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勇者になってみませんか?  作者: 七瀬 優
プロローグ
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16/75

遊び人のスキル

 遊び人Lv2になったりん。

 早速スキルを取る事になる。

 魔法を使う気満々なところ悪いんだけど、遊び人だからな。

 そんな実用的なスキルがあるとは思えないんだよな。

 

「空が飛べるのかな? 遠くへ一瞬で行けたりするのかな?」

 りん、期待に胸膨らませてるところ悪いけど、たぶん無理だ。

 まあ、これ以上りんの期待が膨らむ前に確認するか。

 

 りんのステータス画面でコマンド・スキルっと。


・こける

・寝る


 状態異常付与か、なんか、思ったよりはまともなスキルだな。

 説明を見るまでもなく、名前みるだけで想像できてしまった。

 あと、魔法じゃないって事も。

「りん、残念ながら、魔法はないっぽいぞ」

「ええ~~~~~~」

 りん、がっくりとしゃがみ込むほど残念なのか。まあ、期待しまくってたからな。

「まあ、スキルツリーに魔法が出てくるかもしれないから、そんなに落ち込むな」

「スキルツリー?」

 りんは、不思議そうな顔で聞き返す。

 ああ、こいつはTVゲームでも基本眺めてるだけだからなRPGは。

「スキル取得すると、次のスキルが取れるようになって行くシステムだよ」

 ま、本当にスキルツリーのシステムかどうかはまだ検討の余地があったり、説明としてどうかとはおもうが。

 りんへの説明だから、意訳して伝えた。

「じゃ、早くスキルとって行こうよ~」

 いとも簡単に元気にもどったな。

「まだ、Lv2だから1つしか取れないぞ。どっちがいい?」

「どっちでもいい~あおちゃん決めておいて~」

 と言って廊下に出て行く。

 階段を降りていく軽快な足音と共に「ポテチ~ポテチ~」とか調子の外れた鼻歌が聞こえるので、お菓子でも取りに行ったのだろう。 


 先の方の習得スキルが見えないからな、どっちがいいかなんて解らないんだよな。

 そのうち先の方のスキルも見えるようになるのだろうか?

「ま、上の方からにするか」

 こけるの方を選択してと……。


 『こけるのスキルを取得した』


 うん、無事に取れたな。

 次のスキルは……。

 そう思ったときに、階下から、ビダーンというすごく痛そうな音と共に。

「痛だいぃーーー」

 りんの悲鳴が聞こえてきた。


 急いで駆けつけると。

 りんが顔を赤くして半べそをかいていた。

「いだぃよ~あおちゃん」

 どうやら、こけて顔面から突っ込んだようだ。

「大丈夫かよ、りん」

「いだぃーーー」

 うん、すごく痛い事は良くわかった。

 だけどまあ、見たところ、鼻血などの出血もなさそうだし、大丈夫そうで安心した。


 さて残る問題は、このりんをどうするかだな……。

 まあ、お手軽にお菓子で釣るか。

「泣いてないで、リビングで菓子でも食おう」

「ポテチある?」 

 りんはピクリと耳を震わす。

「俺のポテチ出してやるよ」

「やった~~~~」

 うん、ポテチ一つで元気になるなんて本当に安上がりだな、りん。


「ポテチ~~~~」

 リビングに走っていくりん。

 ツル、ビターン。

 本当にほれぼれするような、お手本のようなころび方をする。

 また、こけた(・・・)のか?

 見るからに痛そうなりんを見やる。

 今度は痛くて声が出ないのか悲鳴がない。

「だ……だいじょうぶか?りん」

 俺は恐る恐る尋ねてみる。

「うっ……うっ……」

 目に涙を溜めて今にも泣きそうになっていた。

 まあ、これだけこけれ(・・・)ばな……。

 うん?さっきから引っかかる。

 こける(・・・)

 …………。

 まさか……『こける』のスキルって……。

 すごい勘違いをしていたのかもしれない。

 

 あわてて、部屋に戻る俺を見て、

「まっでぇ~~あおだん~~~」

 泣きながら追いかけて、また見事にこける(・・・)

 やっぱりそうだ、これだけ連続するのは普通はありえない。

 やっぱりあの……。

 と思ったところで、恐ろしい事を思い出した。

 確か、さっきのステータスだとりんはHP6だったはず。

 それで……さっきから計3回、いやまたこけた4回めか……。

 まずい、1度につき1Pのダメージだとしてもう残りHP2だ。

「りん、動くな!」

 俺はあわててりんを止める。

「俺が戻るまで、そこにおとなしく座ってろ」

 俺の怒鳴り声に驚いたのか、りんは泣きながら、その場で座り込む。

 まずい、りんのHPを回復させないと。



 俺は部屋に戻ると急いで『回復魔法1』のスキルを取得する。

 魔法を確認する。


・『回復・単体小』

・????


 あとは、『魔法発動待機状態』にして……。

 これで使えるはずだ。



 りんのところへ急いで戻ると、顔をぐしゃぐしゃにしながらりんが待っていた。

 すぐに、りんに向けて回復魔法をつかう。

「回復・単体小」

 ライトグリーンの暖かい光がりんを包む。

 たぶん、HP回復は成功したのだろう。


「わ~今の魔法??痛くなくなったよ~あおちゃんすごい!」

 りんは泣き顔から一転、初めての魔法に興奮している。

「私も使いたい! 魔法!!」

 そう言うと思ったよ。

 けどな……遊び人じゃな……。


 

 その後、俺がりんをおぶさって部屋まで戻った。

「俺におぶされ」

 中腰になって、りんがのおぶさりやすいように背中を向けたが、

「おんぶされなくても、2階の部屋ぐらいいけるよ!」

 そう言った次の瞬間にこけて、顔を真っ赤にしながら、俺の背中に体重を預けてきたのだった。


 

 俺の部屋では、りんが珍しく何もせずにおとなしくベッドに腰掛けていた。

 まあ、動き回ってまたこけるのがいやなんだろう。

 まずは、りんのステータスの確認をする。



 名前:東堂 凛(代理操作:来栖川 葵)

 職業:遊び人Lv4

 性別:女


 HP :10/10

 MP :3/3

 SP :2

 EXP :11/20(経験値取得履歴)

 力 :3

 体力:2

 知力:2

 魔力:1

 速度:3

 幸運:4



 なんと早くもLvが2つもあがっていた。

 な、嘘だろ?

