魔法
ダスクが目を覚ますと、空は相変わらず闇の色に染まっていた。
「あ、目が覚めた?おはよう」
「よっ、おはよー」
ノッテもソワールも先に起きていたようで、昨日食べた肉の余りを焼いているところだった。
「おはよう。まだ空は暗いけど…一応もう朝なんだよね?」
「ええ、そうよ。というかもう昼くらいかしら。昨日は寝たのが遅かったから、その分寝る時間も多く取ったの」
「おう、その分今日はこれを食ったらすぐ出発するらしいぞ。できれば急ぎたいらしいからな」
「わかったよ」
そうこう話しているうちに肉が焼けたらしく、ソワールが肉をこちらに渡してくる。
それを受け取って早速かぶりつく。
昨日と同じ肉だがなにか調味料でも使ったのか、味が昨日と違った。
食べ終わるとノッテはさっさと火を消して、立ち上がった。
ダスクとソワールもそれぞれの武器を手に取って、ノッテに続く。
そして、3人は聖都オーブに向けて歩き出した。
「そういやさ、昨日言ってたけど魔法教えてくれるんだろ?魔物も見える範囲にはいないっぽいしさ、早速教えてくれよ!」
歩き出して少し経った頃だろうか、ソワールが声を上げた。
「そうね……しばらくは安全そうだし、いいわよ」
「よっしゃ!俺こういうものにずっと憧れてたんだよな、なんかかっこよさそうじゃん!」
「そういえば村にいたときも村長に錬金術の話何回も聞いてたね……」
ダスクの脳裏に、目をキラキラさせながら村長の話を聞くソワールの姿が浮かんだ。
「ふふっ、そうなのね。じゃあ教えるわよ?まずこの世界の魔法はね、一般魔法と創造魔法の二種類に分類されるの」
「その違いは?」
「一般魔法は、誰でも使える魔法で、誰が使っても大体同じ効果を発揮する魔法よ。創造魔法は、創った本人しか使えなくて違う人が使おうとしても使えないか、違う効果になる魔法のことね」
「ふーん……昨日とか今日とか使ってた、光とか火とか出す魔法はどっちなんだ?」
「あれは一般魔法よ。そういうわけだから、私が教えるのは一般魔法の方になるわ」
そういうとノッテは何語なのかわからない言葉をつぶやく。
そうするとノッテの肩のあたりに宙に浮かぶ光の玉が現れた。
「おお!昨日も見たけどそれが魔法か……でも、なんて言ってるかわかんねぇ。俺たちにもできるのか?」
ソワールが不安そうに尋ねる。
「うーん、こればっかりは……どうしようかしらね。これは私たちの大陸の魔法言語なんだけど……」
「魔法言語ってことは、その言語で言わないと意味がないの?」
「必ずしもそうってわけではないわ。魔法に必要なのは、イメージと、そのイメージにあう詠唱と、込める魔力だから。ただ、魔法言語だと魔力消費の効率がいいのよ」
それを聞くと、ソワールが嬉しそうに声を上げる。
「おお、じゃあ俺たちの世界の言語でも大丈夫ってことだな!」
「あれ、そういえば今更だけどなんで言葉通じるんだろう?大陸……というか世界が違うんだから言語が違うのが普通だよね?」
ダスクが首をかしげる。
「ああ、それはこの大陸の共通言語のおかげだと思うわ。この大陸で話される魔法言語以外の言語は、すべて話してる本人の言語に聞こえるの。だから違う種族同士でも会話ができるのよ。」
「へー!すごいな。それも魔法か?」
「これはよくわかってないわ。巷では女神の力じゃないかっていわれてるけどね」
「女神?」
「女神スリール。この世界で信仰されてる神様で、この世界を創ったとされてるわ」
「ふーん……俺たちのいた世界でもそういえば宗教ってあったな。まぁ、俺たちは辺境の村に住んでたし宗教観は薄いんだけど」
「そうなの。こっちでは、神様といったら女神スリールよ。国や政治にもかなり影響を与えてるから、気を付けるようにね。……さて、それじゃあ魔法の練習に戻るわよ。まずは魔力を感じるところから。それができないと、魔法は使えないわ」
「ふむふむ。それってどうやってやるんだ?」
「自分の内側に気を向けてみて。そうすると、暖かい気を感じない?」
ダスクとソワールは歩きながら試してみる。
そうすると、かすかだが暖かい気を感じることができた。
「うん、なんか自分の中に何かがある気がする。これが魔力?」
「そうよ。それを意識しながら、今度は使いたい魔法をイメージして。そして、そのイメージに合った詠唱をすれば魔法が発動するわ」
「イメージ……イメージ……」
悩んでいるソワールを横目に、ダスクは頭の中でノッテの近くにあるような光の玉を思い描く。
「光よ」
そして、そう一言つぶやいた。
そうすると、体の中から何かが抜け落ちるような感覚と同時に、目の前にイメージした通りの光の玉が現れた。
それはふよふよと浮いていたが、3、4歩歩くとすぐに消えてしまった。
「あ……できたけど、消えちゃった」
「イメージが足りなかったか、込めた魔力が足りなかったかのどちらか、ね。でも初めてでここまでできたんだからすごいじゃない」
「そうだぜ!俺が悩んでる間に1人で成功しやがって……俺もやってやる!光よこい!」
ソワールがそう叫ぶと、ソワールの前にダスクが出したよりも少し大きな光が現れた。
ただそれは形を持っておらず、ただそこで光っているという感じだ。
それもダスクのだした光と同じく、少しすると消えてしまった。
「どうだー!俺にもできただろ!……ちょっと2人と形は違うけど!」
「ふふ、そうね。でも2人とも上出来よ。これから練習すれば、もっとうまくできるようになるわ。……でも、魔力には限りがあるから過度な練習はしないようにね」
「おう!わかったぜ!」
「わかったよ、でも早く上手にできるようになりたいなぁ」
それからの道のりでは、ノッテから制止がはいるまで2人の魔法の詠唱が続いた。
残念ながら、この日1日では上達しなかったが。




