ギルド長。
「お礼なんだから好きなの頼んで良いぞ」
「そんなこと言ってると今日の稼ぎ無くなっちゃうわよ? んー何にしようかしら? あ、メアリー! こっち!」
メニュー表を見ながらクスクスと笑うが、リザはメアリーさんを見つけると声をかけた。
「あらリザ、今日はここで食べていくのね」
「ハルキが今日のお礼に奢ってくれるって言ってくれたから」
「あらあら稼ぎ良かったのかしら?」
「それなりよ? そうだメアリーも奢ってもらいなさいよ」
「あら良いのかしら?」
メアリーさんはちらりとこちらを見てくる。
「良いわよねハルキ? 朝メアリーに迷惑かけたんだからこのくらいは?」
「あぁ、メアリーさんも嫌じゃなければ食べってくれ。ギルドの事とか聞きたいしな」
俺はリザの言葉に頷き快諾した。
「ほら、ハルキもこう言ってるわメアリー」
「ハルキさんが宜しいのならお言葉に甘えますわ」
「おう、メアリーさんも好きなの頼んでくれ。これからも色々世話になるだろうしな」
「あまり面倒ごとは勘弁してくださいね?」
今朝のこともあってかメアリーさんはやんわりと注意してくる。
そのメアリーさんはリザとメニュー表を見ながら色々注文している。俺の分は2人のおすすめを適当に注文してもらった。
暫らくすると注文した品々がテーブルに並べられ、どれも美味そうだ。
「あらリザが外でお酒頼むなんて珍しいわね? 何か良い事でもあったの?」
「別に……。ただハルキの奢りだからたまには飲もうと思っただけよ」
「本当に? 所で今日ずっとダンジョンで2人きりだったのよね? それってつまりデートになるのかしら?」
ブハッ
からかい口調でメアリーさんが言うと、リザは飲もうと口に含んだワインを噴出した。
「いきなり何言いだしてんのよ? お父さんにハルキを頼まれたから一緒に行っただけで今日だけよ!」
「え? 明日も一緒にダンジョンに行ってくれると思ってたんだが違ったのか?」
俺は本当にそう思っていたのでそう聞いた。
「な!?」
「そうね。今日1日だけダンジョン案内して終わりっていうのはちょっとあんまりじゃないかしら? ハルキさんはダンジョンに今日初めて行ったわけだしせめてもう2,3日は付き合ってもあげてもいいんじゃないかしら?」
俺1人だと不安なのでメアリーさんのフォローは有難い。頑張れ。
「な!? メアリーまで!? でもハルキは1人でゴブリンキング倒せるくらいには強いのよ? 十分でしょ!?」
「なんでダンジョン初心者のハルキさんが今日いきなりゴブリンキング倒しに行ってるんですか? 普通ゴブリン10匹も狩ったら帰ってくるでしょ?」
いきなりゴブリンキングは狩らないらしい。確かにゴブリンを倒せば日銭を稼げるってカルロのおっちゃんも言ってたな。
「ハルキなら大丈夫と思ったのよ。それにキングも一撃だったわ」
「それはまぁ何というか、お強いのですねハルキさん。それならリザは今1人ですしハルキさんとコンビ組めばいいんじゃないですか?」
「なんでそうなるのよ!? 別にハルキも1人で活動してもいいじゃない」
「やはり1人は何かと危険ですし特にリザはまだ15歳の女の子です。やはり誰かと組んだ方が良いと思ってるんですよね。ギルド職員皆が」
「うぐぅ!」
リザはギルド職員皆が心配していると告げられ口をつぐむ。そんなリザを尻目にメアリーさんに聞いた。
「リザは1人で活動しているんですか?」
「はい、此処1年くらいは1人です」
「なんでまた1人なんです?」
「端的に言えばリザが強すぎて皆さん立つ瀬がないみたいですよ。特に男性の方々は」
「俺は気にしないぞ? リザ、1人はやっぱり危険だし明日も俺と一緒にダンジョンに行ってくれないか?」
「……考えておくわ」
考えてはくれるらしい。
「リザ、そこは快諾するところでしょう? もう一度言いますがハルキさんとコンビを組んで見たらどうですか? いくらあなたが強いとは言っても私は心配なのです。いつか大怪我をして戻ってくるんじゃないかと、いつか取り返しのつかない事になるんじゃないかと、私もギルド皆も思っているのですよ? どうですか? 暫らくハルキさんとコンビ組んでみませんか? 数日でも良いんですよ?」
「分かったわよ、暫らくハルキと組んであげるわよ」
メアリーさんの真面目な話にリザは耳まで真っ赤にしながらそっけなく答えた。
これでリザが怪我でもしたら責任重大だ。まずは足手まといにナラないように強くならねば。浄化の魔法じゃ怪我は治らないっぽいからな。
「だそうですよハルキさん。良かったですね」
「リザが怪我しないように頑張りますね」
そのあとは3人で料理を楽しみながらリザは今日あったことを話していた。そしてその話も終わりに近づき例の開かずの扉の話になった。
「あぁそういえばメアリー、10階の転送陣のとこに開かずの扉あったじゃない?」
「あぁはいありますね。誰も開けることのできない扉が。何のためにあるのかも分かってない謎の扉ですね」
「それね今日ハルキが開けたわ」
ブッ
「汚いわねメアリー、どうしたの? 突然」
「どうしたの? 突然じゃありません!! なんでそんな重要なことをさらっと今言ううんですか!? 戻ってきたときに居の一番で報告することでしょう!?」
「え? そうなんですか?」
「えぇそうです! こうしては居られません。今ならまだギルド長が居ます。行きますよ!」
俺とリザはメアリーさんに首根っこを掴まれ席から無理やり立たされた。
いつの間に俺の背後に? そしてその細腕のどこにこれ程までの力が?
こうしてギルド長室まで引きずられるかの様にやってきた。
「メアリーです。火急の案件が発生しました。失礼します」
扉の前でノックもせずにそう切り出し勢いよくドアをあけ放ち中に入ると、髪をオールバックにした精悍そうな男が何事かと驚いている。
「いきなりだな、んで火急とは穏やかじゃないな? 何があった?」
「はい。ダンジョン10階、転送陣近くにある通称開かずの扉が開いたとのことです。」
「な!? それは本当か!? 数百年、いやそれ以上前から開いたとされないあの扉が、開いたと? どのようにして一体誰がどうやって?」
「はい、それはこの2名が知っております」
「そうか、そちらはリザ嬢と……彼は?」
「彼は今日はギルド登録されたハンターのハルキさんです」
「彼が噂のハルキ君か。まずは話を聞かせてくれないか? あちらに座ってくれ給え。飲み物はコーヒーと紅茶どちらが良いかな?」
「あ、俺はコーヒーでお願いします」
「私は紅茶でお砂糖2つで」
俺とリザは来客用のソファに案内されそれぞれに好みの飲み物を頼んだ。
「メアリー頼む。さて詳しく話してくれないか?」




