19話 その4
「わざわざお見舞いに来てくれたのに、ごめんなさい。……一応言っておきますけど、アヴィさんと私は無関係ですからね? 私はせっかくお見舞いに来てもらえたんですし、喋れるかは分かりませんけど、顔くらいは見たかったです」
「そっか。ならその子の言うことは無視して入れば良かった……」
「……えと、それもそれですけど……。まあ今後は大丈夫です。私も熱になったりしませんから」
「ホント!? 私もそれが一番いい!」
そう言い、セシリアさんは微笑みました。私もそれに頷いたりしていたのですが、そんな私たちを見てクラウディアさんは聞いてくるのでした。
「……貴女はメシア教国の、セシリア=セラフィム・メシア……よね。ユノとはどういう関係なのかしら?」
やや警戒しながら質問するクラウディアさんに対して、セシリアさんは能天気に答えます。
「ユノは私の初めての友達なの! ――ね?」
そう言い、私の方を見てきたので、私も頷いてみせます。
「……そう。なんだか貴女は話に聞いていた感じとまったく違うのね……」
「そうなの? ……あ、お昼ごはんを食べに来たんだった。収納魔法!」
「……え、本当にこのタイミングかしら?」
とてもマイペースなセシリアさんに翻弄されて、クラウディアさんはやや納得のいっていない感じです。そして、オルさんから手を離して席から立ち上がると、再度セシリアさんに対して言います。
「貴女とは明後日の記念式典でまた会うことになるでしょうし、またその時に色々と聞かせてもらえると嬉しいのだけれど」
「うん、分かった! 貴女の名前は?」
「……私は、アルスティナ帝国第二王女のクラウディア=リストランテ・アルスティナよ。好きに呼んで構わないわ」
「じゃあ、クラウディアって呼ぶね! 私はセシリア! よろしくね!」
セシリアさんは元気にクラウディアさんの手を握って微笑みます。ただ、クラウディアさんは流石にメシア教国の王族相手ということもあって、まだ警戒しているようです。
「……とりあえず私は待たせてる人がいるから、もう行くわね。……オルタヴィア? 明後日は朝七時に私の部屋の前に来なさいな。これは絶対よ」
そう言い残して、クラウディアさんは教室を出ていきました。しかし、アヴィさんはそれには反応せずに私の方見てくるとニコニコしてきます。私はなんとなくそれを無言で眺めていたのですけど、直ぐにオルさんが私の腕を引っ張ってきました。
「マスター、もう食べたいです」
「……そうですね。食べましょう」
私がそう答えてお弁当に手を伸ばした瞬間、セシリアさんは突然大きな声を上げます。
「――って、待って!? ユノ、この子誰!?」
さっきまで全く気付いていなかったのには驚きですが、オルさんが声を出したことでようやく気付いたようです。
「……えと、こちらは私の魔剣のオルトリンデです」
「魔剣? 人じゃないの?」
「少し複雑なんですけど、オルさんは魔剣です。擬人化しました」
「そうなの? ユノを小さくしたみたいな感じだね」
「はい、私の魔剣なので私に似てしまったようです」
「……そっか」
セシリアさんは一通り納得すると、オルさんを椅子から持ち上げてそこに自分が座り、さらに自分の膝の上にオルさんを乗っけました。
「オル、どう? 食べにくくない?」
「……大丈夫です」
「そっか、なら私も食べよ!」
そう言い、セシリアさんは先程出したお昼ごはんを食べ始めるのでした。私もオルさんにあげつつまったりとお昼ごはんを食べていきます。
「……あの、オルさんは食べたものは直ぐに魔力にしてるんですか?」
「はい、魔力にしてます」
「そうですか」
まあ、私がオルさんを使わないかぎり魔力が減ることもないので、必要はないんですけど……。それに、収納時には適当なタイミングで魔力を吸ってくれるので、こうやって自ら摂取するのは珍しいです。
「えと、美味しいですか?」
「美味しいです」
「……むぐぐ、それはレンが作ったのです!」
ふとそんな言葉を聞いて、私はセシリアさんに聞いてみることにしました。
「あの、セシリアさんのお昼ごはんは誰が作ったんですか?」
「んー、これね? 分かんないの! いつも部屋を出ると待機してる人がいて……渡してくるから」
「……そうですか。美味しいですか?」
「うん、普通に美味しい」
セシリアさんの顔を見ると、たしかに満足しているようです。
それにしても、部屋の前にいつも人が待機してるって……やっぱりメシア教国は変わっていますね。……いえ、よく考えれば王族なのでそれが普通な気がしてきました。アルスティナ帝国やノエルさんのエウレウス帝国がかなり甘いのかもしれません。
私はそうこう考えながら、とりあえずこの前のことを聞いてみます。
「えと、セシリアさんは月曜日……私と別れたあとはもう大丈夫でした? メシア教国の方々は……」
「大丈夫だったよ! それにあの日以降、私が言ったことにも従ってくれるから、今日も付いてこないでって言ったら言う通りにしてくれたの」
メシア教国のことはよく分かりませんけど、当面の間は大丈夫そうで安心しました。良かったです。
「なにかあったら言ってくださいね。私で良ければ力になります」
「ホント!? ありがとう!」
私がセシリアさんに微笑んでいると、アヴィさんが後ろから割り込んできました。
「おい、セシリア! あまり調子に乗るな! 主様は我のものだ!!」
「あの、アヴィさ――」
「なに? 別に調子になんか乗ってないし! それにユノは貴女のものじゃないから! 私の友達なの!」
「ふん! 主様はそれ以前に我の『親友』だ! お前とは格が違う!」
そう言われると、セシリアさんはムッとしながら私のことを見てきました。
「ユノ? なら今から私と親友ね? いい?」
「……え、それは……分かりません」
「なんで!? ひどい!」
「なーっはっはっは! これが我とお前との差だ!」
アヴィさんがそんなことを言ったせいで、セシリアさんは余計しゅんとしてしまいました。とりあえず私はアヴィさんに怒ります。
「アヴィさん、言い過ぎです。ひどいです。セシリアさんに謝ってください」
「分かりました! ……セシリア、我が悪かった!」
そう謝るアヴィさんに対して、セシリアさんはふんっと首を横にするも、まだショックを受けているようです。なんとなく私にも原因がありそうなので、一応言っておきます。
「……あの、セシリアさん? 今すぐ親友になるというのは中々難しいと思いますけど、もっともっとお互いを知っていけたら、いずれ親友にもなれると思います」
「なら親友になれるかはユノ次第だよ? 私はユノに包み隠さず話してるから、あとはユノが話してくれるだけ!」
……む、とても鋭いことを言ってきました。
ひとまず私は「……あはは」と笑い、適当に流しておきました。……いえ、流したつもりでしたが、セシリアさんは全然引いてくれそうにありません。
「なにそれ! 私には話したくないの?」
「……えと、そうじゃないです。ただ、その……今の空気ではお話する気になれないです……」
「そういうことね? なら直ぐに親友になれそう! 良かった!」
セシリアさんは一人勝手に納得すると、機嫌を治してくれたようです。ただ、今度はアヴィさんがムキーッとしてしまいましたが、もう面倒なので仕方ありません。




