消えない不安
学校に集まった国内組のそれぞれの作業のさなか、その出来事は起こった。
【月華side】
麒麟さんとの戦闘を乗り切った私達は、緋威翔さんの指示により学校へ帰還した。
ミッションカウンターへ急ぐ途中、階段辺りで凄まじい音が聞こえたので何事かと駆けつける。
緋威翔さんの嫌な予感が的中したのではないかと心配になりつつ向かうと、階段近くで戦闘が起こっていた。
月華「な、何これ……!!」
政宗「あっ、月華さん…!今学校が大変な事になってるの…!」
政宗さんがロザリオを巨大化し、剣のように使って戦っていたのは、茶色や灰色の人間。どうやら理性はないみたいだけど、凄い不気味。
緋威翔「こ、これは……」
ノエル「とりあえずやっつけるわね!キシャーッ、不気味なのよあんたらっ!」
ノエルさんが茶色の人間に迫り、強烈な引っ掻きをお見舞いした。しかし、爪痕は残ったものの、人型の何かは全く反応しなかった。痛覚もないらしい。そして爪痕は服にも残っていた。
ノエルさんは驚愕し、後ずさる。そして自身の爪を見つめた。
ノエル「これ、土だわ……!粘土よ!これは粘土で作られた人間だわ!!」
緋威翔「カードも全く効きません!」
緋威翔さんの投げたカードは、粘土で作られた人間に刺さったままになっている。これでは自身の武器が減っていく一方だ。
真希「これ、さっき急に学校に現れたんだよ!全然意味がわかんないの。こっちの攻撃は効かないし何か何処かに向かってるみたいで。」
みれば相手にされていない残りの粘土達は階段を登り上へ向かっていく。私はその目的地が気になり粘土の後ろについていく。
……粘土、階段をのぼるのがはやい…!
当然粘土には疲れというものが存在せず、階段も難なく上がって行くのである。
逆に私は運動不足がたたり、すぐにダウンしてしまった。
下からはどんどん粘土が上がってきている。
一体何体いるのだろう。それに、どうやったら倒せるの?
【氷椏side】
ミッションカウンターの掃除も終わり、やっと休憩に入ると何やら下が騒がしい。先程下の階に行った真希さん、亜里亞さん達も帰りが遅いし、下で何にかが起こっているのだろうか?
幟杏に一言告げてからミッションカウンターを出ると、ドアを開けた瞬間いきなり茶色の人間が現れた。
な、なにこれ。
とりあえずドアは閉めた。
……とそこまでは異常なまで冷静だったが、ドアを閉めた辺りから汗が止まらない。
えっと、あれは何?何しにここに来たの?
と、ともかく妹に知らせなきゃ……!
の前にドア!ドアを固く塞がなきゃ!!
そこかしこにある物をドアの前にせわしなく詰めて行く。その騒がしさで準備室にいた妹もこちらへやってきた。
幟杏「何してんの?」
氷椏「茶色の人間が進撃してきたの!!」
焦り過ぎて言葉を正しく使えない。
幟杏「進撃?漫画の読み過ぎだよ氷椏は。あのさ、お手洗いいきたいからそこどいて……って何これ!何で積み上げてんの!?バカみたい!これじゃ出れないじゃん!」
氷椏「だっ、だから、灰色とか茶色のが来てるの!目の前に!!」
幟杏「はぁ!?」
妹は私が寝ぼけてるのかと思っているらしく相手にしてくれなかった。そして、私がずっと叫んでいるにも関わらず、ドア前に積み上げた家具などをどかし、ドアを開けてしまった。
それと同時に茶色と灰色の人間が雪崩れ込む。
幟杏「ぎゃああああっ何これぇええ嫌ぁあああっ!!?氷椏!氷椏武器!!はやくっ」
妹に急かされ、私と共同の武器である携帯を手渡す。しかし渡した直後に粘土によって姉妹は引き離されてしまった。武器を持つ妹はともかく、私は対抗する術がない。
だが粘土達は特に攻撃などはしてこなかった。ただここに詰めかけてきただけなのかと少し安心していた矢先、男性の声が聞こえた。
?「そこのメガネ女子をひっ捉えとけ。そっちの生意気そうな奴は適当にあしらって気絶させてから持っていくぞ。煩いからな」
………理解不能。
えっと、私達は一体どうなるの……?
