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コールド伯爵令息の身勝手な愛は、一国を滅ぼす  作者: 明衣令央
第1章:トマス・コールド

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第10話・西の森の傭兵


「さて、オウンドーラ王。先ほども言ったが、我々はこれでオウンドーラ王国から撤退させてもらう。あとは、第二砦、第三砦で対処されるがいい」




「ギルベルト・ガンドール! 頼むから、考え直してくれ!」




 先程、命が助かった事を僕は喜んだが、王や父さんは真っ青になった。




「断る」




「では、せめて、西の森の砦を守る、フェンリル・エンベリーに、東と西の両方を守ってくれと話をする間だけでも、待ってもらえないか!」




 なんだ、やっぱり、次は西の森の傭兵に頼むんじゃないか。


 なんだかんだと偉そうなことを言いつつ、結局そうするのなら、最初からさっさとそうしておけばいいのに。


 だが、この案は、すぐに却下された。




「申し訳ないですが、そのお話、西の森のフェンリル・エンベリーは、お断りさせていただきます」




 と、突然現れた男がオウンドーラ王に言い放ったからだった。




「あ、あの、オウンドーラ王! 西の森のチェスター・パーシー様が!」




 男の後ろから、王宮の兵士が報告をする。報告が遅いんだよっ!


 西の森の、チェスター・パーシー?


 誰なんだよ、こいつは!


 でも、オウンドーラ王や父さんがとても嬉しそうだ。


 西の森の砦を守っている傭兵なのかもしれない」




「チェスター・パーシー! ちょうど良いところに来た! そなたたち、西の森の第一砦も者たちに、話があったのだ!」




「あぁ、さっきちらっと聞こえちゃいました。東と西の森の両方の砦を守ってほしいっていう話ですよね? それ、お断りします」




「な、何故だ! では、何故フェンリル・エンベリーの右腕であるそなたが、今ここに来ておるのじゃ!」




 このチェスター・パーシーという男、西の森のフェンリル・エンベリーの右腕らしい。


 チェスターは、にこりと人の好い笑みを浮かべると、淡々ととんでもない事を口にした。




「それはぁ、とうとう契約が切れちゃいましたので、もう更新しない事を、一応お知らせに来たわけです。フェンリル・エンベリー他、西の森の第一砦を守る傭兵は、オウンドーラ王国から手を引かせていただきます」




「何故だ! ギルベルト・ガンドールだけでなく、そなたたち西の森を守る者からも手を引かれたら、我が国はもう本当におしまいではないか!」




「フェンリルに言わせると、そんな事は知らない、自業自得だろ、と言うと思います。多分、ギルベルトさんもそう思われていますよね?」




「あぁ、もちろんだ」




「どうしてだ……どうして、ギルベルトならともかく、フェンリルが辞めると言い出すんだ……」




 オウンドーラ王は、頭を抱えていた。


 予想もしていなかった出来事だったのだろう。




「どうしてなんだ、パーシー。なんとか考え直すように、そなたからフェンリルを説得してはもらえないだろうか……」




 オウンドーラ王は必死だった。


 だけど、チェスター・パーシーは軽い感じで、




「それは、この国がムカついたから、ですね。あと、ちょうど契約も切れちゃってましたし。契約更新の手続きをちゃんとしていないそちらの落ち度ですよ」




 と言い、首を横に振る。




「契約なら、更新しよう! 金は今までの倍、いや、三倍支払う! だから!」




「申し訳ないですけど、結構です。それに、さっき言ったでしょう? ムカついたんですよね、この国に。いくら金を積まれたって、ムカつく国のために命をかけるなんて、馬鹿げてる。ねぇ、ギルベルトさん」




「あぁ、全くその通りだ」




 ギルベルト・ガンドールは頷いた。


 チェスター・パーシーは、ですよね、と言って笑う。




「では、オウンドーラ王、そういう事で。一応、最後のお勤めという事で、西の森の魔物たちは、狩れるだけ狩ってきました。まぁ、奴らの事ですから、すぐに湧いて出てくると思いますが」




「こちらも同じだ。東の森の魔物も、一応狩れるだけ狩ってきた。だが、今後の守りを、早々に考えられた方が良いだろう……」




 ギルベルト・ガンドールはそう言い終わると、「では……」とオウンドーラ王に一礼し、謁見の間を出ていこうとした。




「あ、ギルベルトさん。フェンリルがもうすぐ来ると思いますので、少しここで待っていてくれませんか?」




「どうかしたか?」




「俺たち、元々オウンドーラ王に挨拶に来た後、あなたに会いに東の森の砦に行くつもりだったんですよ」




「フェンリルが、私に会いに?」




 ギルベルト・ガンドールは首を傾げた。


 オウンドーラ王は、フェンリル・エンベリーがこの場に来ると知り、直接説得するチャンスだと鼻息を荒くした。




 そしてしばらくすると、銀色の髪をした、ギルベルト・ガンドールほどではないが、長身でがっしりとした体格の良い男が、誰かを大切そうに腕に抱えて、謁見の間に姿を現した。


 フェンリルが抱いている誰かは眠っているようだったが、僕はちらりと見えたその顔を見て、目を見開いた。




「そんな、馬鹿な……」




 男が抱えていた人物は、傷だらけで顔色も悪かったが、あの運命の日、数時間だけ僕の妻だった、ベル・ガンドールだったのだ。



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