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blanket  作者: 璢音
再び戦いへ
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薔薇に囲まれた少年は

さて今回は題名通りの方の過去を。すなわち心の御話をひとつ。


美しき薔薇は罪の証。

………彼は今、思いでの中に。

暗闇の中見えたのは、所謂走馬灯のようなもの。

スクリーンにそって流れる記憶は途切れ途切れしかありませんでした。


一体何故でしょう。答えは簡単です。忘れてしまったのです。


その中で、一つも欠ける事なく残った記憶は「少女」のものでした。

思えば私の武器が薔薇になったのも、この少女がいたからです。


そう、あの時の私は「少女」に恋をしていました。

淡い初恋でした。


二人は大の仲良しでまるで兄妹のように過ごしていました。

少女は当時おままごとが大好きで、よく一緒に遊んでいたものです。

少女はお母さん役。私はお父さん役。どこの子供でもやるような普通のおままごと。

しかし私たちにはそれとは違う何かがありました。


それはなんだったのでしょう?




答えは…………。



二人はマセており、その時から家事などの一通りの事を自分たちだけで出来たのです。

勿論、親の加護の元ですが小さな家で二人で住んでいました。炊事洗濯その他等々を二人で分担しながら生活していたのです。私たちのおままごとは「ごっこ」ではなかったのです。


小学生になる直前のこと。

私は散歩をしていました。森の中でリラックスしようと考えたのです。

運良く近くには滝があるので、マイナスイオンに当たり涼しもうと考えたのです。


因みに、あの異様な生活が始まったのは、二人が小学生の時でした。



反抗期というもので家に嫌気がさした私と少女は、二人で家を抜け出しよく冒険をしていました。

思えばこの時から始まっていたのかもしれません。

冒険の際は二人で知識を持ち寄り、自然の中で果物や魚をとりお昼ご飯を作りました。

この時から、機器を使わないで火を起こすことが出来ました。

火の怖さも弱点も知っていました。勿論、火がどうしてついたままになるのかという理屈や論理も理解していました。私達は、非凡だったのです。


普通の友達は出来ません。兄や妹のように他人と笑顔で接することが出来なかったのです。

でも少女とだけはこうして心を許すことが出来ました。心を開くことも出来ました。

少女もまた、同じ境遇だったので、二人で過ごすようになったのです。


家を朝に出て、門限である夕方に家に帰ると決まってお義父さんはイライラしていました。

私が可愛げがないと怒っているようでした。そして、私が見知らぬ少女と仲良くしているのが気に食わなかったようなのです。私はそんなことも知らず一人部屋で新たな知識を蓄えるのでした。


ある日、女性は花が好きだとセイラから聞きました。

丁度食用の花もあるし、飾りにもなると聞かされた私は早速新たな知識を蓄えました。


何科、何植物。ハーブ、花言葉etc


少女に会うたびにそれを話して聞かせると大変喜んでくれました。

私はそれは嬉しくて重たい図鑑を買い、また知識を溜めました。


ある日。

少女が大変お金持ちの家の娘である事が発覚しました。

お義父さんはそれならばと私と少女が一緒に遊ぶのを許可してくれるようになりました。

私と少女はさらに一緒に過ごす時間が増えました。

お義父さんが許可してくれた日には、少女を私達の家に連れてきてもいいという事もありました。

少女は兄や妹とも仲良くなり、次第に少女は家族のような存在になっていきました。



ました、ました。それだけの話。でも私にとっては重要な、そんな話。


ある日。少女が薔薇を好きだと言ったので、私は薔薇を育て始めました。

しかし思いのほか育てるのは難しく、すぐに病気にさせてしまったり虫に侵食されてしまったりしました。


それと同時に。



大好きな少女も薔薇と同じ運命を辿っていきました。


あるときは病気になり入院し、またある時は男性に……。

後々聞いた話では、彼女は特別な能力を持った少女で、その能力は“誘惑”。

それ故にその少女は高額らしく家も栄えた。


しかし私と同居し始め、その能力を使わなくなったのでお家は衰退。

入院を偽りその能力で稼ぎ、男性に囲まれ。


それをもしあの事件の前に聞いてしまっていたら。もしかしたら私は……。





その日は兎に角赤と青でした。

病気が治り、私達の家へ帰ってくるという事だったので、お祝いにいつもより豪華な夕飯を作るため買い出しに向かうと、信号の前で大勢の人々が顔を真っ青にしてそこに立っていました。

信号はその時青で、何故皆は渡らないのだろうかと不思議に思って横断歩道を覗くと熱を帯びていそうなコンクリートは転々と赤でした。


しかし周りの車はいつものように止まり、信号待ちをしています。どうやら人が轢かれた訳ではないようです。


では何故こんなにも皆顔が青いのか?




それは横断歩道に立つ男女が示していました。刃物を持った男性。所々切られた女性。しかもその女性はあの少女……!

今やっと意味が分かりました。皆ナイフを怖がり近寄れないのです。


少女は叫ぶ様子もなく、ただただ地面を見ています。そして男性は喚き散らしながら少女の皮膚に傷をつけていっているのです。


私はいてもたってもいられなくなり、横断歩道へ飛び出しました。


チカチカと点滅する信号機はまるで危険を察知しているかのように、やがて赤になりました。


私は丸腰のままその男性に突っ込みました。勿論、男性が気づかないはずはなく簡単に吹っ飛ばされてしまいました。


お願いです、誰か、誰か一人でもいいのです。助けを呼んでください。今私が時間稼ぎをしている内に。


あぁ神様お願いです、彼女を、少女を助けてくださいーーー!!


男性改め犯人を興奮させないよう、誰かが気付かれないまま警察に連絡してくれればそれで一件落着のはず。私はそれまでの囮になる……!


