5話 (実質的)初戦闘
宣言したアイリは敵のほうへ突貫。すれ違いざまに猪に鎌を振るう。アイリの鎌が下へ動くと猪の首が切断され、勢いそのままに死体が崩れ落ちる。鎌が上へ切り上げられると、猪の肉体に致命的な損害を負わせ、吹き飛ばし、後続を巻き込んでダメージを与える。
「習君、本当にこの魔道書私が使っちゃってもいいんです?」
「あぁ、もちろん。その代わり…というわけではないけれど、四季の紙をくれない?魔力込めて」
「どれくらいですか?」
理由も聞かずに量を聞いてくれる四季。ありがとう。
「任せる」
「では、これを!」
「ありがとう!」
さっと作ってくれた紙を受け取る。これがあれば…、魔道書と同じことが出来るはず。あれは魔紙に書いた魔方陣を束ねたもの。この紙も魔紙だ。
「いきますよ!アイリちゃん、後ろ注意です!」
「…ん!あまり変なところを狙われない限りは大丈夫!」
四季が魔法を詠唱し、発射。飛んでいくのは岩の弾や、風の刃。狙いは猪の足。足を切断することで転倒させ、後続の障害とする。障害にされた猪は仲間の突進に耐えきれず絶命、肉をぶちまける。突進した猪は速度が下がり、速度を落とせていない後続に激突されて怪我、運が悪ければそのまま絶命する。
数は多い。が、無軌道な突撃でどんどん数を減らしている。
今のところ、俺がすることがない。油断は厳禁だが…、だからこそ、試そう。成功すれば援護が出来る。
四季から貰った紙。それに字を書く。参考にしている魔道書に書かれているのは魔法陣。だけど『身体強化』の時に操った魔力。あれはこっちの想像通りに動いた。それに、図書館にあった『魔法とシャイツァーは術者の思いを反映する』という記述。…明らかに反映されてないであろうアイリとか例外はあるだろうが、俺は勇者だ。出来るはずだ。
魔方陣の代わりに字で代用するという意思を持って、字を書く。使う魔法は四季が使ってる名前をつけるならば『風刃』とでもいうべき魔法。それになるように思考を固め…、
ペンを紙へ下ろす。支えがないから安定しない。書きにくい…。ならば、自分の膝を限界まで持ち上げて紙を押しつける。体は柔らかいほうではないから結構きつい。しかも普通の紙に書くのに比べて、謎の抵抗感が。いや、これくらいはいける。ねじ伏せる。
出来た!『風刃』。日本語だが、その分、勇者っぽさが出ていいだろ!
「…ごめん!」
っ!抜けられた!?でも、距離は…もうない!ペンは止められない。ぶっつけ本番!
「『風刃』!」
魔力を消費。紙が光って紙から緑の刃が放たれる。
縦に3 mくらいある刃は突撃してきた猪を真っ向から切り裂き、頭からお尻まで切り裂き絶命させた。…のはいいが!
「アイリ!」
「…っ!」
猪を切り裂いた刃が止まらない。咄嗟だったからちゃんと見ていなかったが…、幸いアイリは射線上に居なかった。
刃は健在な猪二頭と、アイリが切り捨てたり、四季が魔法で足を切ったりした猪を切り裂いて消えた。
「…お父さん!それ、横向きに撃てる?」
「あぁ、撃てる!」
「…撃って!」
は?いや、誤射…。
「…しゃがむ!撃って!」
それなら撃てる。
「『風刃』!」
さっきは縦向きに撃ったものを横向きで。アイリはしゃがんでよけられる。が、猪は無理だ。体高が結構あるから何もしなければ上下に両断される。よけるにはしゃがむか、飛ぶ必要があるが…、突進している彼らには無理。
故に、健在だった猪は例外なく3 mの刃に切り裂かれて絶命した。
「…後は息の根を止めれば終わりだけど…、たぶん全滅してるね」
ということは、
「終わり?」
「…ん。片付けしたら終わりだね」
そっか、終わったか。さて、片付け…、
「習君」
は、駄目か。肩をがっちりつかまれた。そりゃそうか、俺だって逆ならそうする。
「あまり言いたくないのですけど…、」
「わかってる。ごめん」
「何にです?」
四季は怒っているけれど、悲しい。そんな顔をしている。
「四季より前に出てたこと。そのくせ、前方への警戒がおざなりだったこと。まだ一回も試していないことをしたこと。だよね?」
「です。全てに理由があることもわかってるのですけど…」
