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駄菓子屋ヤハギ 異世界に出店します  作者: 長野文三郎
第三部

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コースを持つ者こそが神なのだ


 早朝に一軒家型店舗を訪ねると、マニさんは座敷にぼんやりと座っていた。


「おはようございます。よく眠れましたか?」


「うん? お前さんは誰じゃったかいな?」


 朝からこれか……。


「ヤハギですよ。自覚はないですけど、商売神の加護を受けているらしいヤハギです」


「えっ、兄ちゃんなのか!? エルメラ兄ちゃん、若返ったな!」


「そうじゃなくって……」


 俺を見つめていたマニさんが目を見開いた。


「おお……、ヤハギは商売神エルメラの加護を受けておるな。あれは儂の兄ちゃんだ。儂らは仲が良いのだぞ。エルメラ兄ちゃんの秘蔵っ子なら、儂にとっても甥っ子みたいなものだ。お主を庇護してやらんとな」


 昨日と同じことを繰り返しているぞ。

この様子では明日も同じような朝が始まるかもしれない。

それも仕方がないことか。

のんびりと付き合っていくとしよう。


 神様にご飯がいるかどうかわからないけど朝ご飯を食べさせてあげた方がいいかな?


「マニさん、お腹は空いてませんか?」


「うんにゃ、腹は減っておらん。どういうわけかお腹はいっぱいだ。何か、食ったのかの?」


 焼きそばを食べたことも忘れているようだ。

まあ、食べたくないのなら放っておくか。

神様なんだから朝ご飯を抜いたって平気だろう。


「それじゃあ、自分は仕事に行ってきます。くつろいでいてください」


「仕事?」


「ダンジョン前で露店を開くんですよ」


「ほうほう、ならば儂もついていこう」


 老人の外見からは想像できないほどすんなりとマニさんは立ち上がった。



 冒険者はみんなダンジョンへ潜っていったが、店先にはまだ客がたむろしていた。

いつもはナカラムさんについて働いている子どもたちだが、今日は休みをもらっていたのだ。


「お~い、そろそろ店じまいだぞ」


「え~、もうちょっといいでしょう。お願い、ヤハギさん!」


「仕方がないなぁ」


 この世界の十二~十三歳は成人と同じように扱われる。

ルガンダでは重労働などを課すことはないが、彼らも日々の糧を得るために一生懸命働いているのだ。

とは言え、まだ遊びたい盛りだろう。

今日くらいは思う存分楽しませてやろうと思った。


「仕方がない。今日だけだからな」


「いよっしゃあっ! なあ、モバフォーの試合をしようぜ。勝った方が10リムガムをおごるのな」


「受けて立つ!」


 賭け試合はご愛敬あいきょうだ。

冒険者たちの間でもこういったやり取りはしょっちゅうなので、子どもが真似するのもいたし方ない。

さっそく始まったモバフォーの試合にマニさんは目を細めている。

この手の仕掛けが大好きなようだ。


「どれ、見物してくるかのぉ」


 ニコニコと試合を見守るマニさんだったけど、調子の悪いモバフォーを見つけると調整などをしてやっていた。


「スゲー! じいちゃんがちょっといじっただけで動きがスムーズになったぞ。ありがとう」


「じいちゃん、俺のグフフも診てよ!」


「俺のガンガルフも!」


 すっかり人気者である。

そのうちに一人の子どもがお菓子を取り出した。


「じいちゃん、お礼にこれを一つ上げるよ」


 あ、あれは!


 商品名:そのままブドウ 三個に一個が超すっぱい!

 説明 :三粒に一つがすっぱいブドウ味のガム。

     すっぱいガムを食べると、感覚が研ぎ澄まされる。

      友だちとシェアして楽しもう!

 値段 :30リム


 あれのすっぱさは尋常じゃない。


「気を付けて! それは――」


 注意したけど遅かった。

ガムを口に入れたマニさんがうずくまって悶絶している。

見事に当たりを引いてしまったようだ。


「大丈夫ですか?」


 神様とはいえ老人には刺激が強すぎただろうか? 

心配して様子を見たのだが、立ち直ったマニさんはカラカラと笑い出した。


「ホッホッホッ! おもしろい! 実におもしろいぞい。久しぶりに声を出して笑ったわい」


 子どもたちと一緒になって笑っているマニさんを見て安心した。


「いや~、こんなに笑ったのは百年ぶりくらいじゃ。うん? いいものを思いついたぞ。ホイッ!」


 掛け声をあげると、マニさんの手がまばゆく光り出した。

そして現れたのは手のひらサイズのおもちゃだ。

あれはっ!?


「子どもたちにこれをやろう」


 どうみても自動車の模型じゃないか。

まさか……。


「おじいちゃん、これはなに?」


「儂がつくったマニ四駆じゃ!」


「おいっ!」


 思わず神様にツッコミを入れてしまった。

だって、どっからどう見てもこれはミニ……。


「儂が創ったオリジナルホビーじゃ。何か異存でもあるのかの?」


「いえ、そんなことは……」


 ここは日本じゃなく異世界だ。

アレに激似とは言え、多くは語るまい。


「ホッホッホッ、さあ子どもたちよ、それを動かして遊ぶのじゃ」


 マニさんが袖を振ると地上からコースが現れた。

さすがは神様だ。

うん、俺の子供時代もミニ四駆コースを持っている同級生は神扱いだった!


 喜んで遊ぼうとした子どもたちだったが、ここで首をひねり出した。


「ねえ、どうやって遊ぶの?」


「もちろん走らせてスピードを競うのじゃ」


「でも、動かないよ」


「なんじゃと?」


 マニさんは機体を受け取ってひっくり返す。


「んお!? エネルギーパックの入るところが空っぽじゃ……」


「だったらエネルギーパックっていうのを入れてよ」


「う~ん、そうじゃのぉ……」


 マニさんは腕組みをして考え込んでしまっている。


「どうしたんですか?」


「作り方を忘れてしもうた……」


 おやおや。


「ふ~む、どうしたものかな……」


 がっかりする子どもたちを救ったのはミシェルだった。


「ひょっとしたら私の研究が役に立つかもしれないわよ」


「ミシェルの研究が?」


「覚えていないの? 私は魔力を溜めておくオーブを研究していたのよ」


 そうだった! 

ミシェルならエネルギーパックを作り出せるかもしれない。


「ねーちゃん、早く作ってよ!」


「うんうん、早く、早く!」


「仕方がないわね、試作品はいくつかあるから、マニ四駆に合うように出力調整をしてあげるわ」


 ミシェルが持っていた小粒のオーブを入れると、マニ四駆は元気よく動き出した。


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[一言] あれ? プチ四駆じゃなかったっけ?
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