないし、なにより品を落とさずにやってる風には見えるわ」

「んと、そうかもしれません」


 ノエルさんも王族なので、きっと私のようになにもしないのはダメなのでしょうし、大変です。


「あの、当日はユノちゃんも見に来てくれませんか?」

「はい、なにもないので遊びに行きます。お菓子はありますか?」

「……えっと、たくさん用意しておきますね!」

「楽しみです」

「せっかくならエウレウスのお菓子にするわよ。ユノの食べたことがないのがいいわね」

「はい! ユノちゃんが好きそうなのは――」


 そういうわけで、私はノエルさんたちのお菓子のお話を聞きながらまったりと歩いていくのでした。




 校舎に着いたあとは、最後にオルさんたちを抱き締めるノエルさんたちに伝えておきます。


「あの、大事なことをお話し忘れていました。『真我祝福の集い』のことですけど、学院にいた方が全員退学になりました。なのでもう気にしないで大丈夫です」


 そう言ってみると、ノエルさんはオルさんのふにふにに癒されながらも、少し真剣な感じになります。


「……ユノちゃん、ホントですか?」

「はい、ホントです。アヴィさんに聞いたので間違いないです」

「……そ、そうですか。……でも、ユノちゃんが無事なら良かったです!」


 そう言う優しいノエルさんは、オルさんたちのあとに私にもムギュっと抱き付いてきました。私がそんなノエルさんのことを撫でていると、珍しくシエラさんが鋭いことを言うのです。


「もしかして、昨日のユッカとの話は『集い』のことなんじゃない?」

「違うわ」

「……え、そうなのね」


 簡単に騙されてしまうシエラさんに少し肩を落とすと、私は「また明日お会いしましょうね」とお話して、オルさんたちと手を繋いで歩き始めました。ノエルさんたちも「またお会いできるのを楽しみにしてます!」「ユノ? また三人を連れてくるのよ?」と言ってくれているので、楽しんでくれたみたいです。


「オルさん、夜空さん、ルアさん。どうでしたか?」

「楽しかったです」

「……ギュッとしてもらえた」

「……優しいです」


 ……ふふっ、喜んでもらえたみたいですね。……可愛いです。

 いい子なので一人ずつギュッとしたりしていると、三人はお散歩にたくさん満足してくれたみたいで、教室の手前で少し眠そうに目を擦りながら収納魔法に戻ってしまいました。クラウディアさんにはルアさんのことをまだ紹介できていなかったので、『教団』のことをお話しながら紹介したかったのですけど、それはまた今度にします。

 そう考えていると、アヴィさんが私のことをニコニコしながら見つめてきていたので、ほっぺを引っ張ったあとに優しく撫でてあげました。

 そして、教室に入ると今日もミハエルさんとラファエルさんが近寄ってきます。


「ユノ、チャオ~」

「ちゃおです」

「今日も元気そうだな」

「はい、元気そうです」

「そう言うのも癒されるよねー。でもなんか可愛さ上がってる気がするな~」

「たしかに……ここ数日で――」


 まだお二人がどうでも良さげなお話を始めたので、私はそれを遮ってお二人にもしっかりと大切なことを伝えておくのです。


「あの、ミハエルさん、ラファエルさん。……シンさんやイレーネ・ハルツェンさん、フィリー・アルバレスさんのことを覚えてますか?」

「うん、『集い』の人だよね。また見つかったの?」

「いえ、そうじゃないんです。もう『集い』の方が全員退学になったので、学院内はきっと安全です」

「……そういうことか。ユノが一人で蹴散らしたのか?」

「いやいや、ラファエル言い方~」


 なんだか適当な感じですけど、お二人は「よく頑張ったね!」「流石はユノだ」と頭を撫でてきました。なんとなく私はそれに首を横に振ったりしつつ、お二人に改めてお礼を言っておくのです。


「えと、お二人のおかげで危ない時も大丈夫でした。ありがとうございます」

「ううん、僕もあれのこと退学にできてスッキリしたし良かったよ」

「そういうこともあるが、ユノが怪我をせずに済んだのが一番だ」


 優しくそう言ってくれるお二人のことを見つめると、今度は私が頭を撫でてあげました。なぜかそれは笑われてしまったのですけど、本当に頑張ってくれたので助かりました。

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