第150話 酒に呑まれた英雄たち
俺たちはピクシーたちが朝食を運んでくるのを待ちながら、従者たちからの報告をいろいろ聞きつつ食事をするつもりでいた。
ラトンは何か重要な報告があるらしく、表情を張り詰めさせていた。だがピクシーとゴブリンたちが木製の荷台を二つ運び込んでくるのを見た瞬間、その場で完全に固まってしまった。
口が大きく開いたまま、顎が閉じられないようだった。
明らかに、こんな光景を予想していなかったのだろう。
俺が想像していたのは、パンとバター、それにコーヒーかハーブティーといった、質素で気楽な朝の始まりだった。
だが目の前のテーブルには、二枚の巨大な貝がそのまま山積みにされていた。殻はごつごつと不揃いで、湿った光沢を放ち、その大きさはテーブルのほとんどを占めていた。テーブルの脚まで軋み声を上げていた。
「えっと……シャコガイか?」俺はテーブルの脇で息を切らしている四人のゴブリンに、疑わしげに尋ねた。
彼らはただぎゅっと目をつむり、苦しそうに首を振るだけだった。額には汗が浮かんでいる。「違う」という意味なのか、「分からない」という意味なのか、俺には判断がつかなかった。
シャコガイの貝柱はかなり美味しいと聞いたことがあるが……
「これ、なんだか様子がおかしい……」ユウキが疑わしげに手を伸ばし、指先で殻の表面の筋を撫でた。
「殻の形からすると、片方は牡蠣、もう片方は帆立貝のはずだけど……」サチが好奇心いっぱいに顔を寄せ、鼻先が殻に触れそうなほど近づいて左右を見回した。
「でも帆立や牡蠣が直径二メートルにもなるわけないでしょ!」
ワカナは疑わしそうにそう言いながらも、目を細めてごくりと唾を飲み込む様子から、すでに食べる気満々なのが丸わかりだった。
「変ね……もしかして海の民の同盟からの取引の積み荷かしら?」フェアリーが首を傾げ、羽根を軽く羽ばたかせながら貝の周りを一周飛んだ。
その頃にはワカナがすでにバールを手に取り、マンホールの蓋をこじ開けるように牡蠣の殻の隙間に差し込んでいた。全力で力を込める。
「せーの――」
香りだ!殻の隙間から、焼き牡蠣の濃厚な香りが一気に噴き出し、海の爽やかな旨みが鼻を直撃した。
かすかな潮の香りだけでなく、この牡蠣にはシャンパンのようなほのかな甘さと、軽い燻製の香りまで混ざっていた。見た目はただ火であぶっただけのようなのに、丁寧に味付けされたかのように豊かで複雑な層を感じさせた。
しかもこの大きさ……百人以上は余裕で食べられるんじゃないか?
「お前の仲間も呼んで一緒に食べたらどうだ」俺はラトンを見ながらそう言った。
だが彼は口の端を歪めた妙な作り笑いを浮かべ、視線を横にそらして俺と目を合わせようとしなかった。
「このくさいカルテルの野郎ども――そこの食料部隊二人、そいつらが起こした災難がこれだよ!」
塩昆布がジャガイモを引き連れて大股で俺の寝室に乗り込んできた。塩昆布の顔は緑と赤に交互に染まり、足音の重さで床が震えるほどだった。
ラトンの作り笑いはますますぎこちなくなり、後頭部をかいた。「お、俺たちだけじゃないですって!ゴブリンたちも、あの腸詰めどもも一枚噛んでたんですよ!」
「あいつらは酒が飲めなかったんだ」
ジャガイモが残念そうに首を振った。その声にはどこか諦めが滲んでいた。
「無理やりこの二人に飲ませ続けた結果……」
「急性アルコール中毒――その場で死んじまった!」
塩昆布は怒り心頭で、体についた昆布の葉が震えていた。
飲みすぎて死んだだと?
世界の歴史を振り返ってみても、酒が飲めない英雄なんてどこにいるんだ?