四季より前に出てたのは、四季が魔法を撃って注意散漫になったときフォローが出来るように。だけど、そのせいで十分四季が倒せた猪に俺が殺されかけてる。
前方への警戒がおざなりだったのは、試作してたから。時間にして数秒だったけれど、確かにおざなりだった。数秒であれ、その間隙を突かれた。試作で死にかけては意味がない。
一回も試していない魔法を使ったのは間に合わないと思ったから。でも、それが駄目だった場合、確実に直撃していた。怪我をする可能性があっても『身体強化』して全力で飛ぶ方がまだ確実性があった。
助かったのは結果論。発動していたから五体満足で済んでいるけれど、していなければ死んでるか怪我をしてる。だから四季はこんな顔を俺のためにしてくれてるのだろう。
「ごめんね。四季」
「すみません。わかってるのです。自分でも感情的になっていることくらい。でも、でも、なのです。習君が死んでいたらと思うと、抑えきれないのです…!」
四季の顔が悲しみからか歪んでいる。彼女の綺麗な顔を歪ませたのは俺だ。
「ごめん。こういうのは二度とやらないから」
「こういうのでなければするのですか?」
…………。
「四季には悪いけど。するさ」
「ッー!」
悲痛な四季の顔。心が痛い。
無意味な死は許容できない。から、しない。けれど、俺だって彼女を失いたくはない。そのために死ぬことまでは否定されたくはない。
「駄目です」
「何故?」
これは俺の矜恃なのだが…。
「約束、したじゃないですか…!」
約束?四季と会ってからしたような約束は……、アイリへの覚悟以外にないはずだ。だが、頭の中でそれは違うとガンガン何かが鳴っている。他、他…、
まさか…、熊の時か?「俺が囮になる…のはなしですよ?」という言葉。あれに俺は頷いた。
──これか。これなのか。俺はあの時限定だと思ったけど…、四季は違った。四季は同行する限り常に「俺を囮にするのは許容しない」そのつもりで言っていたのか!
であれば、四季の態度もわかる。完全に読み違えていた。なるほど、であれば…、「俺なら四季を守るために無茶をする。けれど、四季はそれを許す気がないから、無駄死になりかねない」…と。そういうことか。
俺の矜恃を尊重したい気持ちと、彼女の思い。それの板挟み。だから、こんなにも四季は苦しそうなのか。きっかけは俺の死の可能性を見たから…か。
ここは俺が折れるべきか。答えは簡単なんだから。
「わかった。四季。やらない。生き残るために戦い抜くと誓おう」
俺が犠牲になって、四季を助ける…という選択肢は捨てる。囮になることがあっても、それは逃げ切れる算段があるときだけだ。そうでないなら共に逃げ、共に戦い続けよう。
「何に誓ってくれますか?」
「信仰する神様がいないからな…。四季、君に誓うってのは駄目?」
「いえ、とても素敵だと思います。では、私も習君に誓いましょう。私も、自分を犠牲に貴方を助けるということはいたしません」
四季の手をがっちり握る。うん、やっぱり四季は笑顔の方が何倍もいい。
「…終わったよ」
え?
「…終わったよ」
やめて、二回も言わないで。聞こえているから。
「…終わったよ?」
「ごめん。ありがとう。聞こえてる」
「はい。私も聞こえてます。ありがとうございます。そしてごめんなさい」
罪悪感で死にそう。何で戦いの後に一番頑張ってくれた子を無視して二人で世界を作ってるんだよ!
何に謝られてるんだろう?みたいな無垢な顔がよけいに罪悪感を刺激する。
「…あ。わたしを逃がすために二人が死ぬ必要はない。護衛だから」
バッチリ聞かれてるし…!
「いや、それは俺らが許容できない」
「…そう。なら、最悪の場合は一緒に死ぬの?」
「そうなりますね…」
誰も死なないようにするために最大限あがいて、駄目だったら死ぬ。言い換えればそういうこと。
「…なるほど。…護衛失格にならないように注意する」
「護衛」…ね。本当にこの子はいじらしい。一見、職務に忠実な子だが、違う。この子のアイデンティティは今、そこにしかない。
……あぁ、この子に俺らは何をしてあげられるのだろう?
