謙遜と報酬。
「ベッドはそっちでチェストはそっち。買ってきたハンガーラックと棚はそっちにお願い」
戻ってくると早速シンリーさんが指を差しながらそっちそっちと指示を出して、俺はそれ従いサクサク設置していく。
「ありがと、後は自分でやるから大丈夫よ、ウィルもいるし」
「そうですか?」
「えぇ、本来ならイリーナとバルドの依頼だからね、あんまり私達に時間とらせるわけにはいかないわ。今日はありがとね!」
大方設置し終えると気を遣ってくれた。その気遣いがあればパンも焦がさず温められるのではと思うが、確かにその通りだ。
「ハルキ君、僕からもお礼を言わせてくれ。今日はいきなりのお願いを聞いてもらってどうもありがとう、明日にでも直ぐにギルドに言って報酬を貰えるようにしとくから、イリーナ明日ギルド行くだろ?」
「えぇ明日の午前中には行くわ。行く前に此処に寄るから一緒に行きましょう。そっちの方がウィル説明しやすいでしょ」
「あぁ助かる。イリーナも引っ越しで慌ただしいと思うがよろしく頼むよ」
「良いわよ別に。急な引っ越しは主にバルドのせいだし、元々今回のハルキさんの仕事ぶりを懇切丁寧に説明して、大満足していると直接伝えたいからね」
「あぁ、その点は僕も協力させてもらおう。さてバルドとは今日でお別れだな……。イリーナと幸せにな」
「あぁ……、ウィルもシンリーと幸せにな。泣かすなよ」
バルドさんとウィルさんは互いの拳を合わせて、新たな門出を祝福し合っている。
「なに良い顔で今生の別れみたく演出してんのよ? 私等パーティーなんだし結婚したからって解散しないわよ」
「なんで男性ってこう無駄な所で無駄に恰好つけたがるのかしら?」
「私、部屋で荷物整理してくるわ」
「ハルキ君、リザちゃん、私達も新居にいきましょ。ほらバルドも行くわよ」
シンリーさん部屋に戻り、イリーナさんは既に玄関を開けていた。俺達も後に続くとバルドさんが慌てて追いかけてきた。
「今日はありがとう、とても助かったわ、依頼してほんとよかった!」
「あぁ、ハルキ君、リザさん、今日は本当にありがとう。こんな楽な引っ越しは初めてだ」
「ほんとよね、改めてありがとうね。お昼はあり合わせだったから、夕飯は豪勢な物奢らせて頂戴ね」
「いやいや、まだ家具設置して、食器や鍋なんかはテーブルに出しただけじゃないですか、それにこれから要り様でしょうし其処までご厚意に甘えられませんよ。報酬だって多めに頂いていますし」
これから入り用の新婚さんに余りお金を使わせたくない。報酬は十分頂いた。
「此処までやればもう終わったも同然よ。今日は歩き詰めだったしお腹空いたでしょ? ね?」
「ハルキは少し謙遜が過ぎるわ、損するわよ? イリーナさんの申し出は至って普通の範疇よ? 依頼内容に対して満足してもらっている証なのよ? それを断るのは逆に失礼になるわよ?」
「えー? でもなぁ……? うーん……。元々多い報酬に知り合いのウィルさんの追加以来でさらに倍になってるからなぁ」
「はぁ……ハルキ、それはそれ、これはこれ」
リザは呆れて溜め息をついているがそんなもんだろうか?
「なら今度ウィル達と一緒に改めて食事を奢らせてもらうわ。たぶんウィル達もお礼に後日改めて食事に誘おうと思っているはずだし、ハルキさんの仕事ぶりはそのぐらい評価されるものなのよ? 普通引っ越しなんて思い至って直ぐ出来るものじゃないんだから。期待しててね!」
「はぁー、はい。じゃ今度お願いします」
自分ではあまり実感ないがイリーナさんは笑顔だし良いんだろう。
「そうよハルキ、相手も困るし感謝は普通に受け取っておきなさい」
「うふふふ、期待しててね。あ、それとハルキ君、新しいの買ったし2人掛けのテーブルあげるわ。要らなかったら売っちゃって良いから。ハルキ君近々引っ越すんでしょ? リザちゃんから聞いたわ」
「えっと……はい、ありがとうございます」
反射的に断りそうになったがありがたく頂くことにした。
「ハルキ分かってきたじゃない」
「そうよハルキ君、リザちゃんも大変ね」
「それじゃ今日はありがとね、明日ギルドにちゃんと報告しとくからお疲れ様ハルキ君、リザちゃん。今度食事に誘うから!」
「あぁ期待しててくれ、今日はありがとな」
「はい、楽しみしています」
「私も楽しみしています」
笑顔を見る分に多分リザが一番楽しみしているんではなかろうか?
そして依頼完了のサインを貰って帰りにダンジョンに寄ってからギルドに戻り報告する。
「依頼無事に終わりましたー。これ完了のサインです」
「メアリーただいまー」
「お疲れ様です、はい確かに。それで初めての指名依頼はどうでしたか?」
「んー正直良く分かんないですけど、満足していただけたみたいです。あと途中追加で、イリーナさんとバルドさんの同居相手2人も元々婚約してたみたいで、その引っ越しも依頼されました。詳細は明日イリーナさんと説明に来るみたいです」
良くほうれんそうは大切にと言われているので伝えておく。
「そうですか? なら詳細は明日本人達から聞きましょう。それとこれが今日の報酬です」
「ありがとうございます」
「それにしてもそうですか。あの2人も結婚ですか。私にもどこかに良い人いませんかね?」
「メアリーさん美人なのにモテないんですか?」
「いえ、実際お付き合い初めても結婚となるとピンとこないと言いますか、何というか、まぁまだ時期尚早なんですかね?」
「さぁ? 俺にはなんとも」
正直俺には結婚なんて考えたこともないしわからん。
「メアリーはきっと理想が高いのよ」
「あら? リザ言う様になりましたね」
「あー今日イリーナさん達年上とずっと喋ってたからじゃないですかね? 初めはおどおどした感じでしたけど」
「年上が苦手なリザが頑張りましたね。そうですかまぁ良い傾向です。あと明日辺り王都から遣いの方が到着するみたいなのでお昼からギルドで待機してて貰えますか? リザもお願いね」
「あーはいわかりました」
「りょーかい」
俺とリザは適当に返事を返した。




