4話 北上
「…お父さん、お母さん」
「「何?」」
相変わらずアイリの声は事務的。当然ではあるが、父母と言われてるのに父母って名前の他人を呼んでいるよう。
「…ご飯ください」
「了解。でも、そろそろ晩ご飯にしたいから少しだけ待って」
「…どれくらいかかる?」
お腹を空かせた子をあまり待たせたくはない。休めそうなところは…、
「習君。少し進んだ先に開けた場所があります。そこでご飯食べませんか?」
「了解。アイリもいい?」
「…ん。…今日中には着きそうにないから、あそこで野営した方がいいと思う」
旅初日で野営か。それは覚悟してたけど…。
「わかった。そうしようか」
「ですが、道具が…」
「…鞄の中に入ってると思う」
アイリが持ってきてくれた鞄?
「見た目、そんなに大きい鞄じゃないけど…?」
「…魔道具。空間拡張のついた鞄」
空間拡張!あぁ、だから熊が入るのね。ファンタジー定番だけど…、
「お値段は?」
「…高い」
だよねー。そんなものくれたのか…。
「…野営準備は道具のおかげでわたし一人でも出来る。…何が入ってるか確認しておいて」
「一人に任せてノンビリ出来る人間じゃないから手伝うよ」
「です」
やってくれてるのに任せきる…というのはあまり性に合わない。
「…そう?押すだけだよ?」
いつの間にか準備していたアイリがボタンをポチッと。一瞬で結構大きなテントが展開した。
「固定は?」
「…自動」
広がるだけなら地球にもありそうだけど、固定も自動。すごいな…。これで用意が終わってしまった。
「…鞄にジャーキー入ってる。それだけあればいいよ」
「え?遠慮しちゃ駄目だよ」
「ですです。ちゃんと食べないと駄目ですよ?」
「…でも、わたし一人でかなり食べてる。明後日くらいに二人が食べる分がなくなる」
なんだそんなことか。
「気にしなくていいよ」
「です。あぁ、なんなら晩はジャーキーにしておきますか。味が気になりますし」
「…正気?」
正気だよ。
「…わざわざまずい物を食べようとする気持ちがわからない。でも、ありがとう」
「繰り返しになるけど、気にしなくていいよ」
「ですね。好奇心ですから」
まずいと言われると逆に味が気になる。
「鞄からジャーキー出しまして…」
「ついでにスープと…、パンだそうか。アイリに一個。四季は俺と一個シェアでいい?」
「もちろんです」
水筒一個と缶2個を取り出して準備完了。
「「いただきます」」
「…それは?」
それ?あぁ、いただきますか。
「故郷の食事の前の挨拶だね」
「別になくてもいいのですが、ないと気持ち悪いのでやってます」
「…そう。いただきます」
何故真似を…?あぁ。俺と四季の子であるなら、両親と同じ習慣がないとおかしい。そう思ってあわせてくれてるのか…。
優しい…のではないな。仕事だからやってるんだ。…俺らが信用されるようになればいいのだけど。
「…食べないの?」
「いや、ジャーキーをどう食べたものかと」
「同じく」
感傷に浸っていた…というのは言わない。言ったって仕方ない。
ジャーキーの件は誤魔化しだけど…ほんとうに食べ方が不明。手に持っただけでわかる。硬い。多分噛みきれない。
「…水で戻すか、そのまま食べる。…水で戻す方が早い。…水はこの魔道具から出る。底面を持って上をひねって傾けて」
「了解。ありがとう」
「ありがとうございます」
出会ったときのアイリはジャーキーをそのまま食べてた。とりあえずそのまま。
……硬い。歯が当たってるはずなのに一向に進まない。噛みきろうと思ったら唾液でふやけるのを待たないと駄目だ。
舌で唾液をジャーキーに染みこませてふやけさせ…たからといって美味しくもない。味…はあるのかこれ?味云々以前に、獣臭さが強すぎる…。
とりあえず噛みちぎって呑み込む。残りは水へ。水のほうが早いってのは、水だと口に入れるよりたくさん戻せるからか。口にいっぱい入れればその分増やせるけれど、地獄が増える。
戻ったね。水で戻したところであんまり変わらないか。獣臭さが水に溶けやすいのか、若干、薄まっているけれど、だから何っていう。
「…スープに浸すのはおすすめしない」