何度蹴られようが踏まれようが、それで彼女が助かるのなら。例えこの身が無くなるとしても、私は彼と戦います。そう、全ては少女の為ーーたった一人の友人であり、共に過ごした家族であり。いずれ本当の家族になれると……そう信じている人の……!


最初はただ偽善面して突進してきたと思っていた犯人も、次第に状況を理解したようで、私に対する反応は段々変わっていきました。


最初は蹴る、踏む、突き飛ばすの三点でしたが、少女の反応で私の存在理由を知った途端、全てを理解したのか少女を地面に転がしたまま、私にナイフを向けました。……と同時に私も理解したのです。彼は少女に惚れていると。独占欲に駆られこの行為に至ったのだと。


だから私は目の敵にされ、今こうして。





ナイフが振り上げられる瞬間、振り下ろされる瞬間も長く、スローモーションのように感じられました。


私はどうやら彼女を守って消えるようです。

せめて少女に……。


あれから誰も助けは来ず、信号待ちをしていた人々は固唾を飲んで見守り、信号は赤と青を繰り返す。誰も警察を呼ばなかった。そして自ら助けようともしなかった。ただただ見つめているだけ。恐怖で足が動かないのかもしれない。犯人から襲われるのが怖くて何も出来ないのかもしれない。でも、もしかしたら。


このスリルある光景を、彼らは楽しんでいるのかもしれない。



振り下ろされる刃をかわそうと必死になった私は、なんとか心臓に刃が刺さるコトを逃れました。しかしその代わり、背中に傷を残してしまいました。


にじみ出る赤い液体が、私の洋服を湿らせます。妙に服が肌にくっつき、気分が悪くなりますがそんな事を気にしている暇もなく、第二の攻撃が。二度めの攻撃も咄嗟の後退でかわし、運が私に味方し始めた頃、それは起こりました。


突然の、甘い香り。

脳をかき乱すようなその香りはまさに麻薬のようで。


私は急に眩暈を起こし、道路に突っ伏しました。かろうじて見えたのは、その場にいた男性達が一点に引き寄せられていく姿でした。



これは……??


意識が薄れていく中これではいけないと自身に噛みつき、痛みにより意識を取り戻した私は、手で鼻を抑えながら男性が集まるその一点に向かいました。



その一点はまさに地獄といえました。

たった一人の華奢な少女に群がる男性は、花に集まる虫のようにも、また食べ物に群がるハイエナのようにも見え、その直後群がる男性もろとも、少女を求めてやってきたトラックの運転手に轢かれてしまいました。


私は直前に少女に手を伸ばしたのですが届かずやむなく後退し、少女の無事を祈りました。


少女はどうやら周りに群がっていた男性のお陰で助かったようで、のちに赤く染まった塊の中から姿を現しました。しかしまた、蜘蛛の糸にすがる罪人のように、男性達が少女を引き込んでいくのです。


地獄絵図。まさにその言葉通りの現状。

絶望に苛まれた私はその場に膝を付け叫びました。

助けようにも、足が動かないのです。何も、今少女に何かしてあげることが出来ないのです。




……私の叫びは少女に引き寄せられた男性ではなく、それをただ恐怖の目で見つめていた女性の耳にしか入らなかったでしょう。




やがて男性が正気を取り戻した時にはもう、少女は亡くなっていました。

否、少女が亡くなった事で効果が切れたのでしょう。男性はこの悲惨な状況を理解出来ず、また女性はこの中の誰を咎めていいのか分からずで、結局警察沙汰になろうとも、人々を裁くことは出来ませんでした。

唯一、私が一番最初に見たあの犯人は塊の中で絶命しており、もはや少女を殺したのは誰かさえ分かりません。




私はその時の後悔で、一ヶ月ろくに食事も睡眠も取りませんでした。

兄や妹が心配そうにしていましたが、彼らもまた私の気持ちは分かっているので口出しはしてきませんでした。


それから少し経って。悲しみは無くならないものの落ち着いてきた私の元にセイラがやってきました。

何だかただ事ではないようでそわそわしています。理由を問うと庭の薔薇園に綺麗な薔薇が咲いたらしいのです。私があれだけ頑張っても見事に咲かなかったあの薔薇が咲いたというのです。


急いで駆けつけると、思ったよりも沢山の薔薇が咲き、園が華やかになっていました。

アーチにも絡みつき、薔薇のアーチが出来ていました。

その姿に少女を浮かべ流す涙は、悲しみと嬉しさが半々でなんとも表しにくいものでした。



私が感極まり素手を薔薇に近付けていると、なんと薔薇が意思をもったかのように私の元へ伸びてきました。しかも私の手を気遣い、近づいてくる部分の棘は抜けて地面に落ちて行きます。

こうして私に纏わり付いたこの薔薇が、今の私の武器に当たるのです。


普段は腕や服に絡みついているのですが、こうしてイメージをするとその通りに薔薇が動いてくれるのです。何だか私は少女と一心同体になった気がして、少し心が休まりました。


少女を守れなかった私が少女に守られることになるとは思っていませんでしたが、またこうして一緒にいられるのであれば何でも構いません。これからは立ち向かう側になろうとも、少女もとい薔薇と力を合わせまたあの日のような事を繰り返さないように。


それが、私の少女への償いなのです……。












今、こんなところで離脱する訳にはいきません。私は、少女と約束したのですから。

私は今ーーー再び皆さんの元へ。

という訳で、今回過去を打ち明けたのはカインでした。

彼が武器を生み出してしまった理由。それは“大切な人を守れなかった”から。

少女もまた武器を持っていたようですが、それはまたいつか機会がありましたら。


さて次回は学校に集まった国内組の話です。

不安な予感は的中してしまうもの。

今、学校で何が!?


では、次回も引き続きご愛読お願い致します!

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