87話 半魔族と王女と学園の人々
長くなってしまった! 申し訳ない!
私はこの場にいる大多数の人から見られていた。
何で知っているのだろうか。私はこっちに来てからは、オルドさんとセリカさんくらいしか知らないはず。しかも絶好のタイミングで、狙っていたのだろうか。
視線は突き刺さるように、一部は信じられないという感情と共に困惑して見ている。凄くその視線が痛くて……怖かった。
「……」
ケルトさんは黙って自分の手を握りしめていた。すると今まで黙っていた女神が喋りだした。
――彼女……もしかして、あの女神が転生させた人じゃ――
『女神情報が遅すぎ、私達に居ないと言ったじゃない……どういうこと?』
――だから言ったじゃないですか、私は居ないとしか言えませんよ。と――
『なるほど、女神がした転生は私だけということね』
――でも、おかしいですね~マリアさんの情報は女神でも秘匿情報ですし、鑑定にも引っかからないはずですけど――
『そんなものあったんだ』
ケルトさんは黙って私達の会話を聞いていた。止まっていた時は数分にも及んだ。
そして、貴族の誰かが言った。
「半魔族? ……もしかして魔族なの!?」
「魔族……! に、逃げろ! 殺される!」
「なんで魔族が、学園に入り込んでいるのよ!?」
その1言で会場全体はパニックに陥った。その間に、ノームさんは逃げ出そうとするが3人組とオルドさんに「何処に行くつもりだ?」「ちょっと面かせや」と端から見れば、ヤクザにしか見えないが。抑えてくれていた。
そして、パニックに陥っている時。ある1人の女性の声が聞こえた。
「静まりなさい!」
それは、王妃様でも無く。国王様でも、他の貴族でも無かった……声をあげたのはエンカだった。
その1言で、パニックに陥っていた会場は瞬く間に静けさを取り戻した。会場全体を包み込んでいた、怒気や悲鳴は消え。誰もが次に発するエンカの言葉を待っていた。
――エンカさんだって成長してるんですよ、貴女が牢にとらわれていた時から――
『本当に? それなら私も嬉しいわ』
暢気なことが喋れるまで回復した私は、女神と話す。
次にエンカが発した言葉は。
「魔族……そうね、半魔族よ。それがどうしたっていうの?」
「魔族は恐ろしい存在よ! ましてやハーフなんて人の汚点だわ!」
その声に対し、ノームが抗議する。魔族は忌々しく、恐ろしい存在だと、半魔族も同義だと。
エンカはその事に対して、首を縦に振っていたが。その言葉を否定せずに……。
「貴女達は知らないでしょうけど、この子は一度も悪さをしたことが無いのよ」
「それを証明することは出来ない! どうせ、優しくした裏で良からぬ事考えている!」
私はここに叫んでいけない自分を憎む、私が言った所でこの場を混乱させるだけだ。エンカに任せるしか無いのかと手に力入れると、ケルトさんとは逆側から手を握られていた。
そこには、ナタリアさんとテオドールさんが居た、手を握ってくれたのはナタリアさんだった。
「大丈夫、私達は知っているもの。貴女がこれまで……いえ、この学園でやっていた事を」
「ナタリアさん……」
「僕も知ってますよ、馬車から落とされ。家宝を売られ、万引きをした僕を庇い代わりに払ってくれたこと」
「それは、当然の事で……」
私は途中で言いかけると、テオドールさんは首を振ると「少なくともあの場で助けてくれる人はいません、ましてやお金を払ってくれる人なんて」と言った。
そしてテオドールさんは続けた。
「あの時助けてくれなければ、僕は罪人になって……更にはここに立つことが出来なかったでしょう」
「そんな大げさですよ」
「大げさじゃありません、罪人は一生、その言葉と共に罪を背負わないといけませんから」
そうなんだ……でも、私にとっては当然の事よ、どんなに礼を言われても前世からやっていた事だから。
そんな話をしていると、エンカは続ける。
「貴方方は……新入生の方は学園に来てから、誰の作った料理で生活してきましたか?」
「な、どういうことよ!」
「屋敷から通っている人は知らないかもしれないわ、朝起きてきた時、誰が何を作っていますか?」
貴族達は黙っていた、ノームが情けない声をあげているのは、本当に知らないからだと思う。
私は最初の方の2日間を除けば、朝や放課後の食事を作っていた……それを知らない寮生は居ないだろう、平民や貴族問わず。
「マリアさんじゃないですか? 2年生の方はそれが如何に大変なのは知っているでしょう。料理をして、ましてや人数分を作る。そんな事が貴方方に出来ますか?」
「……」
息を飲む音が聞こえる。エンカの一言一言は全て寮生の胸に突き刺さっているだろう。
