宝物庫。
「こんにちはー」
「あら、ハルキさんクジラは獲れたの? あとうちのリザは?」
「いや、かくかくしかじか―」
ローナさんに挨拶をし、土産を渡しながら経緯を話す。
「なるほど。あの子逃げたわね…」
「逃げた?」
「気にしないで良いわよハルキさん。他に変わったことはある?」
「髪が伸びましたね」
「ふーん…」
「?」
俺には良く分からんが、ローナさんには何か思い当たる節があるらしい?
「まぁゆっくりしていって。リザが居なくてもここはハルキさんの家と変わらないわよ。もうすぐお父さんも帰って来るし」
「どもです」
リビングでのんびり寛ぎながらローナさんが居れてくれたお茶飲み、まったりタイムに突入する。
「母さんただまー」
「お帰りなさい。ハルキさん来てるわよ」
まったりしているとおっちゃんが帰ってきたようだ。いかん。危うく寝る所だった。
「おぉ愛しのマイドーター! ってリザがいねぇ!! Why?」
「ハルキさんって言ったでしょ」
「おっちゃんかくかくしかじか―」
おっちゃんにも同じ説明をする。
「なるほどなぁ。まぁ良いや。これからはいつでも直ぐ帰ってこれるんだろ? なら先ずはクジラだ。ステーキ…いやカツか? カルパッチョも捨てがたい…」
おっちゃんは直ぐにクジラに思考が移行した。この切り替えの速さ見習いたい。
「はいはい。全部は大変ですから1つにしてくださいね」
「ぐぬぬぬ…。ハルキどうにかならんか?」
「カルパッチョなら在庫持ってますね」
「それだとステーキとカツの2択か。ぐぬぬぬ…」
「あなたステーキにしてください。焼くだけですし」
「そうか?」
ローナさんは揚げ物をしたくないようだ。
「というかいっそ城に行けばいいのでは? リザにも会えますし色々食べれますよ?」
「その手があったか!」
「お父さんご迷惑なるでしょ」
「なーに俺とランディー国王はマブダチよ? 大丈夫大丈夫」
「ほんとに良いのかしら?」
「良いんじゃないですか? 仲が良いのは本当ですし、リザに会う大義名分在りますし大丈夫ですよ」
ギルドを温水プールにしたとき、ギルドでも俺ん家でも2人仲良く飲んでたし。
こうして戸締りと準備をして城の図書館にテレポる。
「おぉ! マイドォォォォオオタァァァァァアア!!」
「え!? 嘘! お父さん!? お母さんも!!?」
図書館にテレポするなりおっちゃんは他の皆の眼も憚らずリザに抱きつく。
「あれ消えた!?」
「残像よ」
いつの間にかリザは俺の横に居た。
「はいあなた、図書館では騒がないの。それと王様に挨拶しに行かないと。ほらリザ案内して」
「何で私が!? というか何で連れてきたのよハルキ!」
「え? 2人共会いたいかなと思って」
「そうよ? 顔を見せに帰ってこないなんてひどいわ。これは後でたっぷり色々聞かないといけないわね?」
「だから嫌だったのよ! ハルキの馬鹿!!」
「ぅえ!?」
ローナさんの意味深な態度に、リザは何故か俺を罵倒する。辛い。
「ハルキさんにあたらないの。ほら観念して案内しなさい」
「分かったわよ。ほらハルキも行くわよ」
「俺も!?」
「連れてきたんだから当たり前でしょ?」
当たり前らしい。と言う訳で王様の執務室に行く。
「王様、お客さん」
「ん? おぉ! マイブラザー!」
「いよう! 我が兄弟!」
王様がおっちゃんを見つけると、互いに熱い抱擁を交わす。
「王様。今回は突然の―」
「ぁーぁー、前も言いましたがそういうの良いからローナさん。リザちゃんのお母さんでブラザーの奥さんだ。堅苦しいのは無しよ。うちの王妃も会いたがってたし」
王様は片手を振りながらローナさんの挨拶を遮りフランクに対応する。
「おっと折角ブラザーが遊びに来たんだ、仕事してる場合じゃねぇ! 先ずは城の中の案内だな! それにそうだブラザー、夕食はなにが良い? うは! 忙しくなってきた!」
王様のテンションが異様に高い。高すぎる! そして王様は近くにいた兵士を使いに出し、王妃様がやって来た。
「あらあらまぁまぁ。あなたがリザちゃんのお母様のローナさんね。私はシンシアと申します。お話は夫と娘からよく聞いてますわ。わたしの事は気軽にシンシアとお呼びください」
「そんな…。宜しいのですか?」
「はい! 是非ともお願いしますわ」
「分かりましたシンシアさん」
「うふふ」
ローナさんが王妃様を名前で呼ぶと笑みをこぼした。
「ここにリザのお母様が居ると聞いて!!」
「これ、はしたないですよミルダ」
「すいませんお母さん。あ! ローナさんお久しぶりです。リザの大親友ミルダです!」
続いて勢いよく現れた姫さんが王妃様に窘められるが、素早く挨拶をする。いつの間にか大親友になっていたらしい。
こうして何故か王様達に国賓以上の扱いで城を案内されるおっちゃんとローナさん。
「ここがうちの宝物庫だ! なんか持って帰るか? この絵とかどうだ!?」
「いや兄弟。こんなデカい絵は家に入らんぞ」
「そうか? ならこっちはどうだ?」
案内された宝物庫には、広い空間に色々な調度品が綺麗に飾られている。美術館か?
