20話 その1
「ユノ! なんで寝てるの!? 起きて!」
私はとても強いめまいを感じ目を覚ましました。
……うぅ、なんでしょう……。すごく揺れてます……。
若干気持ち悪さを感じながらも、なんとか目を開けてみます。ぼやぼやしていてよく分かりませんけど、誰かが体を揺すってきているようです。……それにしても、力が強すぎます。
「……ぅ……く」
「あ、起きた? おはよ!」
そんな声と共に、私の体の揺れは収まりました。ようやく解放された私は、ぼやけていたピントを合わせると犯人の方を向きました。
「……あの、セシリアさん。どうしてこんなことしてきたんですか」
「え、こんなことってなに?」
……もう、なんで分からないんですか。セシリアさんは鈍感すぎます。
私はため息をつくと、無邪気に微笑むセシリアさんに言います。
「……なんでもないです。セシリアさんはいつ来たんですか?」
「さっきだよ。その子に入れてもらったの!」
そう言い、私の隣にいたアヴィさんのことを見ます。
「そうですか。……アヴィさん、ありがとうございます」
「主様のお願いですからね! 我はなんでも聞きます!」
私は体を起こしてアヴィさんの頭を撫でようとしたのですが、その時にある違和感に気付きました。
「……あれ? アヴィさんはなにしてるんですか?」
「魔剣作りです! 作った魔剣は主様にプレゼントします!」
「あの、作ってくれるのはとても嬉しいです。……でも、そんなに真剣にならなくても大丈夫ですよ」
「いえ! 我にとっては使命みたいなものですから!」
「なんですか、それ……」
私が呆れていると、セシリアさんもお話に入ってきました。
「私も魔剣作りたい! どうやって作るの?」
「……えと、複雑です」
「うん! やってみる!」
「……いえ、そうではなくて……一から説明すると何日も掛かってしまいます。あと、物質生成魔法が5級以上じゃないと作れません」
「そうなの? 私今いくつかな……」
セシリアさんはそう言うと、あれこれ考え始めてしまいます。……あんまり知識が多そうに思えないセシリアさんですが、一応学力試験は32位なので、基本的な知識は豊富です。魔剣作りは普段求められる知識とは違うので、分からないのも無理はありませんね。
とりあえず、悩むセシリアさんに聞いてみます。
「あの、セシリアさん。物質生成魔法で気体は作れますか?」
「うん、できるよ! 物質生成――」
なぜかこの場で魔法を発動しようとしたセシリアさんの口を押さえると、私はやや困り気味に「……今はやらないで大丈夫です」と伝えました。ただ、セシリアさんはそれに対して平気で喋ろうとして、もごもごとし始めます。私も少しやり方を変えるために手を離すと、今度は指をそっとセシリアさんの口に当てました。そして、これはなんとなく意味が伝わったようで、セシリアさんは無言で頷いてくるのでした。
「いいですか? 落ち着いてくださいね? ……物質生成魔法でプラズマは作れますか?」
その質問に対して、セシリアさんは首を横に振ります。ひとまず、私は分かったことを言ってみました。
「……えと、セシリアさんは物質生成魔法が3級です。なので、魔剣作りはまだ無理です」
「えー、やだ。作りたい!」
「無理です」
再度そう言ってみると、今度はなぜかショックを受けたようで、セシリアさんは「そっか……うん、そうだよね。私には無理だよね……」と呟くと、悲しそうに下を向いてしまいました。
……うぅ、どうしましょう。落ち込んでしまいました。ただ3級から5級は流石に大変なので、直ぐには無理です……。
困った私は特に解決策が浮かばなかったので、とりあえずもう少し寝ることにします。
「……あの、セシリアさん。私もう少し寝ますけど、セシリアさんも寝ませんか?」
「え、ユノはまた寝るの?」
「……寝るのは大切です。セシリアさんも寝るならレンさんかアヴィさんのベッドを使ってくださいね。私の隣でもいいんですけど、アヴィさんをどかすのは自分でお願いします」
「分かった。なら私も寝ようかな。……アヴィどいて!」
突然そう言い出すセシリアさんを、アヴィさんは「黙れ!」と一蹴してしまいました。ひとまずそれらはお二人に任せて、私は再度横になると目を瞑りました。
「いいからどいて! 魔剣を作るのはどこでもできるでしょ!」
「頭が高いぞ凡人! 我に気安く話し掛けてくるな!」
「なにそれ、ひどい!」
なんだかセシリアさんでは敵いそうもないので、私が言うことにします。
「アヴィさん、ベッドから降りてください」
「分かりました! 我は偉いので主様の言うことはしっかり聞きます!」
ただ、アヴィさんはそう言ったまま動かずにいたのですが、私が目を開けてそちらの方を見ると、流石にどいてくれました。その間セシリアさんは「早くどいてよ!」と急かしていましたが、あまり効果はなかったようです。
そうしてニコニコするセシリアさんはベッドに入ってくると、突然不満そうに言いました。
「ユノ? 布団の中暑くない?」
「……暑くないです」
「えー、暑いよ?」
そう言い、セシリアさんは私に触れた瞬間、大きな声を出してきます。
「ユノ、まだ熱なの!? 凄い熱い!」
「違います。平熱がとても高いんです。布団もそれが原因です。……おやすみなさい」
私は言うことを全部言うと、セシリアさんの反対側に向き直り、布団を抱き締めます。後ろから騒がしい声が聞こえてきたのですが、私は耳を傾けずに眠りにつきました。
それからおそらく一分と経たずに私は寝たのですが、再び起こされてしまいました。その原因はセシリアさんです。大人しくなったセシリアさんは私と一緒に寝ることにしたらしいのですが、わけの分からない力で私のことを抱き締めてきたのです。私はその激痛で目を覚ましました。
「――っ……うっ」
「えへへ、暖かくて……気持ちいい」
「……ぁ……」
私が必死になってようやく腕を掴んだ時、セシリアさんはちょうど寝てしまったようで、私にはもう腕を外す手段がなくなってしまいました。
……仕方ありません。防衛魔法で痛みを抑えましょう。転移魔法で抜けたいのですが、無詠唱がアヴィさんにバレてしまうので、ダメです。
『防衛魔法二型、回復魔法三型』
ひとまずセシリアさんからの痛みもなくなり、折れた骨や損傷した内蔵も治ったので、私は再度寝ることにしました。……因みに、防衛魔法にはそれなりに魔力を注いだので、セシリアさんが腕を離してくれるまでは持つと思います。




