歪んだ糸、作られた 意図
さあて、これで俺もとうとう一端の国家公務員だ。
大きく背伸びをした大男は隣の細い男を一瞥すると鼻で笑った。
警察学校を卒業した彼らは、今日から早速新人警察官となる。
横柄な大男の名は角野三郎。
よく日に焼けた四角い顔にゲジ眉の下にはややつり上がったキツネ目でタラコ唇。
ジャングルのようなもみ上げ、腕と胸毛はジャングル。
いかにも人相描きしやすい特徴を持っている男だ。
もう1人の男は、この男とは対照的に痩せ型で、色白で腰までの長い銀髪を括った切れ長の双眸をもつ、端正な顔立ちの男の名は美殿五郎。
「お〜い角さん、そろそろ行こうか」
「御老公もやる気出て来たんだな」
警察学校の同期生である彼らは、幼馴染みで自分たちの事を某時代劇の登場人物の名と近いことから、その名で互いを呼び合っている。
今回彼らが行くのは、例の大学で爆破事件があった事件の聞き込み調査だ。
これが彼らの初任務である。
だからなのか、彼らは自分たちの力量を示そうと関係者らに対して、高圧的に対応した。
こんな大きな事件他の奴らにやらせてたまるものか!
大多数の証言から、事件当時の朝に不審な行動をした学生が数名。
銃撃だと叫んだ学生、それで大体の学生達がパニックになった。
平和ボケしてる日本人に適切な避難方法など、ロッカーに隠れるか、テーブルの下か、はたまた調理室の方へ逃げるしかないだろうと言うのが普通の考えだろう。
だが、数人の学生どもが、2人の女子学生の後を追って中庭へ移動して助かったと言う証言が出た。
何で彼女達は中庭は安全だと思ったんだ?
こいつらは、あの犯人達の仲間に違いないと俺の…いや俺たちの勘が告げてる。
絶対に真実を暴き出してやる。
多少脅して、自白させればいいだろう。
人の良い面をしながら、エゲツない作戦を思いつく御老公に、俺はため息をついた。
今回も上手くそうコトが運ぶと良いんだけどな。
何だか、悪い悪寒がするんだが…。
ただの勘違いで済めばいいんだが…。
事件発生から二日過ぎた頃、渦中の女子学生達はまだ意識不明らしい。
「ここで炙っておくか…」
「え?御老公。マジ?」
「ねえねえ、刑事さん〜どうしたの?誰か探してんの?」
「ああ」
「ちょっと私たちと遊ばない?」
「君たち!!」
「おっさんはお呼びじゃないよ!」
「今は、仕事中だからごめんね」
まだウロウロしてこっちをチラチラ見ている女の子達に例の女子学生たちの事を聞くと待ってましたとばかりに囀る彼女たち。
女って怖いね〜。
「あーそれって占い女子のことでしょ〜」
占い女子とはなんぞや?
疑問符つけた表情で彼女たちを見れば、結構って言うか、百発百中で当たるって有名だと言い出した。
何でも、的中するらしく、彼女が占いの店を出すのは月に4回ほど。
大学近くの公園だったり、ラーメン屋の角だったりと場所はマチマチだが、他の店の迷惑にならないようにと店の人と相談して、店の商品を買った人に整理券を渡してから、占っているらしく店側の売上に貢献しているらしい。
彼女の占いの館はどこの店でも引っ張りだこだと言う噂だ。
上手いことやってんだな。
なら、一気に片付けるか。
俺たち2人は、頭も尻も軽そうな女子学生たちの話を聞きながら、それとなく占い女子達が誘導してここまでの被害だったんだすごいよ。
流石は占い女子だ。俺たちも占って欲しいななんて言えば、彼女達の口ももっと軽くなって来た。
君たちよく助かったよね。あのとき一体何がったのか疑問なんだよね〜。
何であの状況で中庭に出ようと思ったんだろうね?そう聞けば、御老公の隣を陣取ってた女が目をウザいくらいに潤ませながらのアヒル口でポロっと口にした。
「確かパニックの発端は、非常ベルが鳴った時に、誰かが銃撃しに来た逃げろった誰か叫んでたよね。
あ、私、あの時丁度新作の繭あんたのネイルを自慢してて、それを録画してたんだった」
警察の人も見る?この携帯私のだから取んないでよ。重要参考物?関係ないでしょ。今度のバイトの面接の結果が送られてくるんだから、必要なの!!だったら、お兄さんの携帯にブツ送ったけるから
御老公の携帯…これは仕事用だったな。これに送ってもらった。
確かに、画像を再生するとけたたましい非常ベルの最中、一瞬芸能人かモデルかとおもってしまいそうになるくらい美人の学生が銃撃と言う言葉を使っていた。
この子は?と聞けば、彼女達は目を一斉に反らしてきた。
よほど嫌われているらしい。
「いい気味よ」
「天罰が当たったのよ」
「銃撃のことだって、きっと彼女の何人か前の恋人未満の友達以上の男関係でしょうよ」
ヒソヒソ話しているが、興奮してるのか、離れていてもここまで聞こえるほど。
彼女達によれば、この要 聖子と言う学生だが、カップル潰しと言う異名を持つらしく、渾名の通り、友達でもない女子で恋人がいると分かると、彼女達の恋人にお悩み相談と称して、彼女を省いて2人だけの会合と言う名のデートで次々と男の方が、聖子にのめり込んでいくと言うのが常だったらしく、要 聖子も、自分に男が落ちるまでがゲームなのか、男が自分の彼女と別れた途端。
例の儀式が始まって。
『え〜〇〇と別れちゃったの〜。折角、聖子が〇〇たちのために燃える恋の障害を作ってあげてたのに〜。そんなんで別れるなんて信じらんない〜見損なった!!そんな人、私の友達でもないからバイバイ』
これで聖子が言う儀式終了。
「エゲツねーな。」
こんな事まで聞かされても、終始笑顔を崩さない御老公には頭がさがる。
断言はせずに全て疑問文で女子学生達に話しかけてた。
「あ!!そう言われて見れば、なんかおかしくね?」
「あたし〜浦野っちと2人でどこに隠れようか迷ってて、掃除用具入れも満員だったし〜仕方ないから〜、テーブルの下に隠れてたけど〜、アイツら2人して真っ直ぐ中庭に向かってたんだよね〜」
「ああ!!そうだった!だからあんたがあたしの腕つかんで、外行こうって言ったんだっけ」
こうなると後は彼女達の仕事だ。
俺たちはただ状況を見守るだけで十分。
するとたちまち噂が広まって、彼女達が騒ぎを起こしたんじゃないのかと。
後は、糸占いの彼女達が自白すれば、全てうまく収まる。
なのに、なのに!!
なんでだ!!
なんで俺たちの目の前に音もなくヌゥ〜と現れた妖怪2匹!
「「子泣き爺… 砂かけ婆…うわあああ!!食われる!!」」
俺たち2人は仲良く白目を剥いたままその場で気絶した。




