1桶目
「で、どうするのですか?」
彼は今神と呼ばれる存在と面談をしている。
彼はなぜここにいるのか、それだけは理解出来ていた。
何故かと聞かれれば何故なのだろうか。
それが神のみぞ成す技とだけ言っておこう。
「どうするって言われましても……ねぇ」
彼の名前は五島 幸介28歳、大手機械メーカーの開発設計部署に務めている。
いや、正確には務めていた。
いつも通り会社終わり自宅に帰宅する途中、空から隕石が降ってきて脳天直撃するという稀有な最期を遂げたのだ。
「私共も、まさか我が子にここまでの不幸値を持っている者がいる、などと把握出来てませんでした。こちらのミスです。申し訳ありません」
目の前の神、正確には人間世界を管理する女神ユリテリアスが頭を下げる。
そもそも神は人間の生死に干渉しないのだが、自分の管轄の世界が滅びる事象にだけは干渉出来るのだ。
今回も、地球に隕石が落ちる予定だったのをちょっとだけ世の理の糸を弄り隕石を空中分解させた時に起こった不幸な事故なのだ。
本来、犠牲が出るはずのなかったのだが、五島に何故か不幸のシワが寄っており、という訳らしい。
「いきなり転生させてやる、と言われても特にやりたいことも無いですし」
そう言って五島は頭を悩ませる。
いま五島はお詫びに転生させてあげる、という話を持ち掛けられていたのだ。
強いて言うなら、普段やっていたゲームのような剣と魔法の世界で事件にも巻き込まれずに、でも能力だけはあるのほほんとした生活がしてみたいとちょくちょく妄想していた節はある。
だが、どんな能力とかどんな世界かなんて分からないし、急に「あなたは死にました。こちらのミスなので好きな世界に転生させてあげます」、と言われてホイホイ決めれる人が居るだろうか。
少なくとも彼は悩んでいた。
ゲームは死んでもリセット出来るが、転生した後はもちろんセーブもやり直しもない。
サポートも無ければ、ヘルプも無いのだ。
普通の人なら迷う。迷って当然だ。
ここでサクサク決めれるのは創作の中だけの話だろう。
「では、そうですね……あなたの深層心理を少し覗かせて貰いますね。-ふむふむ、なるほどなるほど……」
「……」
「では、五島様には我々の力を少しばかり与えることにしましょう。向かう先は剣と魔法の世界です」
「いや、ちょっとまってそんな急に」
「我々として、出来る限り最大限の事はさせて頂きますのでご心配なく。ただ、転生後は我々との接触は基本なくなりますので自給自足という事でよろしくお願いします」
サクサクと脳内を読まれて、転生出来ることになった彼は混乱とともにワクワクもしていた。
「で、その頂ける能力ってなんですか」
「ああ、それはですねーーー」
神々の力の1部を貰うことが出来る権利らしい。
・武神の力「剣術スキル」
・英智の神の力「魔術スキル」
・財運神の力「大富豪スキル」
・創造神の力「錬金術スキル」
etc.
割と選り取りみどりだった。
「うーん」
そして彼は優柔不断だった。
そこで神はまた脳内を覗き見る。
「あー、なるほどなるほどこれは……」
いつまでも決められない彼に神が一言。
「おそらく、私が見ていた限りだと剣術とか極めても割と短い寿命だったり、権力闘争に巻き込まれたりする事が多いようです。生前のお仕事が機械の設計ということなら錬金術が1番いいと思いますよ」
ならそれで。
彼はあっさり決めてしまった。
「では、ボーナスとして肉体の劣化防止と防御力も上げときましょう。とりあえず病気には掛からないようにしておきますね」
なんちゅうご都合主義。
いやいや、これが神業。
そんなこんなで彼は転生していった。




