第125話 台所の外
上に通じる通路は、もともと僕が大部隊を通すために掘らせたものだった。
その同じ通路が、ネズミたちにも便利な侵入経路を与えてしまっていた。
グラトン・ジャイアントラットの群れが、広げた通気口を行き来したせいで、入口周辺の土はいっそう脆くなっていた。
アリの巣の天井全体が今や、かろうじて自重を支えているような状態だった。下から見上げると、いつ崩れ落ちてきてもおかしくない圧力が、ぼんやりと感じられた。
どうせなら、ここまで来たら最後までやってしまおう。
僕は天井ごと吹き飛ばすことにした。
ミストキャノンを発動し、風霊鳥の姿に変身して、霊感と水属性攻撃の両方を底上げするあの歌をもう一度詠った。
――『ヴァルナの水の伎楽』発動。
霊感ブースト倍率――レベル²
35 × 21 × 21 = 15,435
水属性効果――レベル³倍率
35 × 21 × 21 × 21 = 323,535
三十万を超える水属性攻撃ブーストが、ぎりぎり自重を支えていたアリの巣の天井に、まっすぐ叩き込まれた。
一発でMPはそれほど食わなかった。
でも、上の土はあっという間に水砲でごっそり吹き飛ばされた。
穴が広がっていく速度に、僕は思わず動きを止めた――一発でここまで効くとは予想していなかった。
頭上から土と岩が轟音とともに降り注いでくる。僕は急いで風の魔法で脇に押し流し、部下たちが後ろに下がった。
瓦礫がアリの巣の床に叩きつけられ、もうもうたる砂塵が立ち昇った。
空!
空が見えた!
その瞬間、アリの巣の天井全体がぱっと開いた。陽光が裂け目から差し込んできて、薄暗く土黄色だった地下を、きらめく金色に染め上げた。
僕の周りの食料部隊から歓声が上がった。何人かは光に向かって手を伸ばし、顔には久しく見ていなかった表情を浮かべていた。
害虫たちのほうは、ちょっと居心地が悪そうだった――そのほとんどが本能的に光を嫌うのだ。
ゴキブリは物陰へ走り、ヤスデは丸まり、ナメクジは巣の壁に張り付いて、明るいほうへは一歩も動こうとしなかった。
「たまには日光に当たったって、死ぬわけじゃないだろ!」
僕はゴキブリの一隊に、鋭い口調で偵察の命令を出した。
言葉を口にした瞬間、自分は本当にリーダーの器じゃないなと気がついた。
彼らからしたら、僕はちょうど、人をすり潰すような職場のブラックな店長と変わらない口ぶりだったろう。
でも、どうしろっていうんだ?
こうやって彼らに無理を強いないと、物事が円滑に進まない。
ちっ。こんな思考回路じゃ、一ヶ月前に僕に十二時間労働を強いてきたあのクソ店長と、なんら変わらないじゃないか。
ゴキブリには発声器官がないから、彼らの不平を耳で聞き取る術はない。
でも、入口の前で何度も身を引こうとしているのを見ていれば、今の彼らの気持ちは大体察しがついた。
「行きたくないのは分かってる。でも、これだけは押し付けさせてほしい――みんなのためなんだ。ごめん」
ゴキブリの触角がピクピクと動いた。それから、彼らは動き出した。
理解してくれたかどうかは分からないけれど、口に出したことで、僕自身の気持ちが少しだけ楽になった。
仕方ない……僕が最低だ。
ついでに、アリの一隊も派遣して、入口周辺を制圧させることにした。
大部隊は秩序を保ちながら、アリの巣の外へと進み出ていった。
通気口を登り抜けて、僕たちが辿り着いたのは――広大な森の縁だった。
外に這い出した瞬間、草原の方向から風が吹いてきて、青草の匂いを運んできた。
僕は深く息を吸い込んだ。鼻の奥がちょっとつんとした。
あの息苦しいアリの巣に長い間いたあとで、この一息は、まるで澄んだ水を一杯飲み干したみたいだった。
食料部隊が次々と外に登り出てきた。みんな顔を上に向けて、驚きと喜びの入り混じった表情を浮かべている。
ビーツは食事ナイフを鞘に収め、芝生の上で一回転して、口を開く前から顔いっぱいに笑みを浮かべていた。
ニンジンは地面にしゃがみ込んで、手で土を撫で、指で草の葉をつまんで、匂いを嗅いだ。
台所と地下の戦いで少しくたびれて見えていた食料部隊が、この陽光の下で、なぜかまた生気を取り戻していた。
通気口から登り終えて、僕は服の土を払い、背筋を伸ばし、周囲をざっと見回した。
片側は森――巨木の森だった。
ここの木は一本一本、僕に漸の台のヘックスバインダーを思い出させた――あの絡み合い、四方に伸びる根の塊。中に何が潜んでいるか、踏み込まなければ絶対に分からない、あの感じだ。
