浄化屋。
翌朝朝食を終えると例の件で話があるとギルド長室まで呼ばれた。
「いや待たせているね。どうやらとりあえず国から遣いを寄越すという事で落ち着いたようだ。2,3日で来ると思うから、もう少し不便をかけるがすまない」
「いえいえ。元々文無しだったので宿と食事がタダですごく有難いです。何なら遣いの方は来なくてもいいぐらいですよ」
「はは。ハルキ君は正直者なのだな。だがまぁマジックバッグは概ね認可されそうだぞ? 使い方次第では悪用もできるだろうが、そんなこと言ったら武器はおろか、包丁すら販売できなくなるからな。とりあえず出来るだけ集めておくといい」
「よっしゃー! ありがとうございます。これで暫くはお金に困ることはなくなりそうです」
「いや私は別にお礼を言われることはしてないぞ。しかし暫らくどころか一生働かなくても良いんじゃないかな? なんせブルーノ曰く最低100万という話だからな。最初に見つけた分だけでも2億だぞ? 正直羨ましく思ってるぞ」
「はは、ギルド長こそ正直者じゃないですか! きちんと認可されたらお世話になってるお礼に差し上げますよ」
「それは嬉しい申し出だが、ハルキ君を此処で世話してるのは職務上だからな。それを理由に頂いてしまったら賄賂になってしまうからね。私はきちんと自腹で買わせていただくよ」
「本当に正直者ですね」
「それではもう暫らく不憫をかけるがよろしく頼む」
こうして俺はギルド長室を後にした。あと買い取りのおっちゃんの名前はブルーノと言うらしい。
まぁ実際幾らで売れるのかは分からないが、それでも見たことのない大金が入ってくるかもしれないと思うとにやけてしまう。
いかんいかん。こんな浮かれた気持ちでダンジョン行ったら死んでしまう。ちゃんと気を引き締めねば。
食堂に戻るとリザがすでに来ていて紅茶を飲んでいた。どうやら待たせてしまった様だ。しかし開口一番に「何にやにやしてるのよ?」と言われてしまった。
ぐぬぬ、俺にポーカーフェイスは無理なのか? いやだがしかし、あんなこと言われたら仕方がないと思う。俺も席に着きコーヒーを頼む。
「で、何にやにやしてたの? 何かあったの?」
「あぁ、例の鞄な、どうやら許可がでそうなみたいでな。それで嬉しくてな」
「あら、良かったじゃない。でもそうなるともう、ダンジョンは行かなくて良いのかしら? コンビ解散かしら?」
「いやいやいや、何を仰いますリザさん? 今日は浮かれているから止めときますが、僕はリザさんとダンジョン行きたいですよ? コンビも続けたいですよ? 寂しいこと言わないでくれます?」
「あら、そう。わかったわ、このままでいてあげる」
俺の悲願にリザは顔を赤らめ横を向きながら返事をしてくれた。
こうして今日はだらだらすることに。
まぁ後で鞄を確認しにダンジョンにはいかないといけないんだが、それは昼でも夕方でもいいからな。そうして過ごしていると突然声を掛けられた。
「良かった……。ねぇちょっといいかな?」
「はい?」
相手に視線をやると、年上の22.23位のお姉さんが少し安堵した様子で俺を見ていた。
白の上はスラっと、スカートはふわふわしたワンピースに、ピンクのカーディガンを羽織っている。明らかにハンターには見えない。なにか依頼に来た人だろうか?
「依頼なら向こうのカウンターですよ?」
俺は受付カウンターを指を差しながら教えてあげた。だが違ったらしい。
「違うわよ。そうじゃなくて、あなたに用事があったの。いきなり不躾なんだけどお願いがあるの」
「お金なら持ってないですよ?」
正直に答える。
「違うわよ、そういうんじゃないわよ。えっとね、覚えてないと思うんだけど、私前に貴方に此処の地下で浄化の魔法掛けて貰ったことあるの、それを掛けてほしくてね、もちろんお金は払うわ。お願いできないかな?」
前というのはここに来た初日に、メアリーさんに地下訓練場での出来事だろう。それ以外に知らない人に浄化は掛けていない。怪しい勧誘やデート商法では無かったらしい。疑ってごめんなさい。
「あぁあの時はどうもすいません。してなんで浄化を?」
「私今から人と会うんだけど髪がね、傷んでて余り良くないの。一応会う前に美容院でセットしてもらう予定なんだけど、いきなりすぐに良くなったりはしないのよ。でも前にあなたに魔法掛けて貰ったとき吃驚するくらい艶髪になったの、それでお願いできないかなって」
たしかにお姉さんの髪は少し傷んでみえる。
そしてこの人服装だ。人と会うと言葉を濁しているがデートという事は俺でもわかる。ここはひとつお姉さんの未来のために一肌脱ごうではないか。
「そういう事なら良いですよ。でも1日しか持たないですけど良いですか?」
「うん、次の日起きて愕然としたから知ってる……」
「えっと、なんかすいません」
「いや、いいの。あなたが悪いわけじゃないから。それじゃお願いできるかしら?」
「はい、それでは」
俺はお姉さんに浄化の魔法をかけてあげる。髪は先ほどと打って変わって艶々の髪になった。世界が羨む艶髪である。
「うわぁすごい! ありがとう! やっぱり思い切ってあなたにお願いしてよかったわ。これで足りるかしら?」
お姉さんは男なら皆、思わずドキッっとするような素敵な笑顔を見せてくれた。力になれてよかったと思う。そしてい姉さんはお礼と言って1万ガルドも渡してきた。
「え? いやいやこんなに戴けませんよ、1日で戻っちゃいますし1000ガルド位で十分ですよ」
「え? それは少なすぎよ? せめて半分は受けっとって!」
「いや1000ガルドで十分ですって。1日で戻っちゃいますから。それより今日は素敵な日になると良いですね。ほら遅れちゃいますよ?」
「えぇ、もう、本当にありがとう。じゃぁはい。本当ありがとうね」
俺はお姉さんから1000ガルドだけ受け取って見送る。
今日はなんか良い事したぞ。良いことすると気分も良いな。ってなんかリザが呆れてるんだがどうしたんだ?
「リザ、そんな顔してどうしたんだ?」
「はぁ、ちょっとハルキに呆れていただけよ。そんな安く受けちゃって後でどうなっても知らないわよ?」
「え? でも1日で効果なくなるんだぞ? さすがに1万は貰いすぎだろ?」
「はぁ……。ハルキはもう少し世の女性達がどのくらい月にシャンプーやトリートメント、美容院にお金を使っているか知った方が良いわ」
「えぇ!?」
リザに盛大にため息をされた。俺はもしかしてとんでもない間違いを犯したのか?




