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コールド伯爵令息の身勝手な愛は、一国を滅ぼす  作者: 明衣令央
第3章:それぞれの思惑

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第6話・責任



「どうして、どうしてこんな事になったのだ! どうしてこんな事にっ!」




 ギルベルトたちが居なくなった後、倒れる騎士や兵士を見渡したオウンドーラ王は、頭を抱えてそう叫んだ。


 その様子を見ながら、あなたの交渉の仕方も悪かったのだ、とエドモンド・コールド伯爵は思った。




「我が国の騎士や兵士は、こんなにも弱かったのか? これでこの国を守れるのか? 一体、何故、こんな事になってしまったのだ!」




 オウンドーラ王は、視線をエドモンドに向け、睨みつけてきた。




「エドモンド・コールド伯爵! 今回の事は、全てお前の息子のせいだ! いや、息子の悪事に気づかなかった、お前の責任だ! この責任を、どう取るつもりだ!」




「せ、責任と言われましても……」




 エドモンドは、困ったようにオウンドーラ王を見つめた。


 確かに今回の責任は自分にあるのだろうと思う。


 だけど、この責任をどう取るのだと言われても、どう取ればいいのか、全くわからなかった。


 三男であるトマスの首を差し出し、爵位を返上して平民に身を落とすくらいで償えるものなら安いものだが、そんな事であの傭兵たちは戻ってきてはくれないだろう。


 かと言って、自分たちにはあの傭兵たちのように、戦う力はないのだ。




「もしも魔物たちの襲撃を受けた場合、我々が命をかけて盾になったとしても、一瞬の事でしょうな」




 エドモンドが冷静にそう口にすると、オウンドーラ王は深い息をつき、頷いた。




「確かに、そうだな。東と西の第一砦の傭兵に手を引かれたのは大き過ぎる損害だが、失ってしまったものは、もう仕方がないと諦めるしかない……。残りの第二砦と第三砦でこの国を守っていくしかないのだ」




 先程よりも少し冷静になったオウンドーラ王がそう言うと、はい、と次男であるアランが頷いた。


 アランは王立騎士団所属だった。


 今回弟であるトマスがしでかした事に、彼はとても責任を感じていた。




「このたびは、我が愚弟が、申し訳ありませんでした。必ず、私が王都を守り抜きます」




「あぁ、そうしてくれ。アラン、お前は確か、第二砦だったな。これからはそこが最前線になる。すぐに戻って守りを固めろ。それから、傭兵たちがこの国から手を引く理由は知らせずに、各砦に伝令を出せ」




「御意!」




 アランは膝をつき、オウンドーラ王に頭を下げると、謁見の間を立ち去った。


 オウンドーラ王は、アランを見送った後、再びエドモンドへと目を向ける。




「エドモンド・コールド伯爵、お前はしばらくの間、謹慎だ。その馬鹿息子がこれ以上愚かな事をしないように、見張っておけ。それから今回の責任は、落ち着いたら必ず取ってもらうからな」




「はい、かしこまりました」




 コールド伯爵夫妻と長男であるウォルトは、オウンドーラ王に深々と頭を下げ、全ての元凶である三男のトマスを引きずって謁見の間を出た。




 これから自分たちはどうなるのだろうと、エドモンドは冷静に今後の事を考えていた。


 おそらく、爵位剥奪と財産没収、そして平民へと落とされる事は確実だろう。


 それだけで済めば万々歳だ。


 最悪は、死――それも、自分たちだけではなく、周りの全てを巻き込んだ、死、だった。


 だが、それを理解しているのは、エドモントと妻、そして長男のウォルトと次男のアランだけで、問題の三男であるトマスは、




「ベル……僕の、ベル……どうして僕を置いて出て行くんだ……」




 と、自分を裏切り去って行った女の名前を、ぶつぶつと呼び続けていた。








「さてと、一つずつ片づけていかねばな……」




 やらなくてはならない事は、山ほどあった。


 それを一つずつ片づけていかねばならない、とかなり冷静になったオウンドーラ王は思う。




 まず始めに、第二砦と第三砦の守りを強化しなければならなかった。


 東と西の森からどのくらいの魔物たちが出てくるかはわからない。


 ギルベルトたちが、東の森の九割の魔物たちを倒していたと言っていたから、同じ数の魔物をフェンリルたちが西の森で倒していたとすると、それらが全て森から出てくる事になるーーオウンドーラ王はその様子を想像し、ぞっとした。




 だが、第二砦と第三砦を守る騎士や兵士たちには、この国のために、なんとしても踏ん張ってもらわなければならなかった。


 そのためにも、できるだけ多くの回復アイテムを用意してやらねばならない。




 次に、騎士や兵士と共にこの国のために魔物と戦ってくれる者を、集めなければならなかった。


 本当なら、ギルベルトたちがそうしていたように、第一砦を守ってもらいたいところではあるが、贅沢を言っている場合ではない。


 第二砦でも第三砦でも、どこだっていい。魔物と戦ってくれる者たちを集めねばならなかった。




 そして、一番大切な事――。


 東と西の第一砦を守る傭兵たちが手を引く事を、国民たちに知られてはならなかった。


 それを知れば、きっと国民たちはパニックに陥るだろう。


 だが、万が一知られてしまったとしても、この国の戦力だけで戦えるのだと言い、安心させてやればいい。


 国民たちがオウンドーラ王を、この国を信じれば、パニックは収まるだろう。




 そのために、国民に最も知られてはいけない事は、コールド伯爵の三男がしでかした事と、オウンドーラ王が傭兵たちにした行いだった。


 それを国民に知られれば、オウンドーラ王は国民の信頼を失い、本当の大パニックになるだろう。


 これだけは、どうあっても避けねばならなかった。




 オウンドーラ王は側近や王立騎士団の団長を呼び、全ての指示をした後、深い息をついた。




「ギルベルトたちに、口止めをしておくべきだったか……」




 オウンドーラ王はそう思ったが、大丈夫だろうと思い直した。


 ギルベルトたちはきっと、すでにこの国を出てしまっているだろう。




 だが、オウンドーラ王のその考えは、間違っていた。


 この日の夜、王都オフレンドでは、オウンドーラ王が最も恐れていた事態が起こり、王宮とコールド伯爵家には、多くの国民たちが押しかけた。




「コールド伯爵の息子と、オウンドーラ王がギルベルト様たちを怒らせて、東と西の第一砦の傭兵が、両方この国から手を引くっていうのは、本当なんですか!」




「コールド伯爵の息子が、結婚相手のギルベルト様の娘さんを殺して、別の女と暮らしていたっていうのは、本当なんですか! そして、オウンドーラ王がそれを見て見ぬ振りをしていたっていうのは、本当なんですか!」




「オウンドーラ王! ギルベルト様の娘さんを捕らえて、ギルベルト様を脅そうとしたっていうのは、本当の事なのですか!」




 押し寄せる国民たちに、オウンドーラ王は戦慄した。




 一体、誰が国民たちに真実を教えたのだろうか?




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