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逆行の治癒魔術師  作者: 下木ハク
5/6

本物の治癒魔術師

短いです。

 俺が冒険者達のいる場所に出て行こうとした瞬間、何者かに突き飛ばされた。


「……えっ?」

 

 その衝撃で前のめりになる。

 もし重いリュックを背負っていなければ、バランスをとって踏みとどまることができただろう。


「うおっ!?」


 しかし、それはもしもの話だ。

 俺はそのまま体勢を崩し、顔面から地面に倒れた。


「うぐっ!」


「……カイロスッ!?」


 そして後を追うように背中のリュックが頭に落ちてくる。


「うごっ!?」


「カイロスッ!?」


 凄まじい衝撃だった。

 一瞬、目の前が真っ暗になる。

 速度の乗ったリュックは鼻が折れるほどの威力を持っていた。

 だが、鼻の骨は一瞬で治る。

 怪我は力ですぐに無くなるが、やはり痛いものは痛かった。


「うぅ……っ」

 

「……あの女。よくも……」


 そんな声を聞きながら倒れた体を起こす。

 さっきのいきなり自分を突き飛ばした奴は何だったのか。

 声で女だということは分かったが……。

 俺は頭のリュックを元に戻しつつ顔を前に向けた。


「すいません! ちょっと通ります!」


 目を向けた先には、人混みをかき分けて冒険者達のいる場所に向かっている女が居た。

 髪は金髪。服装は緑と白の上等そうな服を着ている。

 後ろからでは顔が分からないが、遠目から見ても若いことが分かった。

 おそらくだが、自分を突き飛ばしたのはあの女だろう。

 女は急いで冒険者達に駆け寄ろうとしていた。

 あの様子は冒険者の中に家族でもいるのだろうか……。


「……大丈夫? ちょっと待ってて今あいつを同じ目に遭わせてくるから」


 ふと、そんな物騒な声が聞こえた。

 隣を見ると、セレーナが心配そうにこちらを覗きこんでいる。

 その仕草はたいへん可愛らしいが、その瞳は闇のように淀んでおり、俺は自分でもよく分からない恐怖を感じた。


「いや、大丈夫だから! お前のお兄ちゃんはこんなこと気にもしないから!」


 止めないと何かまずい事が起こるような気がし、慌てて立ち上がり妹の手を掴む。

 

「……」


「ほら見ろ、怪我一つ無いだろ?」


 そう言いつつ自分の顔を見せる。

 だが、セレーナはあまり納得していない様子だった。


「…………でも、痛かったでしょ……?」


 確かに痛みというものは何度味わっても慣れることはない。

 しかし、ここで素直に痛かったと答えたら、あの女を同じ目とやらにあわせるのだろう。

 はたしてどんな目に遭わせるのか。

 

「……いや、全然平気だったけど?」

 

「……」


「脇腹攻撃の方が効くね。」


 自分の事のように怒ってくれるのは嬉しいが、少し大げさな気がする。

 まるで過保護な親のようだ。

 本当は俺の方が親の代わりしなくてはならないのだが、これでは立場が逆だ。

 そんなに俺は頼りないのだろうか。

 いや、今はそんなことよりも。


「俺の事は心配しなくていい。それよりもだ」


 このチャンスを無駄にはしない。

 颯爽と現れかっこよくアピールして、華々しいデビューをするのだ。

 この町の治癒魔術師より活躍してやる。


 ……まだ店の場所も決まっていないが。


 まぁ、その事は後で考えればいい。

 とにかく今は冒険者を治療してセレーナが泊まる宿代を稼ぐのだ。

 俺は呻いている冒険者達に目を向けた。


 町の治癒魔術師が来る前に治療しなくては。

 

 突然現れた謎の治癒魔術師に町の人々は驚くだろう。

 一気に有名人だ。

 そんなことを考えニヤニヤしていると、自分を突き飛ばした女が目に付いた。

 人をかき分けてやっとたどり着いたようだ。


 俺はあんなことじゃ気にしたりしない男なので、あの女の家族も治療してやろう。

 そう思い、自分が治癒魔術師だということを大声で言おうと……。

 

「治癒魔術師です! 重症の方から優先して治療しますので案内してください!」

 


 ………………………。



「…………えっ?」


 …………今なんて?


「おぉ!! 頼むこっちだ!」


「はい! すぐ行きます!」



「…………」


「……カイロス大丈夫? やっぱりまだ痛いの?」




「いやぁ、こんなに早く来るなんて運が良い!」


 ……こんなに早く来るなんて運が悪い。


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