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blanket  作者: 璢音
再び戦いへ
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偶然

不憫な子って、いるよね。

日がすっかり落ち一旦探索をやめて寮へと戻る一人の影。その影の主は亜里亞だった。午後に氷椏と幟杏を探しにいったきり誰からも連絡もなく、そして誰にも会わずに夕方になってしまったのだ。


多分、二人は見つかっている。そう思ってはいるものの不安がつきまとった。

そのせいか寮へと戻る足取りは重い。


「大丈夫かしら…」


皆の姉的な存在故に見守りに徹し、影が薄くなりがちな亜里亞はこの状況で溜息をつくほかなかった。


学校から少し離れたところにある生徒専用の寮が視界に入ったあたりで亜里亞は思い切った行動をとった。


「氷椏ちゃんに会いにいこう。」


そうすれば結果が分かる。

寮にいれば安心して自室へ戻ることが出来る。


自身でも名案だと頷きながら、彼女は氷椏のいる号室へとかけていった。


コンコン。

ドアを二回ノックする。……返答がない。気がついてないのだろうか。

もう一度ノックをする。


コンコン。

しかしやはり反応がない。出かけているのだろうか。


氷椏の事だ、もしかして買い物にでも行っているのでは?ならば、次は幟杏の所へ行ってみよう。


幟杏の部屋まで行き、同じようにしてみた。しかし全く反応がない。

亜里亞は少し怖くなってドアノブを回してみた。……あいていない。ガチャガチャと虚しく鳴っただけだった。


こんな時はどうすればいいのだろう。途方にくれていたその時、後ろから声を掛けられた。


「亜里亞さん?どうしたんですか?」


声の主は月華だった。亜里亞は何故かほっとした気分になる。

月華に駆け寄り、気になっていた事をすっかり話してしまうと気が少し楽になった。後は返答次第だ。


「氷椏さんと幟杏ちゃんなら見つかりましたよ。連絡をしていなかったんですね。気がつかなくてごめんなさい。」

「いえ、いいの。良かった、ちゃんと合流出来ていたのね。」


その後暫しの間月華と話を楽しむ。

お互いの武器のこと、家族のこと、友人のこと……中でも亜里亞が気になったのは、異性の話だった。


「月華ちゃんって緋威翔さんのこと、好きなのよね?」


笑顔で問いかけると月華は少し不安そうにはにかむ。その表情が女の子らしくて守ってあげたくなった。これなら心配はなさそうだわ、と一度頷くと月華は不思議そうに首を傾げる。


自分も運命の人に出会える日がくるんだろうか。それより、自分はその人を一番に想う事は出来るのだろうか。


私には大切な(まりあ)(まこと)がいる。その二人よりも更に深く、その人を愛す事が出来るのだろうか。そう考えてみるとどうにも自分には相手が出来そうにない。


亜里亞は肩を落とした。


「あの、亜里亞さん。」

「何?月華ちゃん。」

「学校にいる間、翼の生えた女の人とかって見ませんでしたか?」


急に話しかけられ、更に話題も変わり何事かと思えば。亜里亞はふと先程までの事を思い出そうとする。


氷椏や幟杏を見つけようと必死に校内を彷徨っていた時、そういえばそんなような影を見たような。


いやでもあれは多分聖夜だ。


あの影を聖夜だと仮定すると、その他に思い当たるような事はない。


一応聖夜だったと思う影についても月華に話す。月華は頷きながら続きを聞いている。


「私が見たのは街方面に飛んで行ったその影だけね。翼の生えた人…は。」

「そうですか…。ありがとうございました!」


勢いよくお辞儀をする月華を途中でとめ、今度は質問する側に変わる。


「月華ちゃんは何故ここへ?」


月華の部屋はこの近くではないはずだ。なら彼女はどうしてここに来たのだろう。


「氷椏さんに話を聞こうかなって思ったら留守だったので、幟杏ちゃんと一緒にいるのかなぁと。」


発端は違えど考え方は同じ。

なんだか可笑しくなってしまう。

そして疑問が晴れたが、今度はまた別の疑問が浮上してしまった。


あの二人はどこへ?


「月華ちゃん、二人の携帯には連絡してみた?」


二人の武器は携帯なのだから、高確率でどちらかと繋がるはず。

月華はそっか!と言いながら、自身の携帯を取り出し、即座に電話をかける。


しかし少しの間コールした後に返ってきたのは、留守番サービスを告げる女性の声だけだったようだ。

月華が一度電話を切り、話しかけてくる。


「もしかしたら、電車に乗っているのかもしれないですね。」


結局その時は連絡がとれず、月華はまた明日氷椏に聞くことにしたようだ。


亜里亞も外が更に暗くなってきたからと月華と別れ自室へ戻る。


不安な事が立て続けに起こり、皆は次に何が起きるのかと恐怖に怯えていないだろうか。ハーブティーの準備をしつつ窓の外を眺める。


恐怖に怯えているのは自分自身だという事に亜里亞は気がついていない。

大切な妹弟が怪我でもしてしまったら……そう考えてしまったのだ。

そんな気持ちを誤魔化すかのように、亜里亞はハーブティーの入ったカップを傾けるのだった。

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