それぞれ。
「昼食ったらどうする? 俺はダンジョンに鞄見に行こうと思ってるんだけどリザはどうする?」
「ん? 私もダンジョンについて行くわ」
「そうか? ただ行って帰ってくるだけだぞ? 何か用事があったりしたらそっち優先で良いんだぞ? ここ数日は俺に付き合わせてばっかりだしな」
「平気よ。それにちょっとね」
「ちょっと?」
「気にしないで良いわよ」
ここ数日、街にやってきてからずっとリザには付き合ってもらってばっかりで、迷惑かけっぱなしだ。もしかして何か用事があっても気を使って何も言わずに付き合ってくれているのかもしれないと不安になる。
それにちょっととは何だろうか? 気になる。
「今日も普通に鞄あったな。じゃ終わったし帰るか」
ノルマも無事達成したしさっさと帰ってリザに好きなことしてもらおう。
「私は少しダンジョンで軽く体動かしていくわ。ハルキは先に帰ってていいわよ」
「え? おいおい、リザがダンジョンで狩っていくなら俺も付き合うぞ? コンビなんだし」
「朝は狩らないって言ってたじゃない。それにハルキと一緒だと私の運動にならないのよ!」
リザは声を大にして言う。
「う。なら後ろを黙って付いていく」
「そんな事されたら逆に気になって怪我するわよ。それにコンビだからと言って四六時中一緒に居るわけじゃないわよ。依頼によっては別々に行動することもあると思うの。ね、ハルキ。昨日私の強さ見たでしょ?。ダンジョンウルフぐらいなら私の敵じゃないし11階層うろつくだけだから何かあったらすぐに戻れるし大丈夫よ。コンビなんだし信頼して」
「ん、そうか。分かった。くれぐれも無茶はすんなよ」
しぶしぶ納得させられ、リザを見送る。
本当ならついていきたいがリザは俺なんかより強いし、それに最後に「コンビなんだし信頼して」と言われて付いて行ってしまっては、リザを信頼してませんと言っているようなものだ。引き下がるしか無い。食い下がって嫌われたくはないしな。
それにしてもやっぱストレスとか溜まってるんだろうか?
それとももしかしてさっきメアリーさんが言ってた、街の案内依頼とかコンビじゃなくリザしかできない仕事も、前向きに考えているのかもしれない。
あれ? コンビ解散の危機? いやいやまさか?
見捨てられないようにとりあえず1人てゴブリン狩ってみるか。朝から時間が立って落ち着いたし、コンビ組んだんだから相応の強さは必要だよな、うん。
そう思い直しゴブリンキングがいる部屋へと向かう。
扉を開けるとキングは俺に気づき威嚇か喜びか大きく雄叫びを上げた。
前には見なかった行動だ。俺のこと覚えているのか? いや落ち着け俺。
こちらに向かってくるゴブリンキングを見据え、俺はいつものごとく『メテオ』を放つ。
その瞬間ゴブリンキングは黒い霧へと霧散した。
「ふぅ。1人でダンジョンはやっぱちょっと緊張するな。今まではずっとリザが一緒に居てくれたし、これが仲間の有難みというやつか」
いつも一緒だったリザの頼もしさに感謝した。それにしても1人だとやっぱ心細いな。
「さて、行きますか」
それを振り払うかのように声を出し、俺は収納から地図を取り出し入り口に向かって歩き始めた。
その後順路を逆走する形でゴブリンを一掃していく。見つけたら倒すという事をひたすら繰り返しながら、10階、9階、8階と順調に上がっていき4階までやってきた。
ここも地図を頼りに進んでいくと、角を曲がった先で短剣を構えたゴブリンに倒れている少年が襲われているのが目に飛び込んできた。
直ぐ様『メテオ』でゴブリンを倒し少年へと駆け寄る。
「おい、大丈夫か!? ポーション飲んどくか!?」
「ぁーはい……、大丈夫……です。ちょっと魔力切れで足がもつれて、転んだだけなので怪我は無いです。助けていただいてありがとうございます。僕はロイといいます。えっと……」
「あぁ俺はハルキ。ん、そうか。大丈夫か?」
初めは息も切れ気味だったがそれもすぐに整えてお礼を言われた。ロイと名乗った少年は、金髪で少し小柄な体格に顔のそばかすがあどけなさを醸し出している。
「あ、はい、大丈夫ですハルキさん。改めて助けて頂きありがとうございます。いや普段はパーティーで潜っているんですが、今日は皆用事があるとかで僕1人で来てみたんですが、調子に乗っていたら魔力切れも起こしてしまって本当に危ないところでした」
「そうか、大変だったな。1人で帰るのも無理だろうから外まで一緒に行くか?」
こんな場所に置き去りにしたら確実に死んでしまう少年に申し出ると、目を輝かせて、待ってましたと言わんばかりに食いついてきた。
「本当ですか? ありがとうございます。本当にありがとうございます。助かります。ところで他のお仲間さんはどちらに?」
「ん? え、いや俺1人だけど?」
「えぇぇえぇ!? 此処まで御1人で来たんですか? 凄いんですね!」
何故か大袈裟に驚いてよいしょされるが演技派だな。
「いやロイ君も1人で此処まで来れたんだろ?」
「僕はおかげで死に掛けていましたけど」
「でも此処まで来れたってことは結構強いんじゃないのか?」
「いえ、僕なんてまだまだ全然ですよ。他に人より少し魔力が多いくらいが取り柄で剣とか苦手ですし、魔力切れたら何にもできないですから。やっぱり剣も使えるようにならないと駄目ですね。今回身にしみました」
ロイ君はショートソードを構えながら自分にダメ出しをしている。
「おぅ、耳が痛い。俺も剣はあんまり得意じゃなくてな。今度コンビを組んでる相棒に教えて貰おうと思ってるんだ」
「あはははは。ハルキさんは剣すら持ち歩いてないですもんね。苦手でも危ないからちゃんと装備しないと駄目ですよ」
「いやはや、面目ない」
本当は持ち歩いてもいるし一瞬で装備も出来るんだが、面倒だったのでごまかした。
そんな俺達は話しながら時折現れるゴブリンをメテオで倒して進む。
「珍しい魔法ですね?」
「んーそうか?」
「えぇ、初めて見ました」
ロイ君はそんな事を言いながらも余りメテオに関心は無さそうだ。
地味だからか? 地味なのがいけないのか?
「ふぅ着いたー」
「ほんと今日は助けて頂きありがとうございました」
無事に外に出ると既に日が暮れそうだ。
「今度改めてお礼させてください」
「気にしなくていいぞ」
「そんな訳には行きませんよ。それにしても遅くなっちゃったな。2人共心配してるかな?」
「おー早く帰って安心させたほうが良いぞ」
「えっとすいません。ほんと今度改めてお礼に伺いますから!」
「良いから良いから」
ロイ君はペコペコ頭を下げながら急ぎ帰っていった。
「俺も帰るか。リザも帰ってきてるだろうしな」
そして俺も足早にギルドへと帰路につく。
ふふふ。帰ったら今日の俺の武勇伝をリザに聞かせてやろう。
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