第30話「統一戦争-捜索-」
「勇者様って今何してんの?」
「さぁ?やばい怪物と戦ってるって話だけど…」
「女王もそいつにやられたって…」
「そう聞いたな」
「でも嘘だったんでしょ?厄災の件」
「あぁ、魔王も本当は弱かったって話だ」
「宣伝だったんだろ?勇者様の力を見せつけるための」
「本当は他のマモノと変わらないくらいで、城の兵士でも倒せたらしい」
「国ぐるみか」
「女王も本当は生きてるって噂だぜ」
「すっかり騙されたなぁ」
「うわ、勇者様だ…!!」
トボトボと町を歩く勇者を
民達は呆れたような目で眺めるーーー
「おおい!勇者!お前どこ行ってた!!」
一人の男が勇者に怒鳴りかかってきた
「この裏切りモンが!!」
驚いた勇者は咄嗟に否定する
勇者
「ち、違うんだ!聞いてくれ!
僕は真剣に厄災を治す手掛かりを探してるんだ」
「嘘をつけ!ならなんで、俺の娘は元気にならない!?」
「そ、それは…」
「あいつはお前の事を慕ってたんだぞ!!そいつをお前は…!!」
「……」
口籠る勇者は揺れる感情を抑えて男を宥めるように静かに返す
「…僕を信じてくれ」
「何も信じられねぇよ…何が勇者様だ、ペテン野郎が!!」
そう吐き捨てて男は睨みながら去っていった
それからしばらくして
勇者は若い娘に声をかけられる
「勇者様!私はあなたに紙とペンを渡しました!
こんな仕打ちはあんまりです…!!」
若い娘は悲しみを含んだ表情で必死にそう訴えた
勇者は何も答えられず
「あ…うっ…」と声を詰まらせてその場から離れようとする
娘をなんとか振り切り、人気の少ない通路を通ると店をたたむ女性が目に飛び込んできた
勇者
「(あの人は確か…僕に調理本をくれた店主の…)」
「今日はもう店じまいだよ」
「あ…あんた…!?」
女性は勇者を見るなり
顔を赤くさせて激しく怒鳴りつけた
「出てってくれ!あんたのツラなんか見たくないよ!」
「主人を…主人を返しとくれェ…」
途端に女性はその場にふさぎ込み、涙を流した
勇者は居た堪れない気持ちになり、そそくさとその場から立ち去ったーーー
学者
「神についてはまだ捜査中です」
勇者
「そ、そうか…」
城につき、学者に現状の確認を取る勇者
学者
「調べ終わるにはまだ時間がかかりそうです」
「マリヴェロ様はどうですか?」
勇者
「いや、これから探しに行くところだ」
勇者は現状を報告し、まずは森を探すことを提案した
学者は頬をあげて勇者を見送った
学者
「お気をつけてください」
勇者
「あぁ、行ってくる」
勇者はどこか安心した気持ちになり、城を後に町へ戻ったーーー
「一連の話、勇者様は否定してるらしいよ」
「事実なのに?」
「火消しに必死だな」
「見てらんねーよ」
「女王もグルだったんだろ?」
「自分で蒔いた種なんだから責任くらい持てよ」
「ははは、マジそれな」
町では相変わらず勇者の陰口で持ちきりだった
「国を治めるお方が、民を騙すなんてつくづく情けない話だぜ」
勇者
「なんだと…!?」
「ひっ!ゆ、勇者様…!?」
女王の悪口を言われた勇者は思わず怒りを露わにするも
民達の反応を見て咄嗟に冷静さを持ち、その場から離れた
「こ、こえ〜…殺されるかと思った」
「勇者様ってあんな短気な人だったんだ…」
「人の目してなかったぞ」
「俺たち今まであんなの慕ってたのかよ」
「やばいなあいつ」
勇者は聞こえないふりをして、森へと向かったーーー
ー
森へ着くと、勇者の元へ小さな光
妖精が近づいてきた
勇者
「お前か…、元気そうだな」
妖精は何度も飛び跳ねる動作をし、勇者がきた事を喜ぶような姿勢を見せた
村へ着くと早速マリヴェロについて聞き込みを開始する勇者
村でも勇者の話は密かに行き届いており、ヒソヒソと話す者もいたが、勇者の実力を知ってる者もいたためその人達は積極的に協力してくれた
しかし情報は中々集まらず、勇者は苦戦を強いられた
ある小屋の付近を通ると
近くにいた子供が勇者の顔を見るや否や
怒った顔をしながら近づいてきた
「おい!お前!!なんで早く厄災を倒してくれなかった!!」
子供は悔しそうに唇をかみながら
必死に訴える
「お前がとっとと厄災を倒してくれないから!!」
勇者は何も答えられず静かに目を逸らした
「カーチャンを返せ!!」
怒った妖精が子供に突っかかった
「う、うわっ、なんだよこいつ…!!」
子供は手をバタつかせて
妖精をはらいのけようとする
拍子に妖精は子供の手に当たり、地面にベチャッと叩きつけられる
勇者
「!?」
勇者は咄嗟に体が反応するも
その直後、子供は妖精を強く踏みつけて
グリグリと足を動かし、しばらくしてからようやく足をどけた
妖精はあっという間にぺしゃんこになり息絶えていた
勇者は何が起きたかわからず