 あわてて、『経験値取得履歴』を確認。


 『こける』スキル発動(取得経験値 2/回)+10P


 スキル発動1回につき経験値2、魔法の時と同じようだ。

 それにしても、レベルが上がり安すぎるな遊び人。

 あ、そうだ、回復魔法使ってどのくらい経験値もらえるんだろう?

 俺のステータス画面も開いてみる。



 名前:来栖川 葵

 職業:勇者Lv5

 性別:男


 HP :35/35

 MP : 9/15

 SP :2

 EXP :54/100(経験値取得履歴)

 力 :5

 体力:6

 知力:7

 魔力:5

 速度:6

 幸運:5


 『経験値取得履歴』を確認。


 『回復魔法・小』魔法発動(取得経験値 2/回)+2P


 MP6P消費したみたいだ。『回復魔法・小』は6文字だから、1文字*MP1なんだろう。

 経験値の方は、消費MPによらず1回経験値+2Pのようだ。


「あおちゃん~いつになったら私転ばなくなるの?」

 りんが不満げにたずねてきた。

 ああ、忘れるところだった。

 りんのスキル確認と……。

 今度は、スキルの説明もちゃんと調べておかないとな。



・こける

 一定確立でころぶ※パッシブスキル

 ころんだ事でダメージを受けることは無い。

 ただ、痛いだけ。


・ボケ

 ボケる。

 ツッコミがあって始めて成立するお笑い。

 ボケだけでは悲しい。


・ツッコミ

 ツッコミを入れる。

 一律1ダメージ。

 ボケと違って色々使える?


・寝る

 眠りやすくなる※パッシブスキル

 寝る事での回復効率がUP。

 宿屋で寝ると全快だから基本無意味?



 スキルは2つほど増えていた。

 レベルUPかスキル取得で増えたんだろう。

 それはともかく、ころんでダメージ負う事はなさそうで安心した。

 でもまあ一応試しておくか。

「りんちょっとその辺歩いてみろ」

「え?治ったの?」

 りんは何の疑いもなく数歩歩いてズベシ。

 やっぱりこける。

「あおちゃんの嘘つき~」

 りんが非難を向けてくるが、いったん無視。

 りんのステータスを確認する。

 HPは10/10、ダメージは受けてないようだ。

 経験値はEXP13/20、スキル使用分ちゃんと2P増えている。

 

 『こける』スキルでダメージ受けて死亡という最悪のパターンはなさそうだ。

 てか、急いで回復魔法使う意味無かったな……これは。

 少しあせりすぎたか。

 あとは、このスキルがはずせるかなのだけど、これは簡単にわかった。

 スキルを選択してみると……。

 魔法のコマンドと同じように、


・スキル発動設定

・スキル名設定


 スキル名の設定の意味はいまいちわからないが、スキルの発動設定は良くわかる。

 試しに設定してみる。

 OK→NG→OKと言うように交互に変わっていく。

 これでこけなくする事も問題なくできそうだ。

 

 ここで、ふと……このままほうっておいた方が経験値が増えるのではと思ってしまった。

 怪我をする事もないし、しばらくこのままで様子を見るのもいいのかもしれない。

 ま、りんに重大な問題が出てきたら解除すればいいか。

 それよりも、レベルを上げてHPを増やした方がいい気がしたのだ。

 さすがに日常生活でも10回のダメージは上限としては少なすぎる気がするのだ。

 よし決まった。

「りん、こけてもHPにダメージは無いみたいだから、方法見つかるまでしばらくそのままにするぞ」

「ええええええ~痛いんだよ!」

 りんは本気でいやそうだった。それでも、

「俺のポテチやるから我慢しろ」

「ポテチ~~うん、解った~」

 自分でやっておいてなんだが、ポテチでつられるなよ……。


 あと、りんのレベルUPのため、スキルは最大限取得させておく。

 他のスキルは特に問題がなさそうなので、『ツッコミ』と『寝る』を取得させる。

 そういえば、スキル取得後スキルが増える事なかったな。

 やっぱり、取得条件はレベルなんだろうか?


 ま、りんのスキルはこのくらいでいいか……。

「あおちゃん~おなかすいた~」

 りんは、グーとお腹を鳴らせていた。

 そういえば、時計を見ると何気にそろそろ夕食の時間だな。

「じゃ、今日は俺が作るよ、りんは風呂いれてくれ」

「うん解った~」

 そのまま部屋を飛び出し……。

 うん、悲鳴やら痛そうな音は聞かなかった事にしよう。少し罪悪感を感じる。

 そう思いながら、画面を消そうとする。

 そのとき、タスクバーにブラウザが起動中なのを見つけて、ブラウザを落とそうと画面を表示させた。

 『転職の神殿』のHP。いやたぶん跡地だったというべきだろう。

 表示が数行の英語だけになっていた。


『All the entry completion.


Game start!』


 エントリー完了?ゲームスタート?

 何なんだろうこれは……。

 


 こうして、俺たちは不思議な事件に巻き込まれる事になったのだ。


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