リフォームしたらバグが加速、帰ってきた隣人がゾンビ映画仕様
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数日が経った。
俺は毎日《リフォーム魔法》とにらめっこしながら、せめて部屋だけでも“人間の住処”に戻そうと悪戦苦闘していた。
──だが、結果は全敗だった。
試しにキッチンを“元の構造”に戻そうとすれば──
床下が奈落の落とし穴に変化。
深さ:∞メートル。落下中ずっと地鳴りSEが流れ続ける仕様。
IHコンロを再現したつもりが、なぜか「ファイアⅡ」なる魔導炉に進化。
火力が“爆発系”になり、卵焼きが煙幕になる始末。
冷蔵庫の扉を開けた瞬間、蔓と触手の森が「ようこそ」と言わんばかりに俺の手に握手してきた。
1本の蔓には、なぜか名札がついていた。
《育成中:フレンドリィ種》
《性格:人懐こい》
《趣味:抱擁》
《好きなもの:湿度》
「育ててねぇよ!? 誰だよコレ育ててるやつ!!俺じゃないのに愛着湧き始めてるのが嫌なんだけど!!」
どうやら、《リフォーム魔法》は“俺の生活イメージ”に基づいて部屋を構成するらしい。
だが問題は──その“俺”がすでにバグった空間に精神ごと汚染されてることだ。
つまり、出力されるのは「快適」ではなく、
異常な快適さ──“人間性を失っても住める快適”だった。
そんなある朝──
「お、おい神田くんか!? 無事か!?」
玄関の外から、聞き覚えのある声が響いた。
「……佐々木さん?」
201号室──隣に住んでいた、社畜歴25年の男。
スーツとビジネスバッグを常に持ち、Excelと残業に生きた男だった。
だが、ドアを開けると──そこにいたのはゾンビ映画のサブキャラ。
•スーツの上にボロボロのマント
•片手にはスライムの粘液がこびりついた釘バット
•ネクタイは怪しげな光を放ち
•メガネはヒビ入りで、目の焦点がどこか遠い
「ずっとこの階層をぐるぐる回っててな……やっと見つけたよ、君の部屋」
「なんでそんな風になってるんですか佐々木さん!?!?」
「……生き残るために、な……」
その言葉には、変に説得力があった。
「俺の部屋は無事だったか?」
「あー……押し入れが異界に繋がってて、中身ごと……」
「……俺のPC……」
その瞬間、佐々木さんの目から光が失われた。
あれはもう、社畜じゃない。
あの日の彼が何かを超えた瞬間だった。
「全部入ってたんだぞ……確定申告の控えから、趣味で書いてたラノベまで……」
「えっ、佐々木さんラノベ書いてたんですか」
「『転生した社畜が迷宮管理職になるまで』……三章まで書いたんだ……」
「今まさにリアルでやってますよ!? て」
「皮肉だよな……現実は小説より奇なりか……本当にあるんだな」
部屋の奥、玉座が「ギィ……」と不吉な音を立てて軋む。
「……あれ、何?」
「ああ、それ、迷宮が“ご神体用”に設置したやつです。ラスボスが99%座る系の椅子ですね」
「なんであんだよ……」
佐々木さんは深くため息をついて、
釘バットを玄関に立てかけ、ポケットから**カロリーメイト(メープル)**を取り出した。
「とりあえず、生きててよかったよ」
その言葉には、妙に重みがあった。
この異常空間に順応してしまった彼の本気が、逆に怖い。
そしてUIが、当然のように反応する。
《新たな住人を確認:佐々木ヒロシ》
《居住許可:自動付与》
《役職候補:補佐官 / 生贄 / 生活安全管理責任者(仮)》
《スキル適性:帳簿管理 / 忍耐 / 冷静ツッコミ》
「いや、候補に“生贄”って何!?」
「補佐官……やりがい、あるかもしれんな……」
「怖い! 順応しすぎてて怖い!!」
彼は静かに支給された《防爆サンダル》を履き始めた。
そしてその頃、
炊飯器の横で、ランプが光り始め──
《魔導熱源:起動準備完了》
《詠唱開始──》
《召喚対象:不明》
《召喚式:「ご飯よそいます」》
「……ああもう、カレーどころじゃねぇなこれ……」
俺は天井を見上げた。
そこには星空──いや、銀河が広がっていた。
もはやこの部屋は、世界だ。
世界の最深部。
俺はただ、牛乳を買いに行っただけの男だった。
──でも今は、
なぜか、迷宮の“ボス”をやらされている。
今日はここまで、明日はどんどん書くぞー