そして、口止めされている内容までもエンカは言った。
「テオドールさんは、馬車から投げ飛ばされ。家宝を売られました……誰が助けたと思いますか? マリアさんです」
テオドールさんが店から逃げてる姿を思い出す。あの時はぶつかりそうになった人が、困った様子だったから話してみようという事から始まったもんね。
「カルネルさんが学校に遅刻しました。その真実は、魔法による原因でした……朝、カルネルさんが居ないと思って、行動を起こした者はいますか? 助けた人それは、オルドさんとマリアさん達です」
あの時は、丁度情報を整理してる時にカルネルさんの名前があがって、オルドさんが聞いた情報を元に動いた結果だったっけ。
たどり着いた時には危ない状況だったし、助かって良かったと思ったわ。
「これでも、この子が忌々しい、恐ろしい子だと思いますか? 貴方方の胸に聞いてみてください!」
「戯言よ! 作り話に決っているわ、金属店で奪った物なんて適当な物なんじゃないの? 魔物に襲われたってよくある事じゃない!」
「貴女……私、金属店とも魔物に襲われたとも1言も言ってないわ」
ノームは「あ」という言葉を出していた。自分から暴露しちゃったら、元も子もないよね……焦っていただろうし、しょうが無いとは思うけど、隠し通さなきゃどうしよもない。
「この方と私どちらが、信用に足るか分かりますよね……何故こんな事が起きているのか、誰が仕組んだことなのかを」
「嘘……よ、私はまだ生きなきゃならないのに……」
ノームは力無く膝を折り、尻もちを着いた。その前にある人物が立ちふさがった。
「僕は、気づいていた。そんな彼女でも、掛け替えのない心からの笑顔がある事を知っていた」
「メオドール様……」
「僕はどうしよもない馬鹿な人だ。でも、ノームと出会ってからは変わろうとした。彼女の本当の笑顔が見たかったから」
なんだろう、この雰囲気綺麗に収まりそうだけど……他の人達が許すかな~私も助力したいけど……。
でも、彼女達の事全然知らないからな~、このまま退学や会えなくなるのは寂しいし。
私はメオドールさんとノームの元へ歩み寄った。
「マリアさん……」
「僕達を笑いに来たのか! どうせ僕達には後は無い! 笑えばいいだろう!」
泣きそうなノームを見て、メオドールさんが抗議する。だけど、私はどうしても言いたいこととやりたいことがあった。
「ごめん……なさい」
パシンッ!
という音は、会場中に広がった。誰がやったのかと言えば、私だ。
数少ない転生者を失いたくはないし、仲良くなろうと思った。だからこそ、私は彼女の頬を平手打ちした。
「これで、許すわ」
「どう……して?」
「これ以上のが欲しいの? 私は感謝してるのよ、半魔族だという事を隠していた。それを言えずにずっと心のなかで渦巻いたまま、苦しい感情でいたの」
そう、私は何時か言おうと思っていた。だけど、言った時に避けられるのが怖かった……怖がられるのが怖かったのだ。
こんな最悪な形だけど、私は良かったと思うし、だからノームに感謝をする。だって、胸の中がスッキリしたのだもの、感謝以外でも無いでしょ?
平手打ちは……あれよ、これまで迷惑掛けた人の分よ。
「貴女はこれから大変な人生になると思うわ、でもここに来たんだから行けるわよね?」
「!」
微笑みながら言った一言に彼女は、何かを思ったけど。私は、気にせず王妃様と国王様の元に行く。
私は一礼して、無礼を承知で言った。
「彼女達が学園にいる間までは、大目に見てくれませんか?」
「ほぅ、それはどうしてか?」
「彼女達も変わろうとしています。もし、卒業まで変わらなかったら……見限ってくれてもいいです」
国王様は顎に手を当て、唸っているが。王妃様は笑顔で「いいじゃないですか、あのメオドールがあそこまでするなんて初めてみましたわ」と言っていた。その言葉に、国王様も頷いて。
「そうじゃな」
「それでは……」
「今、ここで起こった出来事は自分の中に仕舞ってくれ! もし、不満があれば儂の所まで申してみよ! 学園は学びの場! 変化するのも普通じゃ!」
国王様の甲高い声が聞こえた。王妃様もこの言葉に納得しているようだった。
仕切り直しとばかりに、国王様が「トラブルがあったが、パーティを再開しようではないか!」と言った。
それは難しいんじゃない? と思ったけど、みんなもそれでいいみたい。
そうして、色々な事があって収まってパーティが再開されたのだけど……まだ解決していない2つを私達はするようだった。
次は、残り2つの解決というか……説教となだめる?




