第三十四話 策
生き残るために俺は八鷹に作戦を伝え、強引に協力させる。今回の作戦は八鷹に全てがかかっていると言っても過言では無い。
「八鷹、準備は良いか?」
「ああ、任せてくれ」
八鷹は自らの役目を果たすべく、先程とは違う真剣な面持ちでゾンビメタルの動向を見ている。
一定の感覚で金属音が響き、ダンス達は非常に酷い姿に変えられていく。何かが砕けた音に水っぽい音が混ざり、鎧が剥がれ装備に耐久力がある事を理解させられる。
彼らは非常に酷い状態ではあるが、気絶している事がせめても救いだろう。
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DAY【1092/1095】
Time【12:30】
DEATH【68/1000】
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作戦実行前に時間を確認する。
【通天閣商会】と【赤い森の塔】の会議をしているはずだった時間帯だ。梅梅と神丸は目覚めて参加しているだろうか?遅刻している俺を心配して探していたりは…しないな。
この作戦を成功させて、必ず皆の元に戻って遅刻した事を謝ろう。
俺は決意を改めると自分のやるべき事に集中する。
八鷹のカウントが始まった。
「10.9.8.7.――」
『レベル1 速度上昇!』
「6.―――」
『レベル1 速度上昇!』
数秒で効果が切れる速度上昇を八鷹と俺にかけ、八鷹を先導する様に俺は走る。
俺のSPはもう空だが、覚悟を決める。
目標は、メタルゾンビ!!
「5.4.―――」
八鷹のカウントが終わる前にダンスの背に大穴が空き血飛沫が舞う。
「3.―」
ダンスは背中から地面に倒れ、抱き抱えていたリタが真っ赤に染まってあらわになる。
彼女を守る者はもういない。
すまない、二人とも…。
ゾンビメタルは同じ感覚で壁打ちをするようにリタを弾き飛ばす。
酷く耳に残る鈍い音だ。
「―死ん」
「―。―」
肉片にまみれたゾンビメタルと一瞬目があい、俺は咄嗟に両手を前に出す。
「生命の灯火、今再び燃え盛れ『ハイリザレクション!!』」
一面が真っ白な光に覆われる中、俺の腕がへし折れるのが見えた気がした―――
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ん?
「―――?」
んん?
知らない天井だ。
俺は何か心地良いところに寝ているらしい。
「――あれ?布?」
なんだ?
もしかして、ベッド?
ベッドという事は、そうか、夢だったんだ。
「ふぅ…」
俺は瞼を押さえようと手を上げようとした時、何か硬い壁にぶつかる。
ん?
俺は視線を天井から横にずらすと、そこには…
「…ゴッド」
「…さんをつけろよ、ねぼすけ野郎」
「…え?」
どうやら俺は生きて帰っては来れたらしい。
「おーい!!
起きたぞーーー!!!」
神丸の大声が響き渡り、騒々しい音が聞こえてきた。




