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9話 研究所からの脱出(IPGの単語説明集No.10〜12)

今日中に出せて良かった!!単語説明を書けてなかった時は焦りましたwww

目を開けると天井に大きく穴が空いていて、空が見えた。冷静に考えると、まだ連れ去られて1日半ぐらいしか経っていないのに、空を見るのが久しぶりな気がした。

「夜か…」

体を起こすと、周りに火がチラホラと燃えていて、研究所もボロボロになっていた。すぐ後ろでまた天井が崩れる音がした。

「想像以上の爆発だったな…。まぁ大量の水素と酸素が続けて爆発したから当たり前か…」

自分の体を見た。火傷の跡が1つもない。

「炎の体には炎は効かない…か…」

「がはっ!!うがぁぁ!!」

研の叫び声が聞こえた。

「嘘…だろ…?まだ生きてるのか…?」

ぐらつきながら、匍匐前進しながら声がする方へ向かって行くと、両腕や両足などの体の殆どの部位を失い、頭も半分以上を失っている研を見つけた。体を起こしてゆっくり立ち上がって

「はぁ…。どうだ?死ぬという感覚は…」

「!!」

焉武は研の顔を踏んだ。

「終わりだ。お前は…」

「ぐぐっ…痛ぇなぁ…。少しだけお前の冷静に物事を考えられる、その判断力と精神力をみくびっていたようだ…」

「早く死ねよ…」

「ククク…それは無理な話だ…」

「なに…?」

すると足を何者かに掴まれた。それはさっきまで失っていたはずの右腕だった。

「そんな…馬鹿な…どうして…」

研の頭も段々と戻ってきた。何もしてない。研も薬を投与するような行動が見られなかった。なのに頭が勝手に戻った。更に殆ど失っていた体も、すっかり元に戻っていた。

「なっ…」

研は立ち上がった。

「もう時間は十分経ってるよな」

焉武の顔面を殴った。

「うぐっ!!」

焉武はその場で倒れた。そもそも能力を酷使し過ぎたせいで立てなくなった。

「あがっ…」

「私の一撃だよ。全く…俺の研究所を破壊しやがって…。まぁ他にも幾つかあるから良いんだけどな」

ヘリコプターの音が聞こえてきた。

「来たか」

「研さん…無事でしたか…」

「おぉ。生きていたか薩春」

「お前…」

焉武は薩春の完治とは言えなくても、殆どの傷が治っている姿を見て驚いた。真上にヘリコプターが止まり、登るための縄梯子が降りてきた。すると研が焉武のすぐ側に来た。

「お前には感謝してるよ。研究もかなり進歩しそうだ。そのお礼と言っちゃなんだが、2つだけ良いこと教えてやる」

「なんだよ…」

もう勝てないと思い、抵抗する気も起こらなかった。憎悪に満ちてはいたが、流石に指一本も動かせない今は諦めるしかない。

「変身系自然型のミュータントが生まれる条件なんだが…実はな。オッドアイである事以外に、もう1つ重要な物が必要だと仮説を立てていて、お前にそれを持ってもらったんだ」

「…?何が言いたいんだ?」

「つまりオッドアイだけじゃあ駄目だって事。もう1つ必要な物があるって事だ。それは憎悪。殺意でも良い。とにかく恨みや怒りを強く抱いていなければ、変身系自然型能力は素質を持っていたとしても手に入れられない。私は色んな人間で試してみて、その可能性を導き出したんだ。昔1人だけ成功した人が居てな。その人も強い憎悪を抱いていた。そこでお前にも憎悪を抱いてもらう事にしたんだ」

何が言いたいのか殆ど分かってきた。

「まさか…俺の両親を殺して…わざわざその映像を俺に見せたのは……」

「そう。その憎悪を持ってもらうため。おかげで良いデータが手に入ったよ。感謝している。だからもう1つ良い事を教えてやる」

「なんだよ…」

「私の能力は『細胞分裂を使い体の一部を創ったり、また負傷した部位を治す能力』だ。まぁそのうちお前なら知りえた事だろうがな」

「細胞……分裂…?」

「そうだ。まぁそれ以上は教えられねぇよ。でも…IPGの奴らなら、ある程度私の能力について知っているかもしれねぇけどな」

薩春が縄梯子を掴み研を待っていた。

「研さん!行きましょう!!ここに長居しても良いことありませんよ!」

「分かった!!」

研も縄梯子を掴んだ。するとヘリコプターは何処かへ向かって飛んで行った。2人は上へ昇っていき、ヘリコプターの中へ入った。

「俺は…最後まで……やられっぱなしで…アイツの思惑通りだったって事か…。この爆発の作戦以外は…」

くそっ!と叫んだ。しかし体は動けないので、どうしようも無かった。自然と目蓋は閉じて、そのまま眠ってしまった。


ーーーーーーーーーー


周りがとても明るくなったので目を開いた。空はまるで絵具で描いた絵の様に青く見えた。雲もチラホラと見えて、太陽は綺麗に眩しく光っている。今日は快晴だというのが、素人の焉武にもすぐに分かった。

「朝…か…」

体を起こした。だいぶん疲れが取れた。破片だらけで体も痛かったが、とにかく疲れていたのがあったので、そこまで気にせずグッスリと熟睡する事ができた。

「とにかくここが何処なのかを確かめて…そして…一刻でも早く家に帰りたい…」

周りを見渡すと、人が集まっていた。やはり昨晩爆発が起きたので、気になって見に来たのだろうか。昨日は夜遅くというのもあったり、近くに家も無いことから、気付く人があまり居なかったのだろう。とにかく面倒事になりたく無いため、隠れつつ廃墟と化した研究所から抜け出した。


