ジロウ死す
「……ぶたまん……だと?」
「そうでやす。……ぶたまん……でやす」
私は、緊迫感あふれる表情で語り合うゴッド様とチャシューさん、彼らの前に酒の入ったグラスを置きました。
「どうぞ」
「ぶふぃ、ありがとよ」
「いただきやす」
「ぶたマンさん……確か、テキマロウ星の銀河騎士でしたか?」
「ぶふぃ。あー、そっちのぶたマンじゃあねえんだよ」
「ニンゲンどもがカンサイと呼ぶ魔境……その地に伝わる、恐ろしい代物でやす」
……ひゅうぅぅぅ
店内を、冷たい風が吹いたような気がしました。
「……あれですか」
「……ぶふぃ、そうだぜ」
「……ブタ族の肉を使った、饅頭でやす」
体が、ぶるりと震えました。暖かい筈の室内が、なぜだか寒く感じます。
「……どうぞ、お飲みください」
「ぶふぃ、済まねえな」
「いただきやす」
「私も失礼しますね」
ゴッド様とチャシューさんに、ホットブウィスキーを渡し、自分も口に含みます。
少しだけ、暖かくなったように思いました。
「一体なぜ、そんな恐ろしいモノの話をしていたんですか?」
「ぶふぃ、ジロウを知ってるかい?」
「ジロウさん……ですか?」
「タロウの弟でやす。トンカツにされた後、怨霊になった」
「ああ、タロウに弟がいたんですね」
「おう、そのジロウがな……。ぶふぃ、豚まんにされたんだ」
「そして、その中の一つが、何故かタロウの墓に置かれていたんでやす」
「ぶふぃ、嫌な予感がしやがるのさ」
……ひゅうぅぅぅ
……ぶるり。また、寒さを強く感じました。
「ブヒ、ブヒヒ。お久しぶりですねぇ、皆さん」
「なっ!……タロウ!」
「ぶふぃ!復活するにしても、お盆だと思ってたが、また化けて出やがったのか!」
端のカウンター席に、タロウの霊がいました。
店内の照明が、光を弱めています。
「ブヒヒ、トンカツも良かったですが、豚まん……それも甘美な響きですねぇ。ブヒヒ」
タロウの霊が、ゆらりと近づいて来ます。
「ブヒヒ、皆さんで作った豚まんは、さぞや美味かろう?ブヒヒ!」
……ブゴン!
「え?ゴッドさん?パワーアップして帰ってきたのに、何で普通に殴られてるんですかオイラ!?」
「ぶふぃ!神だからだ」
ブタン!ブゴン!
「ちょっ!……痛い?……待って!……ブヒッ!……ブヒッ!」
ブタン!ブゴン!ブギョ!
「ブヒーーーーー!…………」
ゴッド様により、復活したタロウの怨霊は再び眠りにつきました。
「ぶふぃ、パワーアップしたとぬかしてやがったが、一度成仏してたせいか弱かったぜ」
「ただ、ジロウを豚まんにしてタロウの墓に置いた者……何者でやすかね?」
……ギィ
「いらっしゃいまし」
「へへっ、マスター、一番安い酒をくれ。……おお!神よ!お久しぶりです」
「ぶふぃ。……おい、ニック?」
「何でございますか?神よ」
「ぶふぃ、まさかとは思うが……お前、ブタ墓場に豚まん置き忘れてたりしないよな?」
「……!……流石は、神!ポケットから転げ落ちた小銭を拾うために、持っていた豚まんを墓石の上に置いたのを、すっかり忘れておりました!」
「ぶあっは?……てめえかあ!」
ブギョン!ブギョ!ブゴッ!
ニックは、ゴッド様の豚足に殴られながら、何故か幸せそうな顔をしていました。