「…あ。お父さん。服が汚れて気持ち悪いだろうけれど我慢してね。ちょうどいい服なんて王城になかったらしいから」
「ん?あぁ、それは心配要らない。四季」
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
四季から紙を貰って、書く。洗浄系列の魔法はファンタジー定番。出来ない作品もあるみたいだけど…、出来るだろ。泡で包むタイプにすると服を着たままじゃ使いにくいから、光に包まれたら汚れが消える感じにしよう。
そのイメージを持って…、あれ?さっきよりもちょっと書きやすい…?んんー?
「四季、魔力量はさっきと同じ?」
「です。ですが、洗浄のイメージも込めてみました」
なるほど。であれば、全然関係ないイメージを込めると…、反発してくる。推測が正しいかな?
「それが何か?」
「さっきより書きやすいからさ。何でだろうって思って。たぶん、四季が込めてくれたイメージに俺が思い描く像が似通っていればいるほど書きやすくなるっぽい」
「そういう効果があるのですね」
みたい。とりあえず完成。
「実験台は…「習君がやるのは許しませんよ」だよね」
「「もちろん、アイリも駄目」」
「…ん」
言われる前に言っておこう。であれば…、掘り起こした石でいいか。土がついてるし、とれれば成功で。
「『洗浄』」
紙から光が放たれて、石を包む。光が晴れると…、
「成功だな」
「ですね」
ちょっと綺麗になりすぎている気がしなくもないけれど、石についてた汚れは全部取れた。
「じゃ、全員にかけるよ」
「あ。どうせなら一緒にやりましょ」
「了解」
四季に紙を…、
「折角ですから」
渡そうと思ったら、紙ではなくて俺の腕をとられた。何が折角なのかは聞かないでおこう。たぶん既に四季の顔は赤い。
俺の右手で四季の左手をとり、余った手で紙を持つ。
「「『『洗浄』』」」
を三回。光が俺と四季、アイリを包み込む。
「よし、綺麗になったね」
「紙も消えちゃいましたがね…」
使い切ったら消えるのだろう。いちいち処理の手間が要らないから便利だ。
「アイリ、目を丸くしてどうしたの?」
「…どうしたも何も…、綺麗になりすぎ。…さっきの『風刃』もそうだけど、威力がおかしい」
そうなの?
「…そう。詠唱もないのにあの威力はない。…何回でも使えるの?」
「私は紙を出すだけで制約がないので、何度でも出来るはずです」
「俺も。四季の書いてくれた紙に書くだけだしね…」
だから、二人が揃っている限りではあるけれど、魔力があれば何度でも撃てるはず。
「あ。アイリは必要だからね」
「護衛は要らなさそうだから、帰れ…なんて言いませんから」
アイリが似たことを言う前に言っておこう。不安は消しておいてあげなければ…。事実、必要だし。
「…心配無用。ルキィ様に護衛って言われてるから、要らないって言われてもついてく」
「そっか、じゃあ、これからもお願いね」
「私からもお願いします」
「…ん。任された」
よかった…とは言えないな。本当にこの子は「護衛」ってところにしかアイデンティティがない。
要らないっていわれたら、「家族設定が破綻する」みたいなことすら言ってくれないまま、どっかに消えてしまいそうでさえある。俺はもちろん、接した感じ的に四季も家族に恵まれてる。だから「家族なんだから一緒でいい」と言われればある程度納得できる。けど、それはアイリには通用しない。難しいな…。
「…出来るって言ったけど、確証はあるの?」
「試さなきゃ怪しいけど…」
「シャイツァーに聞いてみたらわかるかもしれません」
「…二つのシャイツァー絡んでいるけど?」
そうだけど…、まぁ、聞いてみよう。……。
「出来るみたい」
「ですね」
「…えぇ…。」
心の中で聞いてみると出来そうな気配がぽわぽわと。
「…でも、熊の時はしてなかったってことは、あのときは出来なかった…というより、そもそも出来ることを知らなかったよね?」
そうだよ?
