王都。
ということで俺とミルダさんでダンジョンにやって来た。
初めはギルド長とお供のスーンさんも同行しようとしたが、ミルダさんがギルド長は仕事が、スーンさんは危険もないし彼女以外に一緒にやって来た人達には今日は自由を与えているからと、あなたも今日はもう自由にしていいと断っていた。
そんなリザは行って帰ってくるだけだしと初めから来る気が無かった。
そんなわけで俺とミルダさん2人きりだ。
「ここが例の部屋ですか……。棚しかありませんね」
ミルダさんが部屋を見回している。
「あぁすいません。今朝既に回収してしまった後なんですよ」
「いえ大丈夫ですよ、どのみち復活するのも確かめないといけませんから。明日も一緒に連れてきてもらえますか?」
「えぇそれは大丈夫ですけど、此処の扉ってどうするんですか?」
「ハルキさんに開けて貰った後にこちらで新たに新しい魔法の扉を設置しますが、今日の所はまた帰り際に閉めて行ってください。正直話し合いがこんなに早く終わると思ってなかったので今日フリーにしてしまったんですよね。ですから明日の朝一緒に担当の者たちを連れてきますので、其の後は大丈夫です。お手間をおかけします」
「いえいえ、これから毎日回収に来ないで良くなるので有難いですよ。それじゃ戻りますか? 宿までお送りしますよ」
「そうですね、ではギルドに戻りましょう。そこで昼食でも取りながらもう少しお話させてください」
ギルドに戻り昼食をとる。リザも一緒だ。
リザに聞くとスーンさんはあの後直ぐにガイドブック片手に何処かに言ったらしい。それをミルダさんがスイーツ巡りでしょうねと補足してくれた。どうやら甘い物が大好物の様だ。リザの同類か?
「それでお話って何ですか?」
「実は1度王都に来ていただいて王様に会って頂きたいのです。予定とか大丈夫でしょうか?」
「え? お断りします」
「……」
お願いを即座に断る。予定云々ではない。めんどくさい。
「それは何故でしょうか? 一応これは今回の功績を称える為と褒美の授与も兼ねているので、来ていただかないと私としても困るのですが……」
「え? 俺は庶民なので作法とか分からないですし、無礼があったら失礼ですからお金だけください」
「いやその辺は普段通りで構いませんし、お願いします」
ミルダさんは席を立ちあがり頭を下げる。え? ちょっと何してんの!?
「いやいや俺は只の庶民でしがないハンターですから頭上げてくださいよ!? 周りも見てますから!」
俺は慌てた様子に席に戻りはするが、その目は先ほどから変わらない。
「そもそもさっきはそんな話してなかったじゃないですか? ずるいですよ」
「これも交渉の1つですよ。先に言ってごねられたら困りますからね。おかけで鞄の交渉自体はあっけなく終わりました」
そう笑顔で言ってのける。
先程の件に対しては一応ギルド長とメアリーさんに確認してもらって、問題もなく既に誓約書を交わしてしまっているので今更である。
ずるい、こんな事なら適当に一軒家位貰っとけば良かった。100億もあれば豪邸すら買えるだろうが、それとこれは別だ。とりあえず言っとこう。
「ずるいですよ、そんな事ならこれから住む家位報酬に加えとけばよかったです」
「何を言ってるんですか? 家なら王都に報酬として差し上げると記載されていたでしょう?」
「ふぁい? 俺それ知らないんですけど? ちょっとリザ、メアリーさん呼んできて!」
「面倒臭がってちゃんと自分で読まないからそうなるのよハルキ」
間抜けな声で驚く俺はリザに頼む。呆れながらリザは呼びに行ってくれた。誓約書を渡されたとき良く分からんと読まずに2人に丸投げしたが、なぜ教えてくれない?
「ハルキさんどうしました?」
直ぐにやって来たメアリーさんだがその顔は笑っていた。やはり知っていて黙ってたな。
「どうしたじゃありませんよ? 今ミルダさんから報酬として王都に家を貰えると聞かされたところですよ! なんで黙ってたんですか!? 俺この街に住むのに!」
「意外に早く気づかれましたね……。まぁ別に良いじゃないですか。それにこの手の報酬には慣例になってるんですよ? 知らなかったんですか? 要らなきゃ売れば良いのですよ。国が用意した屋敷は信用度も高く大商人が高く買ってくれますよ」
「え?売っていいんですか?」
褒美に貰ったものを売ってよいと聞いて驚きミルダさんに聞く。
「えぇ別に良いですよ? 王都に移り住むのも良いですし、住み慣れた場所が良い方もいますし、どちらでも構いません」
「なら初めからお金で良いじゃないですか?」
「一応王都の経済効果も担っているのですよ。屋敷を立てるには資材が必要になりますし、職人も必要です。建て終わった後は色々な家具に、執事やメイドといった使用人の雇用にも繋がります」
「あぁなるほど」
俺はミルダさんの説明に納得し、メアリーさんは俺が納得したことでさっさと戻っていった。ちゃんと考えられてんだな。お金渡してはい終わりじゃ王都でお金使われないし困るもんな。
「というわけで1度王都に来ていただけますか? むしろ来ていただかないと報酬渡せませんよ? 鞄も王都まで運んでいただきたいですし、本当お願いします。旅費も持ちますし滞在もお城で優雅に過ごせますよ? もちろんコンビのリザさんも一緒で構いませんし行きましょうよ? 楽しいですよ?」
「ハルキ行くわよ!」
「お!? どうしたいきなり?」
「王都の有名スイーツ店制覇するわよ!!」
いきなりの食付きに驚いたが、なるほどそれが目的か。
「ほら、リザさんは行く気満々ですよ? 観念したらどうですか?」
「というか、報酬て王都行かないと貰えないんですか? てっきり持ってきて貰えると思ってたんですけど、無理なら流石に行きます」
「わぁお! 現金な人ですね。いや流石に100億とか持ち運べないので小切手で差し上げますが、それを出来るのが王様だけですし、やはり直接渡されたいんですよね」
「へぇー、小切手ってどうやって現金化するんですか?」
「え? 銀行に行けば普通にできますけど、知らないんですか?」
「ははは、世俗に疎くて……」
変な顔されたが適当にごまかす。なるほどどうやらこの世界にも銀行があったらしい。気づかなかったな。俺口座持ってないし後で作るか。
「そうなんですね、じゃぁ行くかリザ。美味しいケーキ奢るって言ってまだ奢ってないしな」
「フフフ、ハルキの奢りでスイーツ食べ放題……、フフフ……」
リザは何か妄想に耽り始めた。とりあえずほっとこう。
「というわけで王都行きます」
「えぇ、ありがとうございます。では出発は明後日の朝という事でよろしくお願いします」
「えぇ、こちらこそよろしくお願いします」
「あ、そうだ、実はお世話になった方に鞄あげたいので何個か手元に残しておいても良いですか?」
「えぇ、そんなに多くなければそのぐらいは譲歩いたしますよ」
「わがまま言ってすいません、ありがとうございます」
「いえ、今回の功績を考えればそのぐらいどうってことないですよ」
これでローナさん達に鞄をあげても大丈夫だな。