だろうね。このまずいのでスープの味をぶっ壊す意味もなし。
「パンはちぎって紙の上に置いときますね:
「ありがとう」
パン、半分でよかったな。このまずいの食べてさらに食べようって気にならない。栄養があるらしいのだけが救い。食欲減退する上、ろくにエネルギーにならなくて動けないとか、もはや何のために食べてるかわからないし。
「…残す?わたしが食べるけど」
「いや、まずいから食べる」
「美味しく食べられるなら渡しますが、そうでないなら自分で処理します…」
四季も同じポリシーを持ってるのね。ちょっと嬉しいけれど、そのうれしさはまずさで消し飛ぶ。味わえば味わうほど不味い。気合いで流し込んで…、
「「ごちそうさまでした」」
「…ぴったり同じ。仲いいね」
不味くて泣きそう…。
「…反応も同じ」
アイリが何か言ってたみたいだけど、不味すぎて聞こえなかった…。
「あ。ご飯は急がなくていいよ」
「どうせ寝るだけですから」
「…ん」
言わなかったら気にするだろうから言っておかないと。
「あ。習君。寝る前に鞄の中を確認しましょう」
「だね。見てみようか」
鞄の中に入ってるのは…、金貨40枚。鞄数個── 一個は熊入れるのに使用中 ──と、魔道具何個かとアイリの説明書。俺と四季の私物。それに野営道具をいれて全部。
色々入れてくださっていてありがたい…のだけれど、一つだけ言いたい。アイリの説明書なんてものをアイリの鞄に入れちゃ駄目でしょうに、ルキィ様!
「…ごちそうさまでした」
アイリは以前、挨拶してなかったはず。こっちも俺らがやってたのを聞いて真似してくれてるのね。聡い子だ。
「アイリちゃん。魔道具の使い方はわかりますか?」
「…ん。説明いる?」
「「お願いします」」
アイリが説明しやすいように移動してくれる隙に、アイリの死角でアイリの説明書を隠しておく。
「…飲み水の魔道具と、昼のアレの説明はいらないよね」
うん。要らないね。見せてもらったし。
「…了解。じゃあ、これ。これは火を出すもの。ここを捻れば火が出る」
地球で言うコンロだね。見た目もガスコンロそのもの。
「…これは明かり用の火を出すもの。…触っても熱くない。けど、目立つから今日は使わない方がいい。…裏のレバーを上下でついたり消えたりする」
見た目はちっちゃいたき火なんだけど、スイッチは裏なのね…。
「…魔包丁。これで料理すると美味しくなる」
「ほんとに?」
「…らしいよ」
原理がわからん…。肉限定とかなら肉の線維を断ち切り、うまみ成分を増やしている…とかで説明できるんだろうけれど。
「…この杖は回復用。簡単な怪我とかなら治る。…無理なやつでも材料があれば、最悪、わたしが薬作る」
「薬作れるんですか?」
「…ん。じゃないと死ぬ」
簡単に言っているけれど、たぶん実体験で得たスキルか。重い…。
「…でも、安心して。わたしが守るから」
死ぬって言葉に俺と四季が不安に感じたと思ったのだろうか?本当にこの子、気が利く。でも、俺と四季が出来ればこの子を守りたいって思ってることはきっと通じてないんだろう。
「…これは敵を教えてくれる魔道具。…範囲内に人がいれば自動起動。…範囲は狭いけど、固まって寝てれば、反撃する時間はある」
「反撃する時間」がどれくらいかわからない。アイリ基準なら俺らでは間に合わない。気休め程度に見ておくのがよさそう。
「…これは身分証明書」
「え?魔道具なの?」
「…ん。名前と年齢、犯罪歴を自動で確認できる」
便利だな。でも…、
「俺と四季は勇者だから、本当のことを書くとすぐにばれそうだけど?」
「それと家族ってのが生かされませんが…」
「…安心して。これ、そのあたり調整されてるから」
調整?つまり偽造では?どこに安心する要素があるの?
「…ルキィ様が作らせた。問題ない。…確認してみて?」
王女の許可があるから偽造ではないと?正規の手続きとってない時点で普通、アウトだと思う。けど、言ったって仕方ない。確認しよう。
あってるのは「習」って名前だけ。それ以外が…。犯罪歴がないのはいいけど、ミドル、ラストネームがある。これはどうしたらいいんだろう?
