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リンの家出!?

 

 勇者Aはベロベロになるまで、シギトと飲み明かし家に帰ったのは

朝3時だった。


 「たでーま・・」


 「うぇ・・」


 「・・・・」


 「リン、愛する夫のお帰りだよ〜」


 「リンちゃん〜どうしたのかな〜?」


勇者Aは部屋を見渡すが、リンの姿はどこにも見当たらなかった。


 「あれ・・・」


 「なんだ・・これは」


テーブルの上に何か白い紙が置いてある。

勇者Aはそれを手に取り、読み始めた。


実家に帰ります。

突然でごめんなさい。

             リン


 「・・・・・・」


 「なに〜〜〜〜!?」


 「そんな・・ば・・馬鹿な・・・」


 「まさか・・・・」


勇者Aは数ある心当たりのいくつかを頭で思い浮かべる。


(…まさか、最近、帰宅が遅くなって、ろくに相手もしてなかったせいで

そんな俺に嫌気がさして、実家に帰った・・??)


(それとも・・・貧乏生活に耐えかねて、我慢できなくなって

俺を見捨てたとか・・?)


(後は・・フィーネやシルディが家にたまに電話かけてくるのを

聞いてたから、二人とも女だし、浮気相手と勘違いしたとか・・?)


勇者Aは意外にまともな心当たりばかりで、堅実で愛妻家の面が窺える。

逆に言うと交友関係はそれほど広くはなかった。


 「ふ〜・・・心当たりはもう他にないしな〜・・」


 「とにかく、リンは実家に帰っているようだ・・」


 「あいつの実家ってどこなんだろう・・」


 実は勇者Aはリンの実家を知らなかった。

病院で自分を親身に介護してくれたリンに惚れ、ある日突然告白した勇者Aは

その日から何度か交際はしたものの、会話の中で家族に触れると

リンは、いつもそれをはぐらかし、話が引き出せないでいた。

それでも、リンにベタ惚れだった勇者Aは、プロポーズをし

リンはそれを快く受けたので、とんとん拍子で結婚までこぎつけた。

結婚式は、リンの意向で、リンの友人、勇者A、ご近所さんという、とても

地味なメンバーでひっそり教会で式を挙げた。

リンの様子から自分の家族や素性を知られたくないのを、薄々感じていた勇者Aは

彼女に合わせて、自分の両親すら呼ばなかった。もちろん、両親はそれに不満たらたらだったが、勇者Aがそれを押し切った。そういうこともあって、未だにお互いの両親に、勇者Aもリンも会ったことは無かった。

 

 「どうしよ〜〜〜!」


 「リン・・・」


 「うぅ・・困ったなぁ・・」


まだアルコールがぬけ切れていない、ぼーっとした頭で勇者Aは

絶望という泥沼の中で、悶絶していた。


(…そうだ、こんな時こそ、冷静な考えができる・・・)


(…頼りになるアイツに相談して見よう・・・!)


勇者Aは血相掻いて玄関を飛び出し、馬車まで来ると大声を張り上げる。


 「タケシ〜〜〜〜!」


 「起きてくれ〜〜!」


タケシは自分を呼ぶ声に目を覚ますと、何が起こったのか頭で分析し始める。


(…ん…なんだ…!?)


(…勇者Aがなんか言ってるな…)


(…しかも…危機迫るような声で…)


(…こんな遅くに…?)


(何かあったのか…?)


タケシは一瞬で異常な事態を感じ取ると、体をノーマルな状態に戻し

馬車のチャックを開けて、ゆっくり外へ降りていった。

プルはそんな騒がしい声にも、まるで気づく様子が無く、ぐっすり寝ている。


 「どうした・・・?マスター」


 「おぉ・・タケシ・・・!」


 「聞いてくれ〜〜〜!!!」


勇者Aは酒の勢いもあるのか、タケシに抱きつくと

半べそをかきながら、リンの事、自分の事、結婚した経緯など

普段話す事が無い様なことまで、タケシに話し続ける。

一部始終を聞き終え、タケシがそれを頭でまとめると

重い口調で言葉を発した。


 「むぅ・・・マスター・・・」


 「今聞いたかんじでの、俺の意見を言ってみるが」


 「黙って聞いてくれるか?」


 「お・・・おう」


勇者Aはタケシに全てを話し、少し頭が冷静になってくると

静かに頷いた。それを見てタケシは話しを続ける。


 「俺がマスターたちのとこで、厄介になり始めて・・」


 「一緒に暮らしているうちに、リンさんや、勇者A、プルの事を本等の家族のように思っていて・・」


 「そんな家族の事を、それなりに理解しているつもりだ・・・」


 「そして、俺はリンさんは、一生懸命頑張って仕事をしている勇者Aの事を・・」


 「すごく大切に思っていて、勇者Aが心当たりといって今話した事なんかで・」


 「出て行くような人じゃない事も分かっているつもりだ・・」


 「そ・・そうか・・?」


勇者Aはすがる様な目で問いかけると、タケシは優しく微笑み、静かに頷いた。


 「じゃあ・・なんでリンは手紙だけ残して俺達を置いていったんだ・・?」


 「それは・たぶん・・リンさんにとって、物凄く重要な用事が急に出来て」


 「満足に説明する時間もなく、手紙だけ置いていくしかなかった・・・」


 「そう考えるのが自然だと俺は思うんだ・・・」


 「うーん・・・・」


 「そういや・・・俺達携帯も今持っていないし・・」


勇者Aとリンは最近自分達の携帯を解約し、通信費を削ってまで貯蓄に回していた。


 「会社の携帯は持っているけど、俺遠出してて圏外だったし・・」


 「連絡する手段なくて、手紙書くしかなかったのかもな・・」


勇者Aは携帯を持たせなかった事を悔いている。


 「で・・・リンが嫌になって家出したんじゃないのなら、用事を終えれば、すぐ帰ってくるって事か?どっしり待ってればいいのか・・?」


勇者Aの質問に軽く頷くものの、タケシは神妙な顔で何かを考えている。


(…とはいえ…心配な事には変わりは無い…)


(…そして、俺はあの時…ヒドラとの戦いに出向いた時)


(…リンさんがクノイチの格好に変身して、戦っていた事を知っている・・)


(…その姿になったリンさんの動きは、その辺の一般の人間の女が・・)


(…できるような身のこなしでは無かった…かなり訓練された動きだ…)


(…クノイチ…と今回のリンさんの行動から推測するに…)


(…クノイチの里がリンさんの生まれ故郷であって・・)


(…その里に何かがあったと考えるのが、セオリーだと思う)


(…しかし、これを勇者Aに話していいものだろうか・・・?)


 「おい、タケシ、どうしたんだよ・・・」


 「なんか、心当たりでもあるのか・?」


押し黙って考え込みながらも、時々自分をチラチラみるタケシに

勇者Aはタケシが何かを知っているような気がしてならなかった。


 「むう・・・・・」














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