木々の天蓋は視界を遮るほど高く伸びていて、その密集した深緑の陰は――台所の中で縮小された僕にとっては、まったく未知の世界に見えた。
反対側は開けた川の谷間だった。
浅く澄んだ小川が緑豊かな草原を曲がりくねって流れ、陽光に細かい光の粒を散らしていた。
そう遠くないところに巨大な建物が立っていて、方向からして、それはついさっき僕たちがいたあの台所のはずだった。
この角度から見ると、外壁は色褪せて、木が剥がれていた――まるで廃屋の納屋みたいな佇まいだったけれど、今の僕たちの大きさからすれば、すでに巨大な城だった。
「外に出るの、本当に久しぶり」
ユウキが僕の隣に立ち、顔を上げて空を見ながら、口元をわずかに緩めた。
彼女は勇気の剣の柄を握り、それから手を離した――その仕草は、まだ自分がここにいることを確かめているように見えた。
「うん」
僕も顔を上げた。
理由は分からないけれど、この空を見ていると、息が楽になった――アリの巣にいる間、自分がどれだけ張り詰めていたかにも、気づいていなかった。
ワカナは僕たちの後ろにポケットに手を入れて立っていた。顔は上には向けていなかった――視線はまっすぐ前方の草原に注がれていた。
彼女は持ち直したようで、その目はアリの巣にいた時より、ずっと鋭くなっていた。
あのネズミの群れは、どこへ向かったんだろう?
僕は地面にしゃがんで、足跡を調べ始めた。
ところが、あの巨大ネズミときたら、あれだけの大きさにもかかわらず、足の運びが軽すぎて、草の上を漂うようにしか動かなかったらしい。草の葉が踏みつけられた跡は、ほとんど残っていなかった。
「マ、マスミ!何してるの?」
ワカナは僕が何をしているのか、すぐには分からなかったらしい。ネズミへの恐怖のせいで、声が少し詰まっていた。
ようやく地上に出られたのに、彼女の顔色はまだ完全には戻っていなかった。
「ネズミがどっちに行ったか調べてるに決まってるじゃん。ただ……足跡がないんだよ。どうやって追いかければいいんだ?」
ワカナは思いっきり白目を剥いた。
「あんた、雷にでも打たれたの?頭、焼き切れた?」
「アリの巣にいた時からずっと、アワアワ銃で人を探してたよね?」
ユウキが取りなすように口を挟み、ワカナの背中をそっと叩いた。
正直、ちょっと腑に落ちなかった。
僕だってアワアワ銃が使えるのは分かっていた。ただ、ずっと誰かに見られているような感覚があったのだ。
僕たちが撃った一発一発の泡に、それと対になる複製が、僕たちの動向を追っている誰かの手の中に流れていっているような――そんな感覚だ。
「だったら、もういいじゃん」
ワカナは僕が説明し終わるのを待たずに手を振った。「もう使っちゃってよ。考えすぎても何も進まないんだから」
彼女は完全に立ち直っていた――さっきまでしどろもどろだったのが、もう「ごちゃごちゃ言わずにやれ」モードになっている。この切り替えの速さは、いつも通りだった。
分かった。もう少し運命に身を任せてみることにする。
サチの予言がある以上、僕たちは大丈夫なはずだ。
僕はアワアワ銃を構えた――
「老昆布、焼きジャガイモ、サチ――踏ん張って、もうすぐ見つけるから!」
三つの泡を撃ち出した。
三つの泡は確かに同じ方向に漂っていった――川の谷間のほう、あの小川を伝って遠くへと。
「よかった」
ユウキは三つの泡が向かう方向を見つめ、声を和らげた。
「みんな同じ場所にいる」
「食料部隊の救出とサチとの合流、両方一度に片付けられる」
僕は本気で安堵の息を吐いた。
ワカナはもう、ネズミの逃げた方向から、泡が向かった川の谷間のほうへと視線を移していた。
「行こう」
彼女の声は、ほとんどいつも通りに戻っていた。「これ以上喋っても無駄。直行するよ」
「先にゴキブリを偵察に出して」
ユウキが言った。
「分かってる」
僕は答えた。「今回は先に偵察を出してから、本隊を動かすよ」
前回の教訓はまだ生々しい――この草原がどれだけ開けていようと、もう一度部隊を一斉に突っ込ませるわけにはいかない。
フェアリーが僕の傍の草の上にそっと降り立ち、手を伸ばして草の葉に触れた。
「……ようやく、外に出られたね」
彼女は小さく、この旅では珍しい安らぎを声に滲ませて言った。
僕は彼女を見て、何も言わずに頷いた。
ここまでの道のりで――一番大変な思いをしたのは、彼女だった。




