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第31話「統一戦争-疑惑-」

兵士

『勇者様…、マリヴェロ様が…』


勇者

『マリヴェロがどこにいるか知ってるのか!?

おい、しっかりしろ!!』


勇者

「(兵士の情報によれば、この辺りにマリヴェロがいるはずだが…)」


息絶えた兵士の情報を元に

勇者はある島へと上陸していた


本島(ほんとう)の下の方に位置する小さな離れ小島


殆どが砂で覆われた砂漠のような場所で

勇者はマリヴェロの痕跡を探るーーー


ーーー


しばらく歩き、やがて遠くの方に数人分の黒い粒があるのを見つけ、そこまで走る


勇者

「マリヴェロ!!」


そこには数人の兵士達がまばらに立っており

中央奥に青黒い鎧を纏った騎士が立っていた


勇者は周りの様子を見て妙な違和感を覚えた


兵士達の様子が明らかにおかしいのだ


「ウッ…ウッ…」


顔中に血管を浮かせ、白目を剥いた兵士の口からは泡のようなものが出ており、俯きながら体をビクビクとさせていた


胸騒ぎを感じた勇者に一人の兵士が襲いかかる


「グアアッ!!」


兵士は剣を抜き、勇者目掛けて勢いよく振り下ろした


勇者

「な、何をする!?」


勇者が剣を弾き身をかわすと

他の兵士達も次々と剣を抜き、勇者の元へ走っていった


すると青騎士が手を横に挙げ、兵士達を制止する


「…神は片付いたのか」


勇者

「い、いや…」


「ならばなぜここにいる…」


振り返るその顔は血管こそ浮き上がり、肌も浅黒く、目の色も黒く変色していたが

マリヴェロその人であった


マリヴェロ

「お前の役目は女王の指揮のもと

兵士達と協力し、神を倒すことだ」


勇者

「そ、そうだが…色々とやる事が増えたんだ

それに女王ももう…」


マリヴェロ

「やはりな…、女王の見込み違いだった

お前にはこの国を背負う資格はない」


勇者

「?」


太陽が雲に隠れ、周囲を暗くする


マリヴェロはギザギザの歯を向けると

剣を強く握りしめ、勇者を鋭く睨みつけた


勇者

「マリヴェロ…?」


マリヴェロ

「良い機会だ、お前も十分に戦ってきただろう

そろそろ休暇を取っても良い時期じゃないか?