【亜里亞side】
先生の指示で新たな書類を処理するべくパソコン室にいた私と真里亜と真琴はそれぞれのパソコンで作業をしていた。
真琴「ねぇ、真里亜?」
真里亜「何…?真琴。」
真琴「何か、騒がしくない?それに大量の足音がする」
亜里亞「そんなの聞こえる?」
真里亜「聞こえないけど……胸騒ぎがする。」
不安がる二人を見て放っておけず、二人に作業をさせたまま一人で周りを見て行く。
特にパソコン室付近で異常な点はないけれど……やはり、空耳?
パソコン室付近から少し離れ、一階に降りる途中、どどどどどという凄まじい音を聞いた。
……空耳なんかじゃなかったんだ。
真琴の耳の良さに感心しつつ音のする方へ向かうと、茶色の物体と戦う皆の姿があった。しかし武器は使っていないようで、柔道の技などをかけ、戦っているようだ。
この異常な光景を目の当たりにした私は、ノエルに現状を聞く。
亜里亞「これはどういう状況?」
ノエル「粘土で出来た人間が攻めて来たみたいなんだけど、武器で戦っても無駄みたいで……今どうやったら倒せるのか模索中よ。」
亜里亞「それで?倒す方法は見つかったの?それと、この粘土人間はどこへ向かってるの?」
ノエル「まだ分からないわ。行方については今月華が粘土人間についていってるわ。」
亜里亞「そうなの。じゃあ私も手伝う」
粘土人間というからには粘土でできた人間なのだろう。
だとすれば、粘土の弱点即ち粘土人間の弱点になるかもしれない。粘土といえば……。
私はある物を持ってくるべくその場を後にした。
途中掃除用具の入ったロッカーからバケツを拝借し、水道へ向かう。
蛇口をひねりバケツをいっぱいにすると、なるべく急ぎ足で粘土人間の元へ戻った。
ノエル「水よねそれ。」
亜里亞「これを掛ければ、粘土は柔らかくなって形を崩すと思うの!」
緋威翔「しかし大量の水が必要になりますね……」
真希「バケツリレーするしかないよ!」
政宗「ホースがあればその方がはやい…」
緋威翔「どちらにせよ、後々掃除が必要ですね。」
【氷椏side】
幟杏が携帯を使い防壁を作り粘土人間を退けている事に対し、私は何も出来ず逃げ回っていた。幟杏に助けてと言っても助けてくれはしないだろう。ならば、私が身代わりになって幟杏を守る方がいい。
何としても二人とも助からないのは避けないといけない。
?「さっさと捕まえろよクズ共が。」
粘土人間に罵声を浴びせながら、入口付近で腕を組む男性と、さっきから黙ったままの女性が様子を伺っている。
粘土人間は、その男性の罵声を聞い瞬間、小さく身体を震わせた。合図のようなものなのか……?
