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スパイラル・チェイス  作者: 左門正利
◆ 殺し屋たち
24/67

◇ 策士

 ベルベットが、成田国際空港にあらわれる。紺のスーツに、茶色のバッグを左肩にかけて颯爽(さっそう)と歩いている。


 それを確認したロッソの部下が、他の仲間に連絡する。


「来たぞ。搭乗手続きのカウンターへ歩いている。ブロンドヘアに、紺のスーツだ」


 ロッソの部下たち四人は、それぞれ別の場所からベルベットの動向を監視する。


 カウンターの受付でしばらく話していた彼女は、引き返して出口に向かおうとしている。

 予想外の行動だ。部下たちは戸惑った。イリジンという男が、スマートフォンで仲間の一人に指示する。


「ラパン、ベルベットを追え」

「わかった」


 空港を出たベルベットが白いクーペに乗って発進すると、ラパンもグレーのセダンに乗り、彼女の跡を追って行った。


 イリジンがバルゴに連絡する。


「もしもし、イリジンです」

「どうした?」

「ベルベットが空港へあらわれたのですが、搭乗手続きの受付でなにか話したあと、すぐに空港を出ました」


 バルゴがそれをロッソに伝える。


「ロッソ、どうする?」

「ベルベットから目を離すなといっておけ」


 ロッソの指示をバルゴから受けたイリジンは、そのままラパンに伝達した。


 部下三人が集まり、カペラがイリジンに尋ねる。


「ロッソさんたちは、どうするんだ?」

「予定どおり、こっちへ来るらしい」

「ベルベットは、受付でなんの話をしていたんだろうな」


 それをきいたステファンが、当たり前のようにいった。


「搭乗予約の変更だろ。それ以外、考えられないぞ」


 ベルベットが去った空港で、彼らは暇をもてあます。




 ベルベットを追っているラパンは、彼女が運転する白いクーペから、つかず離れずの距離を維持している。


 だんだん、行き先がわかってくる。


「港に行くのか?」


 ベルベットは、倉庫がならんでいる港を目指していた。やがて彼女は、目当ての倉庫の前で車を止める。


 ベルベットがその建物の中に入ると、ラパンは車を止めてイリジンに連絡する。


「ベルベットは、港の倉庫に入った。武器などをここに調達しているのかもしれん。続けて跡を追う」

「わかった。慎重にな」


 この連絡は、イリジンからバルゴへも報告される。


 ベルベットが入った倉庫は、けっこう大きい。車から降りたラパンは倉庫に近づくが、彼女以外に人の姿はなさそうだ。

 ラパンは、イリジンに忠告されたとおりに慎重に建物の中へ足をふみ入れた。





 成田国際空港へ向かっているロッソとバルゴは、順調に車を走らせる。まもなく到着するというとき、バルゴのスマートフォンにメールが着信する。


「メール?」


 誰からだと思ったところ、部下のラパンからだ。ラパンのスマートフォンが故障して通話できず、メールで連絡したらしい。


 バルゴは、そのメールを見て驚いた。


「お、おい、ロッソ!」

「なんだよ、あわてて。落ち着け、もう少しで空港……」

「ベルベットは、関西空港で飛行機に乗るぞっ」

「なに?」

「関西空港だ、大阪だよ。あの女、大阪へ行ってそこから飛行機で飛ぶ気なんだ!」


 ロッソはブレーキを踏み、あわてて車を路肩に止める。そして、焦ったように声をはり上げた。


「部下全員に、大阪へ行くように指示しろ!」

「わかった」

「俺たちも電車で行くぞ。東京から新幹線だ。ここから近い駅は、どこだ?」


 ロッソたちがバタバタしているとき、ベルベットは手に持っているスマートフォンの電源を切る。


「ご苦労様。みんな、わたしの手のひらで踊ってちょうだい」


 彼女の足元に、命を絶たれたラパンが仰向けに転がっている。


 ベルベットは、メールを送るために使ったラパンのスマートフォンを、彼の胸のポケットに押し込んだ。

 冷たく微笑むと、それをめがけて銃弾を放つ。


 やるべきことが終わった彼女は、何事もなかったような顔で倉庫を出ると、自分が乗ってきた車の方へ歩いてゆくのだった。




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