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スパイラル・チェイス  作者: 左門正利
◆ 追跡
30/67

◇ 三者三様

 一方、ロッソの方も、ベルベットにまかれてしまった。


「チッ」


 舌打ちした彼は、仕方なくバルゴと分かれた場所までもどると、すでにバルゴがそこにいる。


 バルゴのそばまで来たロッソは、彼に向かって口をひらいた。


「おまえもダメだったか」

「ああ。だがな、見ろよ」


 バルゴはそういって、右手に持っている筒を顔の位置まで上げた。

 ロッソの目が点になる。


「おい、それは……」

「巻物だよ。ベルベットじゃなくて、あの女がもっていたんだ。誰だか知らねえけどな」

「部下に連絡しよう。さっさとボスのもとに運ばせる」

「それがいいな」


 予期せぬ収穫だった。




 ロッソをまいたベルベットは、都市近郊のホテルに泊まる。


 部屋に入って、すぐにバッグの中身をチェックした。残酷な事実が、彼女を唖然とさせる。


 ──ない……


 自分の持ち物はあるが、肝心の巻物が入っていない。


「やられたわ」


 彼女はため息をついて、ベッドに背中から倒れ込んだ。


 どうもおかしい。ふだんの自分であれば、こんなことにはならないはずだ。

 己の感性に、ズレが生じている。


「なにか間違っているのかしら?」


 今回、予定外だったのは、ロッソたちから狙われたことだ。


 彼らのボスであったグッデンを殺害したのは、ベルベットである。そのことを簡単にはわからないようにしていたのだが、どうやって調べたのか気づいたらしい。


 なかなか、しつこい。まあ、ボスを殺されて組織を追い出されたのだから、無理もない。


 ベルベットは、ロッソたちがルーデス協会の人間になりすまし、巻物を奪おうとしたことを知っている。

 このことがわかったとき、彼女はいささか驚いた。まさか彼らが日本に来ているとは思わなかったのだ。


 ベルベットに巻物奪取を依頼したのはゴルドーだ。ロッソたちにすれば、ゴルドーのメンツを潰すためにも、自分が受けたこの依頼を全力で阻止してくるだろう……と、彼女は考えた。


 だが、ゴルドーとロッソたちがつながっていることを、ベルベットはまだ知らずにいる。

 それが、彼女の感性を微妙に狂わせ続けているのだった。




 バルゴから逃げきったロッドマンは、タクシーをひろって地下鉄の駅に行くと、地下に降りてナナセに連絡する。


「ごめんなさい。バッグも巻物も奪われちゃったわ」

「怪我はないですか?」

「なんとか大丈夫」

「話もききたいですし、会いたいのですが」

「わかったわ」

「いま、どこにいますか?」


 ロッドマンはナナセに居場所を教えると、車で迎えに来るという。ほどなくカナエが運転する白い車が来ると、胸をおさえているロッドマンは後部座席に乗り込んだ。


 助手席に座っているナナセが、彼女の方をふり向いた。ロッドマンを気づかうナナセは、話す途中で絶句する。


「だいじょう……っ!」

「ええ、大丈夫」


 ナナセは目を見開いた。ロッドマンの服は、胸の部分が血に染まっている。心臓の位置だ。


「カナエ、病院へ行って、急いで!」

「了解っ」


 ロッドマンは焦った。


「だ、大丈夫だから。この傷は……」


 ギャキキキッと悲鳴をあげるタイヤの音が、ロッドマンの言葉をさえぎる。

 結局、ロッドマンはナナセが指定する病院へ運ばれるのだった。


 その病院では、ロッドマンを()た医師をはじめ、ナナセたちも驚いている。


 ロッドマンの胸のレントゲンを撮ったところ、明らかにふつうとはちがっていた。彼女の心臓は、チタン合金の壁で守られている。また、乳房も人工のものが挿入されていた。


 目をぱちくりしているナナセは、信じられない思いが口に出る。


「 MI6 にサイボーグがいるっていう噂は、本当だったんですね」


 ロッドマンは、ため息をついて言葉を返した。


「それをきいたの、きょうで二度目よ」




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