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夢の世界より  作者: ていきょー
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西暦2024年2月 お前へ

お前、俺がお前であることを忘れてないか?

俺だって散々泣いた。涙が枯れるんじゃないかと思うくらい。

ロスにいる肉体保護機、医療ポッドの水分補給アラートがけたたましくわめくくらいにな。

毎日毎日、そりゃもう多分、一生分くらい。確認してないが南極にいるお前もだと思うけど。


約1か月弱経ったけど、嫁のその病は先天性で

どうあがいてもこの年で終わりを迎えてしまう。


どんなに医療ポッドで体の時間を戻してもダメ。

それを繰り返すことに麗美は意味を感じなかった。


それよりも、その身の魂をまた新たな未来にささげることを選んだんだ。


キラキラと美しかったあの時、あの瞬間を噛みしめて、

きっと感謝の気持ちで旅だったに違いない。

そう思いたい。


魂は唯一無二、絶対に消えない。この世界に永遠に残る。

形や、状態は変わるが、しかし彼女が懸命に生きた記憶は関わったあらゆる原子分子にしみついて

彼女が生きたその時代、その事実は、人の記憶だけでなく運命の線の上で永遠に残る。

そして懸命に生きた末に昇華した魂はきっと、また別の概念で形作られた世界でのんびりしてることだろう。


まるで赤ん坊のように、毎日がふわふわと、ゆっくりと進む時間の中で・・・

・・・とにかく、幸せであってほしいな。


神はこの物理法則の中で生まれた奇跡ともいうべき個々が生むその運命、

事実の線を欲している。


そうやって太古の昔から、生命の精一杯生き抜いた、一瞬だが長くも感じるその一生が

この過去という名の運命を紡いでいる。


その法則や真理の中できっと麗美の魂は昇華して

他の、どっかの世界で散った下位の世で活躍した魂をこちらに招き入れたに違いない。


どうか、この死が何かの意味を持ち、永遠に朽ちることの無いよう、願うばかりだ。


だめだだめだ。無限にポエムしてしまう。

・・・それはそれとして、

俺らは俺らの課題があるだろう?


キューブ襲来という難題が。


麗美は儚くも散ったけど、きっとそれは彼女の望んだ結末だ。

しかしゴールドの襲来によって、それはそれは悍ましい、理不尽で、やるせない

そんな望まぬ結末になってしまう生命が多数出てきてしまうかもしれない。


だから、俺たちがやってやろう。

俺たちも悔いのない人生を送ろう。

麗美とまた、上の世界で笑って再会できるようにさ。

麗美だけじゃない。ご先祖様全員な。きっとあっちにいるから。


お前と同じように、やれることは全部やろう。

地球の生命がやりたいことを全部やれるように、

悔いのない一生を守るために。堂々と、彼らに顔向けできるように、正々堂々と。

麗美と同じくらい、日々の感謝の気持ちも忘れずに。


ただ、目の前にあるできることを全力でやって、がんばるしか

結局のところ生き物ってやつには生きる道がないんだよ。

どんなに悲しい出来事があったって、な。


まずは人類の間で起こりつつある戦争を阻止しよう。

トラ〇プさんはまだくすぶってるけどあの人にちょっと頑張ってもらわねばな。

イーロン・マ〇クさんにも入ってもらって、ス〇ス銀行も巻き込もう。味方は多い方がいい。


ペリロイドの構築ももうすぐ終わりそうだ。

あとは人類をどう説得するか。

あと、キューブがどんな様子なのかも調査が必要だ。


まるで水の粒ように微小な個体だったなら、事は厄介極まりない。

完全な物理障壁など存在しないが、それでも完全に近いその構築も進めなければならん。

その為にゼムの元へ説得へいくぞ。時間はあるようで有限。俺らも、時間が無い。


彼らの歴史は把握した。

そして共闘のシナリオは既にできている。

あとは言語の壁、コミュニケーションの仕方をどうするか、だ。

彼らの意思疎通方法は難解も難解。


人間の言葉は音だが、彼らには人間のように器用な発声器官が無い。

どうやら、その赤い目から赤外線のようなものを出し、人間の生身では観測できない

波長をダイレクトに受けては返しで会話をしている、ということが分かってきた。


彼らのコロニーを纏ったバリアーが波動を通すのには、そういう理由があるのだろう。

もしとある個体がバリアーの外にでても、意思疎通だけは阻害されないようにしている、という事情に違いない。


あとはその波長によって彼らのがどのようにそれを感じ取り

どのような感情を抱くのか、これを理解するのが難解だ。


もう少し観察が必要だ。

そしてその波長をとらえる感覚器官の代わりとなる機械が必要だ。


暴れている個体、穴掘りの仕事を脈々と続ける個体、分裂直後の個体

様々な感情があふれているに違いない。

その場に居合わせながら、彼らの意思疎通の表現、「波長」のサンプルと、

その波長に対する反応がもっと欲しい。


あとは、ジェスチャーだ。


Yesはおそらく両目の瞬き、Noは片目の瞬きだろう。

あと片手拳で自分の額をこつこつと、すれ違う際に叩くあの仕草は

挨拶のようなものだと思う。


そういう一つ一つの所作をサンプルにして、理解して、機械に組み込むのだ。


説得はそれからだ。

丁重に扱えることさえできればきっと協力してくれる。

彼らの文化的に強さが全てだった時代もあった。

だから、ねじ伏せるという手もあるにはあるが、俺たちは人間であって争いや虐待は好まない。


もう少し、時間をかけよう。

時間はないが、俺らは幸いにも時間を操れる。

小規模な時間移動なら寿命を気にせず利用できる。


とにかく、やれることをやるだけだ。鉄平。

協力してくれよ。ダーツとか酒ばっか煽ってないで。


そうだよ。ダーツ仲間も増えたんだって?それはいいことだと思う。

生きがいは、あるべき。

いかに充実した人生を送れるか。短い一生の中でどれだけ充実した時間を長く過ごしたか。

本当にそれが最も大事なことだ。第一に優先してほしい。俺もそのつもりで、今日まで生きている。


鉄平の仲間たちに感謝。支え続けてくれた麗美に感謝。

別の世界から来た、麗美を長年守って去っていった別の麗美にも感謝。

ロスにいる俺の体を監視してくれているハルマ君にも感謝。


感謝の念があれば大抵のことは乗り越えられる。

最悪最後の時が来たときに、「精一杯頑張った」という気持ちで、散ることができる。


・・・だから、まあ、楽しんでいこうぜ。鉄平。

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