ロザリオを握りしめ
いくら長く寝ていても、たった数分の睡眠でも必ず見る夢。
その夢の中で、私は・・・シスターでした。
毎朝教会の掃除や孤児の世話をしたり、時に歌を歌ったり楽器を奏でたり。
神を信じ、神への祈りを捧げるのも日課。
流れも特にこれといって変わらず、毎日その平和な時間を過ごしてた。
真希に似た牧師様が居て、私は彼と一緒にこの教会を支えてた。
そう、現世と同じように・・・二人で支えあって生きてた。
夢の中の私は生まれてすぐに真希に似た人と共に孤児となりました。
そんな孤独な私たちに、神は御手を差し出してくださったんです。
いつ死んでもおかしくないという状況の中、幸運にも私たちはシスターに拾われました。
そうしてこの教会にやってきたのです。
幼い頃はよく遊び、そしてシスターや牧師様に文字や歌などを教えていただきました。
お二人とも心の真っ白な素敵な方で、私たちのお父さんとお母さんのような存在です。決して豪華な暮らしではありませんでしたが、幸せな日々でした。
物心がついてくると、私達は勉学に励むようになりました。私もお二人のように心優しく素敵な大人になりたいと思ったからです。
徐々に知識をつけ、お二人に認められようとしていたとき・・・牧師様とシスターさんが病気を患っている事を知りました。その時代に流行していた難病で、お二人に薬を用意しようと真希のような人と力を合わせましたが救えず、お二人はなくなりました。
お二人の形見として、私はロザリオを受け取りました。
そのことが忘れられず、そして今まで育ってきたこの教会を廃れさせるのが嫌で、私達で管理を行っていくことに決めました。そうすることで少しでもお二人への恩返しになるかと思ったんです。また笑顔と笑い声の溢れる教会にしていけば、お二人もきっと笑顔になってくれるって・・・。
それからは私達と同じ境遇の迷える子供たちを預かり、立派な大人へと育てていくことに力を入れました。そのおかげで教会にはいつも笑顔があふれていました。
そんな平和な日々を過ごしていたある日、教会に凶悪な人物がやってきました。
どんな人だったのかは覚えていませんが、こちらにくるなり武器を向け脅してきました。
金目の物を要求してきましたが、用意することが出来ず・・・代わりとして子供たちを差し出せと言うのです。勿論断りました。だって、そんな人達の元へこの子達を渡したらどうなるでしょう。奴隷にさせられるのが目に見えています。そんなのは絶対に嫌でした。
そしてその日、私達は戦う事を覚えたんです。
本来なら、相手を傷つけたりするのは良くない事です。私達の職業であれば猶更でしょう。
説得し争う気持ちを無くさせることが仕事だったハズなのです。勿論やってはみました。でも上手くいかず、子供たちを守る為に私達は聖書より剣を取ったんです。
私達はボロボロになりながらも悪い人を撃退することが出来ました。
でも何故かいい事をした気分にはならず、罪悪感だけが募りました。
それが、今の時点までに見た夢の内容です。
後で真希に聞いてみると、私とは違う目線・・・おそらく牧師様の視点から同じような流れの夢を見ていたそうです。
不思議な事もあるものだと思っていましたが、まさか皆さんも私達と同じように夢を見ていたなんて。
しかもあの夢が、過去に実際に起きていた出来事で構成されているなんて。そんな簡単には信じられませんでした。でも今思えば、こうして私が手に握っているロザリオそのものが、証拠になるのではないでしょうか。
「ロザリオは私がずっと小さな頃から肌身離さず持っているものだけど、何で持っているのかを知らなくて・・・。多分、私達が教会に住んでいた事と関係があると思うけれど・・・。」
「それもまた前世に関係ありって事か。」
「じゃあ何で僕はそういったものを持ってないんだろ?」
「現世に引き継ぐ事と引き継がない事があるんでしょうね。」
私の能力が浄化なのも、夢に出てきたシスターさんや牧師様に影響されての事だと思えば納得です。
「夢の中に、真希以外の奴に似た人は出てこなかったのか?」
静さんにそう言われて、ぼやけた記憶を遡ってみる。
他の人に似た・・・?そういえばいたような。
「・・・静さんに似た人が。」
「だと思ったぜ。やっぱ繋がってんのか。」
繋がっているというのは、どういう事なんだろう。
「俺の夢には、お前ら二人によく似た奴とかが出てきてたんだよ。だとすると、俺らは前世でも会ってたってことになるのか。」
「それは初耳ね。真希くんと政宗ちゃんは兄妹だから分かるけど、この学校に入ってなければ赤の他人だったハズの人と前世で繋がってるなんて。」
「一つ言っておくと、俺とあの二人はこの学校で初めましてって訳じゃないぜ。おっと、話がズレたな。俺の夢には璢娘も出てきた。さっきの反応はきっとそのせいだ。」
「私も?じゃあ、まだ見ていない夢の記憶の中に・・・もしかして?」
あの夢は過去に実際に起きていた出来事で、私達は過去・・・前世でも会っていて、今もこうして出会って同じ時間を過ごしている。
そんな偶然・・・奇跡としか言いようがない。この学校に秘密があるか、前世で知り合っている同士惹かれあう性質を持っていたか・・・今考えられるのはそれくらい。
真希はどう考えてるんだろう。どう捉えたんだろう。後でちょっと聞いてみよう。
「夢は見た方がいいのかな?それとも見ない方がいいのかな?」
ま、真希?