「…シャイツァーなら、出来ることは頭の中に勝手に流れ込んでくるはず」
「勇者だから違うという可能性は…」
「…ある。…でも、勇者のシャイツァーが特別なのは知ってるけれど、知りたくない出来ることまで教えてくるシャイツァーが、勇者である二人に教えないとは思えない」
な、なるほど…。確かに。
「…歯切れ悪いけど、どうしたの?」
「俺は他の勇者のシャイツァーを知らないから…」
「同じくです」
正直に言えるわけがない。さっき何でもないようにアイリは言っていて、うまく隠しているようだったけれど…、それでも漏れ出しているシャイツァーへの呪詛のエグさに引いていたなんて。
「…なるほど。…理由はわからないにしても、二人が出会った今なら答えてくれるかも。聞いてみたら?」
だね。聞くにしても、一つに聞くよりは二つに聞く方がいいはず。であれば、
「四季」
「はい。こうですね」
互いのシャイツアーを接触させる。これで…。
「…それでなんとかなるの?」
「なりそう」
「ですね」
「…えぇ…」
アイリが軽く引いている気がする。えっと、出来るのは…、
「四季が紙を出して、俺が字を書けば魔法として成立する…みたいだね」
「ですね。紙とインクに込めた魔力が多いほど発動する魔法の質も上がるようですね」
質は威力や紙の持久力、射程。およそ出す魔法に関する全てを弄れるっぽい。
「ただ、魔力が多いほど書きにくくなるみたい」
「私と習君の魔力が反発するんでしょうね」
さっきは魔力が少なかったからちょい書きにくい程度で済んだ。だけど、強力なものを使おうとするとかなり大変になりそう。
「それに、魔法を作るときはちゃんと具現化してる方が高威力…かな?」
「…どういうこと?」
「「水に関する魔法」ってぽわってしたものより、「水をすごい勢いで押し出して切る魔法」としておいた方が、同じことをしようとした場合の威力が違うようですね」
具体的な数字は出せないけれど、明らかに具体的な方が魔力消費は良さそうだ。
「それに、書くときは四季とイメージを合わせた方が書きやすくなるし、威力も上がるみたい」
「のようですね。可能であれば打ち合わせをしてから書きましょう」
かなり想像に依存する魔法だな…。
「…魔力消費はどのくらいなの?」
「紙を作るときにはかなり消費するけれど、」
「作った後は紙を起動する感じなのか、かなり少なめですね」
だからといってぽこじゃか書けるわけじゃない。だからそんなに燃費がいい物じゃないとは思う。
「あぁ、でも、発動に必要な規定値が低めってだけで、許容値いっぱいまでなら魔力は入れられるっぽい」
「魔力をよりたくさん入れると、質もまた上がるみたいですね」
最小限、発動に必要な魔力はたぶんどんな魔法でも同じっぽい。でも、魔力許容値は紙とペンの魔力量に依存する。
「後、私と習君ならさっきみたいに二人で協力して撃つこともできるっぽいです」
「このときは許容値が倍くらいになるかな?ついでに、俺と四季で想像があっていれば威力増」
だから強いの使いたければ、潤沢に魔力を使って作った紙に、俺と四季が協力して魔力を豊富にぶち込んで、意思を統一して発動すればいい。
「…わたしも使えるの?」
「多分。一回撃ってみて」
さっきの『風刃』があるし…。あ。いや、待てよ?アイリは字を理解できないからこっちの言語で書いた方がいいか。
「四季、さっきの風刃と同じ魔力の紙を」
「はいです。あ。ついでにファイルもどうぞ。書きやすくなるかと」
「ありがとう」
確かに書きやすい。言葉を知らなくても俺らは加護のおかげで書ける。『風刃 (アークラインの言語版)』を…あれ?何故かさっきと同じ威力の魔法を作ろうと思うと要求魔力量が増えてる?
「習君?」
「同じ威力の魔法がほしいのだけど、なんか要求魔力が増えてる」
「同じ魔法ばかりは嫌なのですかね…?」
かな?だけど、そんな量が多いわけでもなし。問題なく書けた。でも、言えよという気分ではある。
「どうぞ」
「…ありがと。さっきの風刃も借りていい?」
「ん?いいよ?」
「返さなくていいですからね」
使い切ってなくなったってまた書き直せばいいだけの話。返せとは言わない。
「…ん。じゃあ、わたしが読める方から。「ふうじん」」
飛び出た刃は1 mくらいで、射程も短そう。弱くなった?
