◇ 機転
ロッドマンは、電話の相手に話しかける。
「ロッドマンよ。わたしのことは知ってるわよね」
「いうまでもない」
「一度、お互いに会って話し合わない?」
「日本のクノイチと組んでいるおまえに対して、なんの危機感も抱いていないわれわれだと思っているのか」
「わたしがあなたたちを敵だと思っていれば、わたしを尾行していたあなたの仲間は、みんな死んでるわよ」
「………」
会話が途切れる。
ロッドマンの言葉に、それは正しいと相手の男は認識させられる。
そんな彼は電話の向こうから、自分が感じている疑問を投げてくる。
「ピーターにカーラのことを調べさせたのは、なぜだ」
「ライオットが接触したカーラが本物かどうか、確かめるためよ。偽者だったけど、実際に会いに行くまでは疑問に思わなかったけどね」
まだ疑っている気配が、言葉を返さない相手から伝わってくる。やはり、説得するのは難しいようだ。
「ライオットは、偽者のカーラに殺されかけたのよ。その偽者が、ベルベットというわけ」
「証拠は?」
「ライオットのカルテぐらいしかないわね」
残念ながら、それ以上のものを出そうにも出せないのが事実だ。
そこへ、ナナセが話しかけてくる。
「すみません、代わってもらえますか?」
ロッドマンは、ナナセに CIA を納得させる証拠でもあるのだろうかと思いながら、スマートフォンを彼女に渡した。
「もしもし、わたしはクノイチだ。おまえたちは、ルーデス協会を知っているか」
「ああ、トレジャーハンターを集めた組織だな」
「 MI6 が、われらクノイチから巻物を譲り受けるという話は?」
「すでに知っている」
「この件でルーデス協会も関係しているのだが、おまえたちもわかっているのか」
「ルーデス協会が……本当か?」
彼らは、そこまでは把握していなかったらしい。
ナナセは「やはり」と思いながら、ルーデス協会がどのように関わっていたのか伝えようとする。
「本当だ。アメリカのマフィアがルーデス協会のクノイチ担当の連絡員を殺し、そのマフィアが連絡員になり代わって巻物を奪い取ろうとしたんだ」
CIA の彼らは、この事実にしても疑ってかかるだろう。
ナナセは話を続ける。
「ルーデス協会からクノイチに、連絡員を殺害したマフィアの討伐を正式に依頼されたんだ。調べればわかるはずだ」
「………」
「そのマフィアは、ゴルドーの一味だったよ」
「おまえたちは、ゴルドーを知っているのか?」
「そのゴルドーが直々に、ベルベットに巻物を盗むよう依頼したんだ。ベルベットは、そのためにカーラという諜報員に化けようとしたんだ。だが、この依頼は彼女を陥れる罠だった」
「証拠はあるのか?」
「わたしは、ゴルドーとベルベットがつながっていたという映像をもっている。まあ、ベルベットはゴルドーに裏切られたんだけどな」
しばらく、なにも話さない状態が続く。CIA の仲間内で、考えをまとめているようだ。
やがて、電話の男が告げる。
「わかった。一度、会うことにしよう。会うのはロッドマンとおまえの二人だけだ」
「それでいい。わたしの名前は、ナナセだ」
「時間と場所はこちらで指定する。その携帯に連絡を入れる」
通話が切れた。
ナナセはロッドマンにふり向くと、先ほどきいたことを伝える。
「 CIA が会うといっています。この携帯に、時間と場所を連絡してくるそうです」
ロッドマンはホッとして、厳しい表情をゆるませる。
「ありがとう、助かるわ。それで、さっき話に出た映像というのは?」
「アメリカにいる仲間に、ベルベットのことを調べてもらったのです。すると、彼女がゴルドーとつながっていたのがわかりました」
クノイチの情報網も侮れない。
ロッドマンは、ライオットに伝える。
「この携帯電話、わたしが持っておくわね。あなたには予備のスマートフォンを渡すわ。いまから、わたしのマンションに来て」
「大丈夫ですか? やつらがその部屋に……」
「会うって約束したんだし、大丈夫でしょう」
とりあえず、ライオットたちはロッドマンのマンションに行くようにしたのだった。




