日常の皮をかぶった神域生活
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数日後。
供え物の処理当番は交代制となり、
洗濯場の前には結界札が下がり、
ギャルが「このWi-Fi、まじ聖域」と言いながら部屋に居着いたころ──
俺の部屋は“ただの部屋”ではなくなっていった。
そのきっかけは、玉座だった。
元はカレーを落ち着いて食べるために設置した、大型のリクライニング椅子。
リフォーム魔法で中心に据えたのが運の尽き。
それを見た誰かが、「神の座に違いない」と勝手に勘違いし、そこからすべてが狂い始めた。
最初は「主」。
次に「神王様」。
そしてついには、「おおいなる御存在(CV:少年声のナレーション)」という謎の演出まで登場。
佐々木さんが法務と警備を整備しはじめ、住人たちが勝手に供え物の管理と整列を始めた頃には、
この場所はすでに“迷宮行政の中心”になっていた。
そして、決定打となったのが──UIの自動更新だった。
《新機能開放:リフォーム魔法 Lv.2》
《効果:部屋単位から“区画単位”への改装が可能に》
《※発動には“明確な目的意識”が必要です》
《※目的が曖昧な場合、自動的に迷宮側が解釈・補完します》
「……目的意識とか、一番俺が苦手なやつじゃん……」
試しに、“静かで落ち着ける空間”を思い浮かべてリフォーム魔法を実行してみた。
結果──
部屋の一角が、防音仕様の和風茶室に変貌。
掘りごたつ完備、間接照明あり、畳はふかふか。異常に癒される空間が出来上がった。
「うおお……なんだこの癒し空間……!」
だが、それを見た周囲は違った。
「これが……“沈黙の間”か……」
「神が祈りに入られる聖域……!」
違う。違うから。
俺はただ、カレーを落ち着いて食べたかっただけなんだ。
だが、これが“始まり”だった。
リフォーム魔法:暴走ログ
• 「洗濯できるスペースが欲しい」
→ 巨大な“水精霊の滝場”が出現。洗濯物に精霊が祝福をかけはじめる。
(タオルに《加護+1》の表記が付いた)
• 「ちょっと明るくしたい」
→ 天井に“光輪”が浮かび、部屋全体が《聖光エリア》扱いに。
(UIに《清浄率:98%》と表示)
• 「寝やすいベッドにしたい」
→ モンスター信者が勝手に聖布を収集。天蓋つきの“祭壇ベッド”に進化。
「……もしかして、俺の生活改善が、宗教拡大の根源なのでは……?」
そう思い始めた矢先だった。
“神官見習い”と名乗る青年が、祈祷服で俺の部屋を訪ねてきた。
「神王様、拠点の“祈祷区画”にて、ご神託を賜れればと……」
「無理。今、洗濯してるから」
──その、ただの生活的発言がまた火をつけた。
翌週には洗濯場の前に、なぜか信仰札が設置されていた。
《神王、清浄の儀式中につき通行不可》
《洗濯槽への接触は禁止です(信仰的理由による)》
《神王様の下着類を視認した者は、“悔悛の間”にて瞑想せよ》
「いやいやいや、洗濯だってば!?
俺の生活の一部なんだよこれ!!?」
でも、もう遅かった。
迷宮内の住人たちは、“洗濯=神事”という認識で完全に定着し始めていた。
俺がタオルを干すたび、スライムが供物を添える。
靴下を洗えば、精霊が祝詞を唱える。
パンツを干せば、巫女が目を伏せて祈る。
終わった...