「…名前は適当だから気にしないでいい。…普通、貴族じゃないとそんなに名前長くないけど、ルキィ様が適当に与えてくれた名前。問題ない」
「黒髪黒目で貴族って勘違いすると?」
「…ん。こっちが貴族って言わず、貴族って聞かれても肯定しなければいい。…勝手に勘違いするはず」
色々誤魔化すのに頑張ってくださるな…。ただ、一つだけ。年齢はどうにかならなかったのですか?28歳って、そんな年ではないのですが…!
アイリくらいの子がいるなら、これくらいの年齢じゃないとおかしいけど!
「…さっきも言ったけど、この鞄も魔道具。…空間拡張と時間停止。…容量は説明の仕方がわからない。…けど、ひと部屋くらいはある。…鞄の口からいれれば勝手に効果が出る」
容量は大きいようでそんなにない?わからん。でも、絶対高い。何でこんなに持たせてくれるんだ…。
「…以上の道具は自然から魔力をとるか、起動したときに起動者から魔力をとる。…起動時間はよさげな時間分に設定されてる。足りなければ起動し直せばいい」
魔力がなければ使えないのね。了解。
「…これが最後。攻撃用の魔法の本。…魔紙に魔方陣を書いたやつを集積してる。魔紙は魔力を帯びた紙のこと。…呪文と魔力で撃てる。…試す?」
「今、試して大丈夫?」
夜だけど…、
「…水魔法を上に撃つくらいなら。…落ちてくる前に消してね。『消えろ』って念じれば消える」
消そうと思えば消せるのか。便利だな…。
「…該当ページを開いて。右に魔方陣。左に呪文がある。魔方陣に手を置いて、左の呪文を唱えればいい。勝手に魔力を吸ってくれる。足りなければ気絶する。…ただ、魔力流しても魔方陣が光らなくなるとその陣は使えないから注意」
使用回数制限有り。なら、練習に一度だけだね。
「俺からでいい?」
「どうぞー」
では、さっそく。陣に手を置いて…、
「『我、奇跡を望むもの。わが眼前の敵を打ち倒す水の力を!』」
…っ、何か吸われた?あぁ、今のが魔力なのね。魔法は…飛んでった?
「四季、成功した?」
「ごめんなさい、暗くて…」
見えてないか。
「アイリ、見えた?」
「…え?あ。うん。見えた。…消しといてね。…消さなくてもたぶん大丈夫だけど」
アイリがびっくりしてる?…よくわからない。感情が読み取りにくい。とりあえず、
「四季。どうぞ」
「はい。ありがとうございます」
唱えて発射。
「どうでした?」
「出て行ったと思う」
「ですか。アイリちゃん、どうです?」
「…お父さんと一緒」
ほんとうに感情が読み取りにくい。びっくりしてたような気がするんだけど…。
「…一人だと要らないけど、複数なら魔法名最後につけると連携とりやすい。…高度に連携がとれているなら、ないほうがもちろんいいけど」
基本、言っておこうか。誤射したら大変だし…。
「…後、二人は『身体強化』使える?」
「「無理」」
「…だよね。教える」
ありがとう。
「…この魔法は魔力があれば誰でも使える。…普段から勝手に魔力は流れてるんだけど、魔力を意識的に体中に流して。…それを強化に使おうとすれば出来るよ。…部分強化もある。それは一部にだけ流せばいい。…魔力を流せるようになることが一番大切。…だから、まず魔力を感じ取ってもらいt「待って」…わからなかった?」
いや、そうじゃない。
「魔力は感じれるよ?」
「私もです」
「…え?何で…、あ。さっきの?」
たぶん。
「さっき感じ取れたやつ。あれが魔力ならいけるはず」
「…ほんとに?なら、頑張って体に流して。…魔力が感じ取れてるか微妙なら、シャイツァーの出し入れをすればいい。…微量だから疲れると思うけど」
了解。
さっきの感覚を頼りに体を探る。全体的に微量に存在しているようだけど、心臓あたりに集中しているっぽい。なら簡単。たとえ心臓でなくても、その魔力だまりが心臓だと思い込んで…、いけた。心臓は動いている限り拍動する。それと同じように魔力も勝手に送り出される。最初よりも体中の魔力が多くなってきたから…、後は強化すればいい。
筋肉と心臓、骨とかを補強するようにして…、いけたかな?
