選考会
四市対抗のモバフォー大会についてグライダーを送ると、返事はすぐに返ってきた。
というか、どの領主も馬に飛び乗って翌日にはルガンダにやってきてしまったのだ。
はからずも四領主が一堂に会し、話し合いを持つことができてしまったのである。
領主らの意気込みを見れば、話し合いがとんとん拍子で決まったことは想像に難くないだろう。
結果以下のことが決まった。
今後、大会は年一回行い、会場はルガンダ、ベッツエル、バラスト、トスケアの順で開催する。
各都市につき五名の代表者でチームを作り、リーグ戦を行う。
第一回大会はルガンダで行う。
大会は一か月後ということになり、それぞれの領主はさっそく準備に取り掛かることになった。
俺も忙しくなるぞ。
まずは代表者の選考をしないといけないな。
さっそく代表者選考会のチラシでも作ってみるか。
季節は秋だというのにレベルアップに伴って店舗に冷凍庫が登場した。
中にはアイスクリームやあんず棒が冷やしてあるのだが、季節の割にこれがけっこう売れている。
ダンジョンにはやたらと暑いエリアがあるのだが、そこへ行く冒険者が買っていくのだ。
「途中でとけてしまわないの?」
棒付きアイスを三本も買ったメルルに訊いた。
「アイスを凍らせる氷冷魔法くらいならミラが使えるから問題ないよ。暑い場所で食べるホームランバアバが最高なのよね」
攻撃魔法は使えなくても、ちょっとした心得さえあればアイスクリームの保冷は可能らしい。
商品名:ホームランバアバ
説明 :ミルクアイスクリーム。
食べると会心の一撃が出やすくなる。効果は半日持続。
値段 :50リム
ヘルメットをかぶり、バットを担いだおばあちゃんが目印のアイスクリームだ。
「さーて、今日も元気に稼ぐとしますか。……あっ!」
メルルが小さな叫び声を上げた。
「どうした、忘れ物か?」
「そうじゃなくて、あれ」
メルルは壁に張った手書きのチラシを指さしている。
四市対抗モバイルフォース大会の開催が決定!
五名一チームによるリーグ戦が行われます。ルガンダでも代表選手を決めるべく選考会を行うことになりました。我こそは! という方はぜひご参加ください。詳細は店主にお問い合わせを。
「ユウスケさん、あれは……」
「読んでもらったとおりだよ。まあ、ちょっとしたお祭りみたいなもんさ。メルルも参加するかい?」
「やる! 今度こそ私とレッドショルダーの名を天下に轟かせてやるんだから」
「おうおう、その意気だ。近いうちに代表選手の選考会をやるから参加してくれ。仲間にもバンバン広めてくれよ」
「いよっしゃあ、今日から特訓だぁ!」
メルルは勢いよく出て行ってしまった。
円形劇場のような闘技会場がミシェルの土魔法で作られた。
細かい飾りなども美しく、ずいぶんと凝った造りになっている。
「これだけのものをたった十日で作ってしまうなんて、相変わらずミシェルはすごいな」
「他所のお客さんも来るんだよ、ユウスケに恥をかかせられないもの。とりあえず闘技場は完成したけど、観客席の方はこれからさらに手を入れるね」
ミシェルのおかげで盛大なお祭りができそうだ。
闘技会場ができたので、さっそく住民による代表選手選考大会を開催した。
寒い日だったのでシチューの振る舞いをしたり、行商人のヨシュアさんが露店をだしたりで、ちょっとした村祭りみたいになった。
ほとんどの住民が仕事を休みにして参加したくらいだ。
代表選手はトーナメント方式でベスト16を選び、そのベスト16でリーグ戦を争ってもらった。
そして出そろったのがこちらの五名だ。
元三億の賞金首にして、呪いの魔女、スーパーヘビー級ヤンデレ、ミシェル。(キャン)
流刑の元王妃、反省した悪女、ティッティー。(ジュジーオング)
チーム・ハルカゼのリーダーにして当たりクジに最も縁遠い女、メルル。(ザコⅡ改)
ルーキーの兄貴、ガルム。(ググレカス)
ほんわか魔術師、ミラ。(ドーム)
こうしてみると全員が違う機体を使っているんだな。
まあミシェルは順当だし、ティッティーもミシェル以外には負けなかった。
あの二人がルガンダのツートップだな。
「ちょっと、ユウスケ。ティッティーが大会に出るのはまずくない?」
ミシェルが心配している。
「どうして?」
「だってこの子は犯罪者よ。それが代表選手なんて外聞が悪いわ」
それを聞いたティッティーが即座に言い返していた。
「なによ、追放されたことで過去の罪状は問われないのよ。それに!」
「それに、なによ!?」
「私だって……少しはヤハギの役に立ちたいの。ヤハギは私とマルコを助けてくれたんだもん、いちおう恩は感じているんだから……」
「それは……まあ、そういうことなら……」
どうやら今回の姉妹喧嘩は不発に終わったようだ。
ティッティーがそんなふうに考えてくれていたなんて意外だな。
でも、頑張ってくれるのならそれでいいや。
「ミラは大会に出るのかい?」
「そうよ、マニさん。私とドームを応援してね」
こちらではマニさんとミラがのんびりと会話をしている。
戦いの緊張感は皆無だ。
まるで縁側に座った、おじいちゃんと孫の会話だな。
マニさんは特にミラを可愛がっているから、愛情がにじみ出ている感じだ。
「そうか、そうか、ミラは頑張るんだな。よ~し、ならば儂も応援してやろう。とりあえずドームの機体をマグネットコートしておくか……」
「ちょっと待った!」
聞き捨てならないセリフを聞いたぞ。
「なんじゃ、ヤハギ? 儂はミラのドームをちょこっと改造するだけじゃぞ」
「それは不正行為だよ。本大会で機体の改造は認められないんだ」
「ならばジャイアント・バズーカを授けよう。これなら機体の改造ではないから……」
「それもダメ。飛び道具は禁止です」
「胸部に拡散ビーム砲を仕込むくらいは……」
「それも、ダメ」
あれもこれも禁止にしたら、マニさんは拗ねてしまった。
「なんじゃい、サイキック・フレームやファンネルスを与えるわけじゃないっていうのに……」
たまに正気を取り戻すととんでもないことを言いだすな。
「ユウスケさん、駄菓子を食べるのはいいの? 試合の前にラムネを飲みたいんだけど」
メルルが質問してきた。ラムネを飲めば魔力循環が整うので、機体の制御が楽になるのだ。
「それはかまわないよ。他の地域の選手も店のお菓子を食べるだろうからね」
そもそも売り上げを伸ばすのが目的なのだ。
駄菓子を売らないという手はない。
全員が能力アップのお菓子を食べるのなら不公平にはならないだろう。
「ではわしがミラに可変モバイルフォースを……」
「だからダメだって!」
「若い者はすぐに年寄りを虐める」
「いやいやそうじゃくてさ……」
本格的に落ち込んでしまったマニさんをなだめるのが大変だった。