ーーーーーーーーーー

焉武は暫く適当に歩いた。真っ直ぐ歩いていると、とても治安が悪そうな区域に入った。貧困層区域と言われる区域。簡単に言うとスラムである。35年前にパンデミックが起きてからというもの、世界中が変わった。日本も政権が変わったりなどにより、パンデミック終息後も経済にかなりの変化が起きた。日本政府は社会的福祉に使う金を減らす方向を考えて、貧しい人でも暮らせる様にと貧困層区域と言われる区域が作られた。しかしそこは社会的福祉がほぼ行われないという場所で、日本の憲法の1つの『基本的人権の尊重』をほぼ無視した区域である。だいぶん調整は出来てきたが、それでも貧困層区域は消えず今も残っており、その土地の賃金はとても安くほぼ0に近い為、政府の考え通り貧しい人達が住む区域となっている。

「くっ…初めて入ったんだが…。本当治安が悪そうだな」

貧困層区域では一般の法律は殆ど通らず、強いて言えば殺人などと言った犯罪しか警察などは動かない。貧困層区域は犯罪率が非常に高い為、いちいち対応していたら一般区域の方に手が回らなくなるからだ。因みに焉武は一般区域出身である為、貧困層区域には入った事すら無い。

「すみません…。今ここはどこなんですか?」

取り敢えず道端で座り込んでいるおじさんに話しかけた。道路に平気で座っている。

「あぁ?」

「あぁ…一般区域への道を教えて欲しいんですが…」

「一般区域への入り口か?ここを真っ直ぐに言って、十字路を2回過ぎた後に右に曲がるとあるよ」

「ありがとう…ございます…」

明らかに風呂に数ヶ月は入ってないであろう見た目だった。

「金…」

「え…?」

「お嬢ちゃん…。情報を提供して上げたんだから…ほら…」

手をこちらに伸ばしてきた。そう言われても、何も持っていない。

「無いならその身体で払ってもらうとするか…」

(何言ってんだ…この爺さんは…)

良く見ると横の焚き火が消えていた。

「なぁその火…消えたのか?」

爺さんは焉武が指差す方向を見た。

「あぁ。昨晩消えてね…」

爺さんの服はボロボロで穴が開いており、6月とはいえ寒そうな服装だった。風が強い日とかは確実に寒いだろう。

「取り敢えず…火を点けてあげるから、それで許してくれ…るかな?」

ちょっと女の子っぽく聞いた。

「良いじゃろう。ほれ点けてみろ」

焉武は爺さんに見えない様角度を考えて、しゃがんで薪に火を点けた。

「はい」

「お前…ライターでも持ってるのか?」

「ま…まぁね」

焉武はササッと離れて行った。


パンデミックが収まった後経済の方はすぐに何とかなり調子は戻ったのだが、政権が変わってからの政府の動きが前の政府より明らかに悪く、ほぼ何もしなかったという事があり日本は悪化の一途を辿った。その結果がこの今まで殆どなかった貧困層区域だ。過去にもあったが、一気に増えてしまった。しかしこの貧困層区域というのが増えた頃は、焉武は生まれていない。貧困層区域がある事に何も違和感も無かった。

(どうする…家に帰れたとしても…俺の見た目はだいぶん変わっている。顔は見てないけど、この体の変化からして、多分面影も殆ど無いだろうな…。そうなったら生徒手帳とかの身分証明書は意味が無くなるだろうし…うぅん…)

貧困層区域と一般区域を隔てる壁と門を見つけた。その前には警察が立っており、勝手に入らない様見張っている。とある疑問が出てきた。

(あれ…?俺…どうやって向こうに行こう…)

少しだけ考えて、すぐに答えが出た。壁の横を歩いて行って、なるべく門などの人が多い所から離れる。そして人が居なくなった事を確認した後、ジャンプして足の裏から炎を出して、その力で少しだけ普通のジャンプより高く跳び、壁の上を掴んだ。

「ぐっ!!」

暫くもがいて、何とか足が上がり、そのまま壁を乗り越えた。

「ふぅ…ここからは…まぁ大体分かるかな」

運が良かったのか横の一般区域は自分が暮らしていた町だった。ここからは土地勘で何とか行ける。

「さて…取り敢えず家に帰るか…」

焉武は自分の家へ歩いて行った。

〜IPGの世界の単語集〜


No.10

貧困層区域


犯罪率が最も高い区域。あまりにも犯罪率が高い為、殺人やテロの疑いがある事件以外の場合は警察は取り締まらない。仕事をクビにされ、一文無しになった者や貧し過ぎて、一般区域に住む事が出来なかった者が暮らしている区域。簡単に言うとスラム街のような場所。定期的に食料などが配給される。そして警察が動かない代わりに、IPGが日々パトロールしてくれており、ボランティアもしている。


ーーーーーーーーーー


No.11

一般区域


普通の人が暮らしている区域。犯罪も0ではないが、貧困層区域よりかはかなり少ない。というか普通の区域である。


ーーーーーーーーーー


No.12

富裕層区域


犯罪が全く無い区域。安全性が保証されているが、その分家賃などが高い為、暮らしている層は富裕層。つまり金持ちが暮らしている区域である。因みにその安全性の高さから、国会などの国に大事な施設などは全てここにあり、IPG日本本部も東京都品河区の富裕層区域にある。

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