「出来てるかどうかの確認は?」
「…飛んだらいいと思う」
それもそうか。その場でジャンプ。
っ!びっくりするぐらい高く飛べた。アイリよりも高く垂直跳びが出来たような。アイリの身長は150 cmぐらい。それ以上に飛べたのか。もう一回、今度は四季を見よう。四季は俺より5 cm低い175cmくらい。参考に…って、
「四季も出来てるね」
「習君も出来てますね」
「…えぇ。もう出来たの?…部分強化は?」
一部だけに流せばいい。さっきは考えやすいように心臓にした。それだと全部に流れてしまうから…、心臓を特定のところに魔力を流せるポンプだと想定。それを作動させて足に…、
いける。もう一回はねて……、いけたね。
「…高さがさっきと同じだけど、跳ねただけ…ではなさそうだね、二人とも。…早い」
「ん?どうやって確認したの?」
「…魔力を見たいなら目を強化すればいい。それで身体強化の魔力くらいなら見える」
なるほど。試しに四季を見てみよう。
目に向かって胸のあたりから何かが流れている様子が見える。
「四季も目の強化してる?」
「はい。習君もですよね?」
「うん」
「…だから早い…」
たぶんこういうのに馴染みがあるからだろうね…。
「…魔力を使いすぎると倒れるから注意。…『身体強化』で強化しすぎると傷つくことがあるのも覚えておいて」
わかった。
「…ふわぁ」
「眠いなら寝なよ?」
「…護衛しないと」
眠たそうにあくびしてたのにそう言うのね。
「アイリちゃん。一人で私達を守り切るのは物理的に不可能です。それにここはアイリちゃんが選んだ場所。盗賊とかが出ない限り安全なのでしょう?寝てください」
「…わかった。おやすみなさい。…魔道具はつけとくね」
「「おやすみ」」
あの様子だとテントの中に入っただけで起きてる…なんてことはないだろう。10時くらいっぽいしね。子供は早く寝た方がいい。
「さて、アレを済ませてしまいますか」
「だね」
アイリがいないうちに、アレ──アイリの説明書──を読んでおかねば。
「読むのには暗いですが、明かりナシで行きましょう」
「アイリが起きてもいいようにだよね?もちろん。さらに念を入れてテントに背を向けて読もう」
「ですね」
万全を期すには裏に回る方がいいけれど、俺らの姿が見えないことで不安にさせてしまうと可哀想だ。
「置くので、各自で読みましょう」
「了解」
字が書いてあるけど…、暗くて見にくいな。あぁ、『身体強化』すればいいのか。…よし、見える。読もう。
『この書状を持たせた子は「アイリーン」です。当人から聞いていると思いますが念のため申し上げておきますが、その子はお二人の護衛として派遣しております。
…お話してみてもうすでにお分かりでしょうが、その子はあまり口数が多くありません。信頼していると多少増えて、可愛らしいのですが』
ん?アイリ自慢が入ってる。…ルキィ様らしくないような。
『その子が真に信頼している人は。偶然拾った私ぐらいではないかと思います。というのも、今、魔道具でごまかしていますが…。目の色は赤、髪は黒、『シャイツァー』は大鎌と『エルモンツィ』を彷彿とさせる容姿をしております。そのせいか孤児で、孤児院でも孤立気味でした。
その上、私が拾う前日にお腹がすきすぎて孤児院にいたネズミを殺して食べていたところを他の孤児に目撃されてしまったそうで、他の子らの不安を取り除くため、院長さんが追放しようとしました。幸い、私が拾えましたが…』
やっぱりか。でも、想定よりあの子の置かれてた状況は悪くない。だからといって、あの子の心が安まるわけもないけど。
『荷物に持たせてあるジャーキーはアイリーン用です。調べてみたところ、どうもアイリーンは呪われているようです。大陸最高の呪い専門家に当たってもどうにもならなかったので、呪いではないのかもしれませんが…。ともかく、ある程度お腹がいっぱいであるか、何か口に入れていないと、何か食べようと暴れまわってしまうようです。
ですが!アイリーンはすごくかわいい子なんです。暴れまわっていてもしてはいけないことは判断できます!護衛としても優秀です!なので捨てないで、ちゃんと面倒見てあげてください!お願いします。
追伸
眼の色を変えているのは魔道具です。何卒、アイリーンのことを御願い致します』
「「母親 か」」