「ローナさん、こちらのネックレスとかいかがかしら?」
「まぁ素敵なデザインですわね。ですがこんなに立派だと肩がこらないのかしら?」
「でしたら向こうのはどうかしら?」
王妃様がローサさんに色々おすすめしている。
「は! リザも何か欲しいものはありますか!? 何でも仰ってくださいな!」
「いやミルダ。これ全部国への寄贈品でしょ? ダメでしょ?」
「気にしないで良いですよ! さぁ!」
「いやダメでしょ? はいはい、王様達も冗談はその辺で」
「つれないのぅ、しかしまぁそろそろ夕食か」
「まぁそうですね。皆さんを待たせる訳にも行きませんし、ささ行きましょうローナさん」
「はい、シンシアさん」
食堂に行くと皆すでにスタンバっていた。と言う訳でいただきます。
夕食にはおっちゃんのリクエストのクジラ料理が並び、王様の隣にはおっちゃん、王妃様の隣にはローナさんと楽しく談笑している。
「ところで空飛ぶ城のヒントは何か見つかったのか?」
「全然です王様。あの膨大な蔵書から僕達だけであるかもわからない物を探すのは至難の業です」
王様の質問にウィルさんが答える。
「というかロイドくんもバルドさんもサボってないで手伝ってくださいよ。魔剣取り上げますよ?」
「横暴だぞ!?」
「俺らには向かないっす」
まるで反省が無い。
「ならうちで手の空いてる者も手伝わせるぞハルキ」
「いや城で世話になってるのにそこまで甘える訳にはいかんとです」
「いや気にするな。ハルキが城を浄化して綺麗にするもんだからメイド達が暇してる」
「あれ? メイドさん達はその暇を騎士隊のお世話で忙しくなったんじゃ?」
「世話という名の婚活な。ついでだから騎士隊も駆り出せば不満も出ないだろ」
「んじゃ頼んじゃおうかな」
世話になってるから掃除でもとやっていたら、俺はいつの間にかメイドさん達の婚活をプランナーしてたらしい。
「決まりだな。ところでブラザーは泊ってくんだろ?」
「おう。準備バッチシだ」
「ローナさん。この後私のお部屋でお話しません? イケるのでしょう?」
「はい、シンシアさん。嗜む程度にはですが。娘も一良いですか? 今回の旅で色々と聞きたいことがありますのよ、色々と」
ローナさんは色々を強調しながらにこやかにリザを見ているが、リザの顔は見るからに嫌そうである。
「何その顔? 可愛い顔が台無しよ?」
「別に…。ほら私はお酒弱いし、折角仲良くなれたんだから2人きりで良いじゃない?」
「聞いてシンシアさん! リザが冷たいの! 今日もハルキさんが来てくれなきゃ会おうともしてくれなかったのよ!」
「ちょっとお母さん! そういうのやめてよね! わかったわよ付き合うわよ! 悪かったわよ!」
ローナさんは王妃様に抱きついて愚痴っている。その様子に観念したようだ。