「それはどういう事だ?」
「夢が警告の一種だとしたら・・・過去に起きた過ちをまた犯さないようにって事なら、しっかりと夢で情報を得ておくべきかなって思う。」
「じゃあ見ない方がいいっていうのは?」
「夢を見ている事で、僕たちが出会った・・・出会ってしまったとしたら。」
その言い方だと、出会わない方がよかったって聞こえる。
どういう事なのか分からないけれど、何か嫌な感じがする。
「過去と同じレールを歩んでしまってるのかもしれない。」
誰も、何も言わない。言えない。
どっちが正しいのか・・・その選択肢の中に答えがあるのかすらわからない中で、誰も答えを出せないのは仕方のない事。みんなあらゆる情報をおさらいして、現状での回答を探しているみたいだった。
私も私で考えてみる。
過去と同じレール。
前世の私も、真希によく似た兄がいた。教会に住んでいる。母親も父親も、顔がわからない。
二人で支えあって生きてきた。戦う事も学んでいる・・・。
確かに、過去と似たような点は多いように感じる。
夢で得た情報だけではここまでしか考えられないけど、もしこの先に何か悪い出来事が夢に出てきたら。
そうしたら、後者なのかもしれないと思ってしまうと思う。
「真希くん。」
「まぁ、単なる仮定っていうか、推測だけどね?」
「後者なら私はここに居ないと思うわ。だって夢の中で私は・・・でも待った。それだと私は・・・このままじゃ。」
「焦るな。確かに似た点が多いのは事実だ。だけどよ、俺は夢の中のアイツみたいな化け物じゃない。だから違う。・・・そうだと信じよう。」
「・・・うん。」
重い空気から逃れるように、希望という名の逃げ道を作る。
そうでもしないと耐えられない何かがあるってこと・・・だと思う。
平和な夢を見ていた私には分からない何かがきっと、二人にはある。
その闇も、私の能力で浄化出来たりしたらいいのにな。
キーンコーンカーンコーン・・・。
授業の終わりを告げる鐘が、私達を引きもどした。
今日の授業はこれで終わり。後は課題を提出するだけ。
慌ててパソコンをシャットダウンして、資料を抱えてパソコンルームを出ようとする。
真希は考え事に集中してしまっていたようで、鐘が鳴っても固まったまま。もう戻らないとと声をかけると私と同じように支度をし始める。早くしないと帰りのLHRに遅れちゃうのに。
「この話は、半分無かったことにしよう。」
「そうだな。特に後半は。」
「そうね。うん、私は何も聞かなかったわ~。」
三人はそんなやりとりをして、それぞれの支度に戻っていった。
夢に秘密があるのなら、怖くても見るべきだ。
私は逃げない。例え夢の結末がどんなものだったとしても。
前回の予告通り、政宗視点でお送りしました。夢と前世がちょっとずつ明らかになっていくかな?という所です。
【次回予告】
授業が終わり、下校するお話です。
視点はまだ未定ヾ(・ω・;)
主人公が主人公をあまりしてないので月華視点に出来たら…とは思ってます。
ではまた!