四季とツッコミが被った。言い過ぎかもしれないけれど…、最後のアイリが心配!って部分は子を案じる親のそれのような気がする。色々持たせてくださったのも、ちゃんと面倒見てあげてください、お願いします!ってことなんだろう。
「やっぱり、押しつけではないね」
「ですね。私達とアイリちゃんへの親切心ですね」
だね。俺らへは戦える戦力がないからそれへの対応として。アイリへは偏見がないであろう俺らへ預けることで心の安寧を得られるように。そんな意図だろう。
拒否される可能性もあったのに、よくやるよ…。俺の人柄はタクから聞いていたのかもしれないが、四季の人柄はタクからは聞けないだろうに。さすが王族…というより、ルキィ様の才覚か。人を見る目は十分にあるらしい。
あ。目といえば。
「四季、赤目って何かある?あぁ、もちろん、エルモンツィ以外で」
地球での赤目は確かアルビノの人だけだ。血管が見えるせいで赤くなってるはず。でも、アイリは黒髪。アルビノではない。
「あります。赤は魔獣や魔物といった人類の天敵の目の色です」
それは…きついな。
「強さは?」
「魔獣は凶暴な野生動物より強く。魔物は魔獣よりさらに強いそうです」
うん、最悪だな。
「えぇ。ご想像の通りです。魔獣の一部は赤目でなかったりするそうですし、獣人の一部や、魔人は赤目らしいですが…」
「何の助けにもならないね」
魔獣、獣人の一部が赤でないにしても、魔王の配下である魔人と、魔物が赤目。それだけで人間にとって畏怖の対象。その上、エルモンツィが暴れ回ったから、人間の赤目嫌いはきっと相当なもの。
赤目だけでもきついだろうに、アイリの容姿はエルモンツィを彷彿とさせるもの。迫害のひどさはいかほどか。
「四季、変わった?」
「まさか。習君こそ、変わりはしませんか?」
「愚問だね」
この話を聞いたからといって、覚悟は変わらない。あの子は俺らが守って、幸せにしてあげたい。それはきっと俺らにしか出来ないから。
「とりあえずの課題は、あの鎌をなんとか誤魔化せるようにしてあげることと、」
「まずいジャーキーに代わる何かの捜索、もしくは呪い?の対応ですかね?」
「だね、でも呪いは…」
「えぇ、わかっています」
「あの子が言ってくれてから」の方がいいだろう。「何で知ってるの!?」ってなっちゃうだろうし…。言わないってことはそれを知ってるからと憐みの目で見られるのが嫌とかそういうのがあるのだろうし。
「なら、それを除いた二つだね」
「ですね。今、出来ることではありませんが…」
材料がないからね。宿題か。
「寝よっか」
「ですね。その前に、」
説明書を元に戻して、広めの場所に置く。
「二人でやってみますか?」
「そう…だね。やってみようか」
魔道書を二人でもって、
「「『『我ら、奇跡を望むもの。わが眼前の敵を打ち倒す火の力を!』』」」
微妙に改変したけれど、無事に発動。説明書は綺麗に消え去った。さて、今度こそ寝よ…、そういえばテントは一つしかないんだよね。
「四季、俺は外で「は、駄目ですよ」だよね」
好きな人と同じテントって何の拷問だ。
「えっと、いいの?」
「いいに決まってます」
「そっか。じゃあ、寝よう」
たぶん俺も四季も顔が赤い。でも、幸いなことに暗いおかげで確認できない。アイリを挟んで川の字になれば…まだ恥ずかしくないか。うん。そうしよう。
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翌日は何事もなく歩き続け、さらにあくる日。引き続き北へ。
寝れないかと思ったけれど、普通に寝れた。熊と戦ったり、歩き疲れてたのがよかったのかもしれない。ご飯は朝ごはんでジャーキー以外壊滅した。けど、やばくなる前に次の街には着けるはず。
「…ん?」
アイリが立ち止まった?耳を澄ませているような…。『身体強化』を耳へ。
「足音がする?」
「のようですね。アイリちゃんが立ち止まったのはこれですか?」
「…ん。そう。たぶんこっちに来る」
了解。『身体強化』を全身へ。
「…来た!」
赤目の猪。魔物か?
「…魔物かな。猪だから突進に注意」
「熊の方がまだましだったかな…」
「…ん」
熊の方がましなのね…。
「…頑張るけど、数が多い。何匹かは抜けると思う」
「「了解」」
何匹かくらいならなんとかしてみるさ。
「…でも、護衛としてあんまり後ろには行かせない!」
高々と宣言するアイリ。その宣言に「あんまり」をつけてしまうあたり、この子は正直なんだろうな…。




