本物の治癒魔術師2
普通はあり得ないだろう。
この場に偶然治癒魔術師が居合わせるなんてどんな確率なんだ。
というよりも治癒魔術師はずっと店の方に居るんじゃないのか!?
なんでここに居る!?
冒険者に駆け寄り治療を始めだした女を見ながらそんなことを考えていた。
治癒魔術師というのは自分の店を持ち、大体はその店で患者が来るのを待っているものなのだ。
それなのにどうして……。
いや、そんなことよりも!
俺はひとまず考えるのを止めた。
今はそれよりも優先させることがあるのだ。
このままでは、考えていたこの町でのデビューができなくなってしまう。
あの女には先を越されてしまったがまだ間に合うだろう。
俺は慌てて冒険者達に駆け寄った。
「お、俺も治癒魔術師だ! 手伝うぞ!」
着くと同時にできるだけ大きな声で言った。
まず注目を集める。
顔を覚えてもらわなければ意味がない。
「傷が酷い奴はどこだ! そいつから治療する!」
後は…。
「……そこの君ふざけてるの!?」
俺が治癒魔術師だと名乗り終わると同時に、女が怒りの形相でこちらを睨みながら言った。
「この町に治癒魔術師は私一人しかいないの! 詐欺みたいなのはよそでやって!!」
近くで見た女の顔は怒りに染まっていても整っていると分かるくらいに美人だった。
もしかするとセレーナに匹敵するぐらいかもしれない。
しかし今はそんなことを気にしている場合ではない。
俺は近くに居た冒険者の腕を掴んだ。
「いでぁっ!?」
「ちょっと!? その人は腕がっ!!」
見るとこの冒険者は腕が折れているようだった。
……少し悪いことをしたな。
次からはちゃんと見てから触らないと。
「ほら! ちゃんと見ろよ!?」
そう言いながら力を使う。
すると、折れた冒険者がまるで時間が巻き戻ったかのように治り、体のあちこちにあった擦り傷や火傷の様な跡も消えた。
もちろん治癒魔術が治せるのは生物だけなので戻すのは体だけだ。
服や鎧まで直してしまってはおかしいと思われるだろう。
「……ッ!? なんで……ッ!?」
「おぉ!! 本物かよ!?」
女と周りの冒険者が驚いたように声を上げた。
「これで証明できただろうッ!! 早く案内してくれ!!」
治癒魔術が使えることを実際に見せた。
これでおそらく信じさせることができただろう。
「……あ、あぁ! こっちだ!」
信じた冒険者の一人が呼びながら走りだした。
「……そんな……なんで……?」
「おいあんた! ここは頼んだぞ」
何故かこちらを見ながらブツブツ呟いている女にこの場所を任せるよう頼む。
「……ッ!? ……えっ、えぇ!!」
するといきなり話しかけられたように女は慌てて返事をした。
……さっきまでと態度が違うような気がする。
理由は分からないがとりあえず今はこの場は任せることにした。
俺は急いで走って行った冒険者の後を追う。
「……どうしてこんな時に……?」
走り去る途中、女が何か言ったような気がした。