氷椏「!?」
とうとう粘土人間に服を掴まれてしまった。服を掴まれバランスを崩した私は先程掃除の際に使ったバケツに入っていた水をひっくり返す。あぁ、また後で掃除し直しだ。
すると、私の手を掴んでいた粘土人間は、形を崩しただの泥と化した。水が弱点のようだ。
私はすかさず蛇口の方へ向かう。
?「チッ、バレたか。おいゴミ共よく聞け!そいつらを捕獲しなかったらただじゃおかないからな!!」
?2「どちらにせよ、ただじゃ済まないよー。水に濡れて死ぬか、主に壊されて死ぬか。助かりたいなら水に濡れないようにしてその子を捕まえてくる事だねー。ふぁーいと。じゃね。」
男性と女性はそう言い残すと姿を消してしまった。あの二人もきっと武器所持者だ。
何とか蛇口までたどり着き、手で水をすくっては掛けながら、私は他の人の無事を願った。
【ケインside】
カインを背負い辿り着いた学校は妙に騒がしく、その理由も奇妙なものだった。
話を聞くに、こうらしい。
真希達が必要なものを取りに行っている途中、この不気味な泥人形と遭遇。
あまりに不気味だったので戦闘を開始したが、こいつには攻撃が効かない。
切っても無駄。叩いても無駄。とにかく力を消耗するのは損なので、様子見しながら軽く戦っていたところに月華の班が帰ってきた。しかし状況は変わらず。
月華が階段を登って行った泥人形のあとを追ったが、そのまま帰ってこない。
そしてパソコン室から亜里亞が偵察の後加わった。そしてこの泥人形は水が弱点だと判明。
それで皆バケツリレーやらホースで放水やらしているらしい。
こちらの状況を伝えると、政宗と真希が対応してくれることになった。
真希が保健室へ花菜美を運び、俺がカインを運ぶ。
保健室着きベッドにカインを寝かせた後のことは二人へ任せ、俺は泥人形に水を掛ける作業を手伝うことにした。
泥人形VS俺たちの戦いはこちらが完全有利になっている。
水を掛けると泥人形は形を崩し、ただの泥と化していく。それをジャージに着替えた緋威翔と亜里亞が処理していっていた。残るのはほぼ水だけだ。廊下はホースから放水された水で濡れ巨大な水たまりのようになった。俺達も靴が濡れてしまうので、今は裸足で作業している。
ケイン「しっかしまさか校舎内、しかも廊下を水浸しにするとはなぁ」
緋威翔「異例の出来事ですね」
ノエル「まず、なんで粘土人間がここへきたのかわからないわ。とりあえず一階にいた粘土人間は駆除できたけど、上に行った粘土人間たちはどうなったのかしら」
【月華side】
下からのぼってくる粘土人間達がいなくなった頃、私はまだ階段付近にいた。
のぼろうにも下から大量の粘土人間が来るために、道を塞がれのぼれず。かといっておりれず。
そんな状況からやっと抜け出し、階段をのぼる。
やっとのことでのぼりきり廊下を両側見ていくと、一点に粘土人間が集まっているのが分かった。
しかもよくみれば、床に足跡がついている。
どうやらその一点……ミッションカウンターのある第七教室とは逆側の廊下には一切行っていないらしい。
第七教室といえば、氷椏ちゃんと幟杏ちゃんがいたはずだ。二人が危ない!
あの二人は一つの武器を共有しているので、片方しか武器を発動できない。
……となれば、一人は丸腰の状態で粘土人間と対峙することになる。
もっとはやくのぼっていればと後悔しながら先を急ぐ。
第七教室の前は、やはり粘土人間が沢山おり入口につっかえていた。
ただ、私の横を通過して行った量を考えると減っている。
二人は弱点をしっている……?
私は粘土人間を一人一人押してどけながら道を作り、入口へ。
その瞬間、冷たい水しぶきが顔を含み自分を襲う。
「バシャアァァン」
月華「ひやぁっ!?」
続いて頭からつま先まで水を被り、全身びしょ濡れになった私はそのまま呆然と立ち尽くした。
水をかぶったからか風が吹く度に背中を悪寒が走り、ついくしゃみが出てしまう。
月華「くしゅんっ」
氷椏「!?」
幟杏「粘土じゃない、人がいる!もー、氷椏ってば誰かに水ぶっかけちゃったみたいだよー!?」
この声は幟杏ちゃんだ。良かった無事で……!
