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事務所

バス停で料金を支払い、職場へと足を進めて行く。

両親からは猛反対を受けたが俺は今の職に誇りを持っている。探偵。昔両親が好きだったという向こうのアニメ主人公に影響を受け現在の職業に就いた。同年代の奴らは大企業への就職や進学。親の仕事の関係ばかりが多く、俺の職業を聞いた奴らは鼻で笑う者が大半であった。

ここだ。街中の大通りより二本程奥へと続く道にある。表の煌びやかな電子掲示板や光に当たることも少ない。人の目も気にせず依頼に来られる際には安心できると自負している。この大きくはないが小さくもない赤墨色の建造物。外壁は所々汚れており塗装も剥げている。

俺が生まれる40年前程から建っている。俺の上司兼師匠が辞める前にここを譲り受けた。

《シエロ探偵事務所》これが我が職務先となる。名称も変更していない。名前の由来は伺った事は無いのだがあっちの言葉らしい。

現在はイヤホン型が主流にはなるのだが片耳に装着するだけで他者の言語を自身が理解できる言葉へ略タイムロスなく変換してくれる。

俺の両親も話すときはイヤホンは無くても構わないし、現在では肌の色の違いや言葉の違いを気にする者は殆どいないであろう。

木目調の磨りガラスがついたドアを開き自分のデスクへ着く。仕事量だが忙しくもなく、暇でもない。内訳は大半が浮気調査が多い。不貞行為というのはいくら時代が進歩し、あっちの地上生活を抜け銀河を跨ごうと変わりはない。とはいっても変わった点はいくらかある。

性的な肉体関係を持ったという事例は少ない。現在に至るまで人類の出生率は著しく落ちていた。動物的な本能が低下傾向にあり、種を残すといった行動が消極的になっているのだ。男女の距離感も両親のケースは少ない。

古来の男性が稼ぎ、女性が家事、育児をといった考えは化石となった。

生物学的雌雄が人類にも陰りが見えて来ていたのだ。肉体的な行為を行いその間に子を授かるケースなど現在では少ない。

子宮で子供を育てるといった行為に人類は危険視さえしている。

過去より飛躍的に進歩した医療で肉体的精神的に苦痛を抱える様な行為は避けており、現在では人工子宮によって両親の卵子と精子を受精させているのケースが最も多い。

母体の負担も少なく、流産になる可能性が無い。個人の生活リズムを変えることなく法律的に両親となった者達や子供を望めない体質の方でも授かれるといったものだ。

両親は人工出産では無かったため他の人が反対したのも現在は納得できる。

では現在どのようなケースが不貞行為というのか、1週間2週間出張で空きができるので確認してほしい。自身といる時間が短くなったので調査してほしい。等殆どが疑心暗鬼になった為の依頼が多い。調査を行うと実際に不貞行為を働いていたケースというのが稀である。

人類は2000年代以降は性に対して無関心に加速していたのが現在まで続いている。

なので調査は多い者の大事にならずに済む仕事が多い為俺の精神衛生上助かっている。給料も頂けて裁判沙汰で悲しむ依頼者も少ない。

その分家賃代や高熱費でほとんど助手を雇う様な余裕もなければ貯金もままならないのが事実である。

今日も18時頃より依頼が1件あるのだが余裕で行えるであろうと俺は午睡を楽しむ為奮発したソファで横たわるのであった。

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