西暦2023年7月1日
久々に、あの夢の世界にたどり着くと、その囁きで謎の言葉が耳にダイレクトになだれ込んできた。
誰も俺の寝室にはいないはずなのに。
暗いあの空間で、耳元で知らない言語をささやかれる恐怖。わからないことへの恐怖は、深い恐怖を感じさせる。その声のトーンも、まるで人とは思えない、100人が声をそろえているような、声というより機械音か、とにかく異様なものだ。ぎりぎり、コミュニケーションのための言語のように聞こえる。
あの暗くて殺風景な空間でその声ばかりがダイレクトに、延々と耳元で囁かれるのだ。
普通の人はここで「だれっ!?」とか「やめてっ!」とか、恐怖の夢ということで苦痛に耐えて終わるだろう。そう、経験した人は知っていると思うが、金縛りにあったときに聞こえる怖い音、声に似ているかもしれない。ゆがんだ音のような声。そんな音を聞いても、今の俺はうろたえない。
南極の地下施設「ES」にある、もはやどんな仕組みか聞いてもよくわからない技術で作られたサーバーと連動して音声翻訳機能が自動で意識の中に立ち上がるので、こういう場面ではこれが夢であっても黙る習性がついている。
南極の地下施設にあるスーパーコンピューターと連動している状態は夢の中でも機能する。自然に夢でも脳と連結された翻訳機能は、それほどまで普段から生活に無意識に浸透している。
ただ、今聞いているこの音(?)でその機能は不要だった。明瞭な外国の言語とは大分違う。言葉には表現の限度があるがこの音にはもっと広いニュアンスや感情が詰まっていた。感情が直接脳になだれ込むような、そんな音。表現できないほど、これこそ筆舌に尽くしがたいというものだ。
どうやら俺に話しかけているわけではなく、誰かとコミュニケーションをとっているようだ。
「こいつは危ないかもしれない。座標■■■■にある星(絵的に多分地球)に、変異者がいることが観測され、それが確実になった。奴の能力が本物なら捕まえるのは困難だ。そしてなにやら、増殖している。」
「・・・」
静かに、じっとその会話を伺う。
「どうやら全ての変化を戻せる(タイムトリップ)らしい。パラレルワールドの増殖が後を絶たない。??が何をしだすかわからぬ。食い止める必要があると思うがどうか?」
「同意だ。そして何やら、この会話の観測数も1つや2つではない。また今も1増えた。古典的な方法だ。こちら側の管理者の存在もただのおとぎ話ではないことが明らかになるのは時間の問題かもしれない。先手を打つつもりが、気づかれてきている可能性がある。しかし、このゆっくりとした増え方には疑問が残る。あの星はまだ原始生物しかいないはずだ。何かの古典的なインタフェースでも開発され、情報共有を図っているのだろうか?」
「観測数が少ないのは■■■(?)でも測れない共有技術でもし我々が想像しているよりも技術発展があるのなら、事は甚大だ。早急に対処しなければならない。今送り出している回収機(パチンコ玉みたいな球体?)が破壊されては損失が大きい。奴らは瞬時に二ビルにまで到着しているというのだ。おそらくパラレルワールドの増殖と瞬時に移動しているということは時間を操作しているに違いない。あの畑(星?)の管理者からの意見はどうだ?」
「あの星を蔓延る生物(多分絵的に恐竜)を刈り取った後、管理が甘くなっていたのは否めない。あの星に安置している、おとぎ話のロボットを起動させて様子を見るとしよう。」
文字にすると長くなったが、これくらいの会話情報が、わずか20秒ほどで脳になだれ込んできた。
管理者、そのロボットの姿は知っている。地球の管理者であるエロヒムだ。回収機という球体はサイズ感が分からない。地球=畑。
今夢から覚め、急いで忘れぬうちにメモをした。
まだ眠い。考察はまたにして、今日の日記はここまでにする。