氷椏「ごっ、ごめんね月華ちゃん!まさか粘土人間の中に混じってるとは思わなくて……」
粘土人間を一通り退治した後に、ミッションカウンターの近くにあるソファーに腰掛け、ふわふわのタオルとあったかいココアを飲み、一休み。
氷椏ちゃんはこの第七教室で粘土人間と戦い、掃除用のバケツをひっくり返したことで弱点をみつけそのあとは手で水を掛け数を減らし、徐々にコップやバケツなどを利用して数多くの粘土人間を倒したとか。ただ、その途中に私が粘土人間に混ざってたから、運悪く水をかぶってしまったらしく。
でも本人に悪気はないし、粘土人間も倒せたことだし、そこまで謝ってもらわなくても大丈夫なんだけれど、氷椏ちゃん的には土下座しても足りないらしくて、まだ謝ってる。
幟杏ちゃんは隣でのーんびりしてる中、氷椏ちゃんは必死に第七教室の掃除をしていて、私が手伝うといっても水かけたことによる罪悪感とかなんとかで一人でやるからと、手伝わせてくれない。
……別にそこまで気にしてないんだけどな。
それに、この部屋を一人で掃除は大変だし……。
とりあえず簡単に乾いたら手伝おうと思う。
【政宗side】
ケインさんにカインさんと花菜美さんの世話を任され、私はカインさんの担当を、真希は花菜美さんの対応をしている。私はカインさんが目覚めるまで声をかけ続ける事が仕事。真希は花菜美さんの足に刺さった棘を抜く作業。
真希「麻酔したし大丈夫だと思うけど、痛かったらいってねー。」
花菜美「うん……」
ピンセットで棘をつまみ、そのままゆっくり引き抜く。
少量の血は流れたもののすぐに対応があったおかげかあまり深くはくいこんでおらず、先をピンセットでつまむことがでたため、この作業は数分で終わった。
棘が刺さっていた部分を消毒し、ガーゼを当てて完了。
花菜美「誰だか知らないけど、ありがと」
真希「どういたしまして。」
花菜美「ところで、あの赤い帽子してる人何て言うの?」
真希「あ、緋威翔さんのこと?」
花菜美「ふぅーん。緋威翔、サンかー……」
政宗「カインさん、カインさん。」
花菜美「カインとかいうそこに横たわってる人。なんか私と同じ感じがしたんだけど」
真希「そうなの?」
何でかはわからないけど、花菜美さんはそう言う。
私が見る限り、似たようなところはないように思えるけれど……。
カイン「………ん……。」
政宗「!!!」
真希「あっ、カインが起きたー!良かったぁ」
カイン「ここは……保健室ですか?」
政宗「そうです……気を失っているところをケインさんが運んできてくれました」
カイン「そうですか……後で兄さんにお礼を言わなくては。」
……本当は、こんな冷静に話している自分に驚いてた。
さっきまで心配で心配で死んでしまいそうだったのに、こうして気を取り戻した途端に安堵の息で生き返るの。……。
良かった……本当に。
【月華side】
こうしてなんとか粘土人間を撃退し、掃除を終えた私たちは今回のことで学校の警備の薄さを見直すべく、会議を開くことになった。海外にいるグループにはまだ話が通らないとは思うけれど、後々伝えればいい。とりあえず、国内組ぐらいに人数がいればこの学校の守備も整う。
話の論点には今日の粘土人間の件もあったけれど詳しいことは誰も知らず、分かったことといえば氷椏さんの証言による、黒幕の存在。今回襲撃した目的は武器所持者の誘拐だったという。
しかしその犯人は女性と男性一人ずつということまでしか分からず、話は終わった。
次に、校舎内の守備の話が持ち上がった。
ミッションカウンターのあるこの校舎が何者かによって襲撃されると非常に厄介だ。
何故なら、被害者の声であるデータが損傷する恐れがあるから。
今回は水により何枚かのミッションペーパーが濡れてしまったけれど、こちらは教員のパソコンデータに入っていたために復元ができた。今回は運が良かったからいいものの、次回にはどんな被害がでるかわからない。
そこで、ミッションが終わるごとに校舎警備班として一班を学校に在中させる案が上がった。
これなら他の班が出払っていても、即座に対応できる。
もしも校舎で緊急の出来事が起こった際には連絡を取り合い、なるべく多くの戦力を送れるようにとの話でまとまった。そのために各自連絡先を知っておく必要がある。
ただ、紫綺さんと千佳ちゃんのような事情があり教えられない場合を考えると全員が全員電話番号やメールアドレスを知るのは困難かもしれない。
話し合いにより決まったことは以上。その後は各自で行動を行った。
私は花菜美さんの話を聞くために、保健室へ向かうことにする。
粘土人間。泥人形。呼び方は様々だけど、意味は同じ。
とりあえず不気味ですよねー。だって粘土質感もった人間が無言で迫ってくる訳でしょう?私ならとりあえず逃げますわ。
さて次回は気を取り直して花菜美編の続きです。
果たして花菜美はどんな決断をするのか。
武器所持者学校に入学?
それとも昇華?
それとも………。
では次回もご愛読宜しくお願いします( ´ ▽ ` )ノ