永遠に」


その瞬間、兵士達の咆哮が周囲に轟き

圧の風が勇者を突き刺す


マリヴェロは土を蹴り

勇者の方へ素早く飛び込むと

剣を振り下ろし、周囲に砂煙をまわせたーーー


マリヴェロの剣を抑える勇者


姿勢を変えて隙間を作り、マリヴェロから距離をとる


勇者

「な、なんなんだ?」


困惑する勇者に他の兵士達が襲いかかる


勇者

「ぐっ…くそっ!!」


勇者は兵士達の攻撃からなんとか逃れるも、

マリヴェロの追撃に遭う


勇者

「やめろ!!どうしたんだ一体!!」


マリヴェロ

「死ね!!勇者!!」


勇者の声は届かず、マリヴェロは剣をふりまわしてくる


勇者

「何が起きてる…あの姿は一体…!?」


勇者は何かを察し、()の石の力を解放し、辺りを見渡す


勇者

「地中に何かいる…!!」


兵士達の猛攻を振り切りながら

勇者は地中目掛けて剣を突き刺した


「プギュアアアッッ」


マモノの鳴き声と共に地中から何かが飛び出した

それは貝を頭にかぶった青いタコのような見た目をしていて

数本の足、よく見ると口からは糸を吐き

それらがマリヴェロ達の体に絡みついてるように見えた


勇者

「あいつに操られてるのか…!?」


勇者は急いでマモノを倒しに向かう

しかし兵士たちが行手を阻む


マリヴェロ

「ふんっ!!」


勇者

「くっ…!!」


マリヴェロが前に出て勇者はマモノを倒すことが難しくなった


勇者

「くそ、どうする…!!今ここで斬撃を放てば巻き添えは必至…!!」


勇者はマリヴェロを説得するため

声を荒げた


勇者

「しっかりしろマリヴェロ!!敵は向こうだ!!」


マリヴェロ

「俺の敵はお前だ、勇者」


勇者とマリヴェロは激しく剣をぶつけながら

地上へと降りた


マリヴェロ

「俺は今までずっと城のため国のため忠義を尽くし戦ってきた、幾多の死戦を乗り越え今の地位についた、誰よりも働いてきた

それをポッと出のお前なんかに」


勇者

「マリヴェロ…!!」


マリヴェロ

「わかるか?お前に…!突然現れた

訳の分からんやつに俺の積み上げた実績、キャリアは

あっさりと奪われたのだ」


「お前にこの惨めさが!!」


マリヴェロは歯を剥き出しにして

怒りの表情を向けた


マリヴェロ

「魔王討伐だと!?厄災だと!?支援だと!?

俺ごときではそいつらには太刀打ちできない

だからお前に任せろだと!?」


マリヴェロは再び剣を構え

勇者に斬りかかった


勇者

「マリヴェロッッ!!正気に戻れ!!」


マリヴェロ

「俺は十分正気だッッ!!」


勇者はマリヴェロの剣を必死に加減をしながら抑え、弾き距離をとった


「俺は初めからお前が気に食わなかった…!!

勇者という身分だけで持て囃されるお前が!!

何が勇者だ!!お前のような若造に重大な役目を取られ…どれほどの屈辱か…!!」


「いいや、俺だけじゃない

兵士たちはみなお前を(いぶか)しんでいる

いつも偉そうだ、何様だとな」


勇者は怪訝(けげん)な顔をした


「誰も口には出さなかった、大人だからな

…だが俺は違う」


「そもそもお前は誰なんだ?

一体どこから生まれた?」


マリヴェロは剣を掲げた


「全てが出来すぎていた

魔王復活に厄災に…勇者の誕生…

全て仕組まれた事だとしたら」


「お前の生まれも案外化け物由来かもしれんぞ

お前も厄災の一つなんじゃないのか?」


勇者

「僕が厄災だと…?」


勇者は歯を噛み締め剣を強く握りしめる


勇者

「ふざけるな!!」


マリヴェロは頬を上げ、邪悪な笑みを浮かべた


複数の兵士につかみ掛かられ、身動きが取れなくなる勇者


勇者

「くっ…!!魔物に近づけない…!!

加減の仕方がわからない…!!

でも、このままではやられる…!!」


勇者は考えに考えぬいた

結果


「…許せ!!」


と剣を勢いよく横に振った


斬られた兵士たちが一斉にその場に倒れ

勇者はマモノの方へ真っ直ぐと向かった


マリヴェロ

「勇者…!!」


マリヴェロが勇者の行手を阻む


勇者

「くっ…!!」


マモノはすでに地中へと姿を消していた

周囲にいた兵士たちが勇者の方へと走る


勇者は剣を地面に突き刺し

振動で波のように抉れた砂の塊で兵士達を弾き飛ばした


マリヴェロが剣を振るい、勇者を追い込んでいく


勇者は剣を弾きながら

もうダメだと悟り、剣をマリヴェロの方へと突き刺した


マリヴェロ

「ぐっ…!?」


勇者の剣がマリヴェロの腹を貫く


バタバタと倒れる兵士たち


マリヴェロは勇者の胸に持たれるように倒れ込み、一言


「すまない…勇者…」


「!?」


息絶えるマリヴェロに困惑した顔をする勇者

ふと向こうで兵士の唸る声がした


「うっ…ぐっ…」


見ると兵士が頭を抱えて苦しそうにしていた


勇者

「意識が…正気に戻ったのか!?」


勇者が駆け寄ろうとすると

兵士はおもむろにナイフを取り出し

自分の腹に当てた


「無念です…勇者様…!!」


「ま、待て!!」


勇者の叫びも虚しく、兵士は自身の腹を刺し

その場に倒れた


勇者

「くっ…!!」


勇者は後方に出てきたマモノに

振り向かず斬撃を放った


マモノは真っ二つに両断され、その場に倒れ息絶える


勇者は悔しそうな顔をしながら

周りを見渡したーーー


ーーー兵士達の墓を掘る勇者


全員分を埋め、祈りを捧げた後

静かに小島を後にしたーーー



統一戦争-疑惑-(完)

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