古来、武の達人といえば酒豪だったんじゃないのか?俺は眉をひそめた。どう考えても理解できなかった。
「まあまあ、塩昆布じいさん、そんなに怒らないで」
サチがすぐに塩昆布をなだめようと歩み寄り、軽く肩を叩いた。
同時に、ワカナが目配せをしてきた。その表情と、声を出さずに動かした口の形――言いたいことは分かった。
俺はすぐに察して、慌ててこの二人を従者に変換した。
二人が従者になって立ち上がったところで、ようやくじっくりと姿を確認する余裕ができた。
一人は剃髪していた。額には整然と並んだ受戒の焼き跡がくっきりと浮かんでいた。何度も洗われて色あせた僧衣をまとい、袖は広くゆったりとしていた。立ち姿は地面に打ち込まれたかのように安定していて、両手を腹の前で組み、呼吸は急ぐでもなく緩めるでもない一定のリズムを刻んでいた。
もう一人は顔中を髭で覆い、肌は日焼けで浅黒くなっていた。腰にはシミターを差し、肩から掛けたマントには精緻な幾何学模様の刺繍が施されていた。その眼差しは鋭く、笑うと真っ白な歯並びが覗いた。全身から、戦場を転戦してきた男の獰猛さがにじみ出ていた。
「剃髪と受戒の跡……仏僧のようだけど……もしかして少林寺の武僧か?だから酒を飲まなかったのか。だけどもう一人のほうは……」
「あれはマムルークだ――イスラム世界で有名な戦士集団だよ」ユウキが横から付け加えた。
「彼らの教えでも飲酒は禁じられているの」
それを聞いて、俺はラトンの後頭部を軽く叩いた。
「さっさと謝れ!」
ラトンはすぐさま前に進み出て、少林の武僧の手を握り、必死に謝罪した。額の汗が床にまで滴り落ちていた。
「お気になさらず、恩人殿。あれはこの拙僧が一時的に借りていた米を運ぶ器に過ぎませぬ」少林の武僧は穏やかで落ち着いた口調でそう言い、両手を合わせて一礼した。
少林の武僧が気にしていない様子を見て、ラトンは慌ててマムルークのほうへ向き直り、許しを乞おうとした。だが言い終わる前に、その奴隷戦士に襟首を掴まれ、そのまま帆立貝のところまで引きずられていった。
「これは俺の前の体だ」
彼はシミターで帆立貝をこじ開けた。その動きは鋭く、無駄がなかった。
刃が殻の隙間に滑り込んだ瞬間、再びワインと海鮮の香りがどっと溢れ出した。
彼は一番香り高く、歯ごたえのありそうな部分を大きく切り出し、自分で一口頬張った。歯切れの良い咀嚼音と、頬の筋肉の動きが、その食感の確かさを俺たちに伝えてきた。
「へえ!自分がこんなに美味いとは思わなかったな!」彼は目を見開き、嬉しい驚きに満ちた顔をした。
彼は帆立貝をラトンのほうへ押しやった。
「一口食え。俺の弟分になれ、そうすれば恨みっこなしだ」髭の間から白い歯の笑みがのぞき、こらえきれない笑いで肩がかすかに揺れていた。
ラトンが食べないわけにはいかなかった。おそるおそる一口かじると――次の瞬間、目を輝かせ、まるで電気に打たれたかのように背筋をぴんと伸ばした。
「な、分かるだろ!?もっと欲しくなるはずだ!これがヴァナヘイム最高の料理だぞ!」マムルークはもう一口大きく頬張り、満足げに舌鼓を打つと、少林の武僧のほうへ目をやった。
少林の武僧は巨大な牡蠣を指し示し、慌てない口調で言った。
「食べなさい。あれはただの、主を失った肉塊に過ぎませぬ。腐らせては、ただの無駄というものです」
髭の男と小柄な男はすぐさま食べ始めた。二人は牡蠣の左右に腰を下ろし、歯切れの良い動きで一切れずつすくい取っては、噛むたびに満足げな唸り声を漏らしていた。
俺は二枚の巨大な貝を見つめた。死は彼らから食料部隊としての特徴を完全に奪い去っていた。
もはや手足も顔もなく、完全にただの巨大な食材へと変わっていた――貝肉はきめ細かく、縁にはまだ火であぶられたキャラメル色が残っていた。
「よし、それじゃあ」
俺は自分でも帆立貝を一口食べてみた。肉が口に入った瞬間、甘く新鮮な果汁のような旨みが舌の上に広がった。続いてバターのような濃厚さが押し寄せ、そのすぐ後にワインの香りがほのかに喉の奥を通り抜けていった。かすかだが確かにそこにある香りだった。あまりの美味しさに椅子に座り込んでしまい、思わず感嘆の声が漏れた。
「すごいな、お前、本当に美味いよ」俺はマムルークに笑いかけた。
「はっ!妙な褒め言葉だが、まあ喜んで受け取っておこう!」マムルークは胸を叩いて豪快に笑った。髭にはまだソースが少しついていた。
他の面々も最初は疑わしげに一口二口味見していたが、やがて我慢できなくなり、我先にと口の中に詰め込み始めた。
ユウキは一口また一口と食べ進め、食べるたびに目が輝いていった。ワカナは素手で貝肉を掴んで口に押し込み、噛みながら「これ、うますぎでしょ」とぼそぼそ呟いていた。サチはゆっくりと味わい、目を閉じて一口一口を長く楽しんでいた。まるであっという間に食べ終えてしまうのが惜しいかのようだった。
「この牡蠣の縁のところが特にいいわね――カリッとしてて、燻製の香りがほんのりするの」ユウキは噛みながらそう言うと、我慢できずにまた大きな一切れを掘り出した。
「帆立側のほうが甘みが強くて、真ん中の部分がゼリーみたいに滑らかなの!」ワカナも食べる手を止められず、口の端にソースがついていた。
フェアリーは貝肉の縁まで飛んでいき、小さな手で一切れをちぎった。顔をくしゃっとさせながら食べ、満足げな唸り声を漏らした。羽根も嬉しそうに震えていた。
食事を終えると、俺は口元を拭いながらラトンを見た。
「それで――お前がさっき慌てて俺のところに来たのは、この二人の英雄を飲みで死なせたことを白状するためだったのか?」
「ち、違います……それは……」ラトンの表情が再びさっと張り詰めた。先ほどの気まずさは吹き飛び、代わりに押し殺した焦りが浮かんでいた。
「じゃあ何だ?」
「パリャールカ・ファミリーの者が、あなたを探しています」
「何があった」
「マルコが逃げました」