「…次は二人の言葉のほうで、『風刃』」
猪の時と同じくらいの大きさ。射程は…前のは猪を倒して減衰してたから比べられないけど、こっちの言語の時より長そう。
「魔力を減らしたわけでは…」
「…ないよ。…だから二人の言語の方が高威力で撃てると思う。…後、もらった魔道書いらないと思う」
いや、その考えは早すぎる。
「…じゃあ、わたしが知らない言葉を使って書いて?」
「ん?了解。四季」
「はい。『さっき例に出してた水のレーザーみたいなものでいいです』?」
え?何故日本語…。あぁ。アイリがわからないようにしてるのか。
「うん。じゃあ、俺はそれを元に書くね」
名前をつけるなら…『ウォーターレーザー』か。漢字じゃないから余計にちょうどいいだろう。
「はい。これをお願い」
「…これ、さっきと同じ言語?」
「同じだよ?」
「…字が違いすぎる…」
日本語だしね。平仮名、カタカナ、漢字。ぱっと見、同じ言語で使われる言葉とは思えない。
「…魔力を流して……、無理だね。意味は?」
「さっき言ってたやつ。水の光線」
「勢いよく水を出して押しつけることで切ります。読みは『ウォーターレーザー』です」
頷いたアイリは日本語で読み上げ、上へ向けて発動。細い水が一条の線となって飛んで行く。
「…意味がわかれば使える。…やっぱり魔道書不要じゃない?」
魔道書不要説が否定できなくなってきた。
「…要らなさそうならお金に換えて使ってね?…それと、わたしのシャイツァーでも同じことが出来るか気になる」
「ん?それなら」
四季のシャイツァーからペンを離し、アイリの鎌と接触させる。……何もないな。
「…なんとなく鎌が喜んでる気がしなくもない。…だから?といわれると何もないけど」
「俺の方は何もないかな。四季と試そう」
俺と交代。ファイルと鎌が接触。
「…さっきと同じ。お母さんは?」
「習君と同じですね。何もないですかね…」
何故だ?謎。クラスメートともし再会できるような時があれば試すか。
「…欠点はないの?」
「欠点?」
さっきもあったから何かありそう…。もう一回四季のファイルと接触。欠点を吐かせる。
「ありますね。紙を消滅させてしまうと似た系統の魔法の威力減。魔法作成時の魔力消費が増加するようです」
「時間経過で徐々に戻って半日で全快するらしいけど、けっこうでかいね」
だからアイリに聞かれた「何回でも出来るの?」に「うん」って答えたけど…。あれは嘘でも本当でもあるな。違う系統の魔法なら問題なく回せるけど、同じだときつい。系統がどういうくくりなのか結構謎だけど。
「他は…、使用回数の多い紙を一回の攻撃で消す代わりに威力を上げることも出来るらしい」
「名付けるならば『触媒魔法』…いえ、『代償魔法』でしょうか?」
「かな?」
触媒だと色々ツッコミどころが出るし…。その点、代償だと紙がわかりやすい代償だ。それに、
「使った紙だけじゃなくて、似た魔法の威力半減、魔法使用、作成の使用魔力倍加もあるからまさに!って感じがするね」
「ですね。使うと同じ系統の魔法を5日間は代償に出来ないというのもありますものね…」
結構反動?みたいなものが重い。試してみたいけど、気軽には出来ない。
「…そもそも近場に街があるから駄目」
「何で?」
「…威力が高すぎて見た住人を不安にさせる未来しか見えない」
俺らに言うアイリの顔はめっちゃ真剣。…了解。使わないでおこう。
「その街は目的の街ですか?」
「…ん。そろそろ国外に出るけど…、」
鋭い目で街道の先を見つめるアイリ。
「何があるの?」
「…バシェルが検問を置いてる」
「普通では?」
主要街道沿いの国境。なければむしろ怠慢だろう。
「…普段はない物々しさだけど?」
暇か。いや、違うか。
「威信の問題か?」
「ですかね」
帰還魔法捜索隊の時点で勇者に逃げられたって思われる可能性がある。その上、俺ら二人も姿を消した。一応、帰還魔法捜索隊とはいえ、一般人から見ればまた逃げられたように見えるわけで。
「敵対すると決まったわけでもなし、念のため回復魔法と、他数種作って突っ込もうか?」
「それでいいかと。アイリちゃんはどう思います?」
「…わたしもそれでいいと思う」
じゃ、書きますか。
注
改稿前は『代償魔法』は『触媒魔法』です。その点、ご留意ください。
また、この文脈での『触媒』は中高の理科のテストで書くと×か△になると思います。その点も合わせて注意してくださいませ。
詳しい変えた理由はこの活動報告の最後を読んでくださいませ。
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