しばらく目を見開いて固まっていたが
すぐに現状を把握し、その瞬間ありとあらゆる気持ちや感情が体の中から込み上げてきて
それは激しく子供の方へと向けられた
「ひっ…な…なんだよ
お、お前が悪いじゃんか…」
「カーチャンを…」
勇者は「フーッフーッ」と息を必死に殺しながら、唇を噛んで拳を作り強く握りしめた
子供はそのあまりの気迫に物怖じし、目から涙が漏れ出ていた
勇者は妖精の亡骸を優しく、崩れないように拾い上げると静かにその場から立ち去ったーーー
勇者は土に亡骸を埋め、山を作りそこに石を刺した
勇者は虚な目をしながら
ふとつぶやく
「ごめんな…」
勇者は立ち上がり、マリヴェロ探しのため次の目的地へと向かったーーー
ー
「勇者様、お久しぶりです」
潮水の音が響く海の村で
勇者を出迎えたのは
かつて魔王討伐のヒセキ集めの際に出会った妊婦とその旦那だった
勇者
「子は無事に産まれたか?」
「あのあと、彼と話し合いをして…」
「勇者様が去った後、なんとなく察したんです
もうダメなんだと…」
女性はペタッとなったお腹をさする
勇者
「あっ…」
勇者は何かを悟り、静かに頭を下げた
勇者
「すまない…力及ばなかった…」
「いいえ、あなたは何も悪くありません
全ては厄災のせいなのです
あんなものがいるから…私達は…」
「勇者様、我々はあなたの味方です
誰がなんと言おうとあなたは紛れもない村の恩人だ、それだけはどうか忘れないでほしい」
勇者はそれを聞いてどこか気が楽になったと同時に何かが頭の中でグチャグチャとした感情に見舞われ、複雑な気持ちになったーーー
勇者
「(バカみたいだな…)」
その後火山や砂漠も見て回るが
マリヴェロの痕跡は結局掴めず
勇者は一旦城へと戻ったーーー
ー
「あいつマジきめぇよな」
「おいやめとけって、殺されるぞ!」
「前からあいつおかしいと思ってたんだよ」
「目がいってるよね」
「暴力を行使するのはやめてほしい…
ただでさえアタシらより力あるのに…」
「イカれてんだあいつは」
「民を守るのがお前の使命だったはずだろ」
「私、勇者様生理的に無理かも〜」
「わかる、マリヴェロ様の方がかっこいいよね」
「俺は見たんだ…厄災騒ぎの最中あいつ、奴らと呑気にダンスを踊ってた…俺たちがこんなになってるのに…」
「あの人は、私達の子を助けてくれなかった…」
勇者
「……」
学者
「あ、勇者様!!」
聞こえてくる声を聞き流しながら
城へ戻ると学者が慌てた様子で声をかけてきた
学者
「今調べ終わりました、全て分かりましたよ神の事が!!」
勇者
「…っ!!」
学者
「見てください」
学者は本を広げ、勇者に読んでみせた
「ハザマ族にまつわる伝承
この世には人間、部族、マモノの他にもう一つの形態が存在する、それは我々のいる場所とは異なる別の空間、ハザマに生きる生物達」
「我々の世界を覗き、我々の活動、生態を見る事ができ
さらに我々の言葉や感情、仕草、考えを真似ることもできる」
「未来や過去をそれらは予知することもでき
まさに我々が"神"と呼ぶに近い存在である」
「彼らは強大な力を持ち、この世界を簡単に破滅させることもできる、本来ならば極めて危険な存在であるが性格は温和で心優しい者が多い
我々は彼らと協力し、共存していかねばならない」
「ガウス、カジャ、ニタ、
これら三匹のハザマ族は特に我々に好意的であり、強大な力と英知をお貸しくださる
この先大きな災いに直面した時
我々人類にとって巨大な糧となるだろう
彼らを決して怒らせてはならない
彼らが天に登ればこの世界には破滅が待っているーーー」
学者と勇者は真剣な面持ちで本を見つめていた
勇者
「そんな…」
学者
「この情報が確かなら、神様が天に登る理由も明らかですね、既に二匹は登ってしまった
残りは一匹…」
勇者は項垂れ、壁にもたれてズルズルと下に下がった
勇者
「なんだったんだ…今までのは…」
勇者の目には光が消え、すっかり疲弊してしまう
学者
「しっかりしてください、勇者様!」
学者はしゃがみ込んだ勇者と視線を合わせ
必死に説得した
「まだ時間はあります、神を倒せるのは
勇者様しかいません」
「女王様や死んでいった方達のためにも
今は、今だけは…」
勇者は女王の顔を思い浮かべる
勇者
「そうだ、そうだな…すまない」
勇者は学者の手を取り、ゆっくりと立ち上がった
勇者
「まずはマリヴェロだ、本の通りだと
もしかしたらこの話も奴には聞こえているのかもしれない
何かあったらすぐに僕に知らせてくれ」
学者は少し悲しんだ顔をしながら
コクっと頷き、勇者を優しく見送ったーーー
勇者
「ーー仕切り直しだ」
外に出た勇者は頬を叩き、色々な感情を胸にまっすぐと歩みを進めたーーー
統一戦争-捜索-(完)




