第三十三話 八鷹
「あんたは、自分の命をもっと大切にするべきなんだ!」
いや、おま、今そんな事を言う時か?!
俺に逃げる判断をさせるために今まで黙っていた死者についても明かしたのだろうが、納得がいかなかった。
「ちょっと待った!整理させてくれ!」
何か言いたげな八鷹を制して俺は急いで考えをまとめる。
①目の前にピンチのダンスとリタがいる。
②先程からの死者3名はネクロを誘導していたアストル達のパーティーだった。
③俺と八鷹にはダンス達もアストル達も助けられる方法が無く、助けに入ろうものなら無駄死にする。
前回ゾンビメタルを倒したターンアンデッドを使用すれば、ダンスとリタは救えるかもしれない。
ただし、上手くゾンビメタルを倒してレベルアップしたとしてもゲームと違いHPもSPも回復しないため俺はすぐにホワイトアウトだ。
気絶者が2名から3名に増え、残された八鷹が取れる行動はなんだ?
アーロンを2人で運ぶ事さえ大変だったのだ。八鷹が全員を無事に運ぶ事はできないだろう。
なんだこれ…俺が最初にパイクを見つけてどうする事も出来ずに動けなくなっていたちょっと前と状態が一緒じゃないか。
あの時はアストル達が来てくれたが、そう都合良く誰かの助けが来るとは思えない。
「…この救出作戦に入る前、話があると言ってただろう?」
「あ?あぁ。それが何か関係あるのか?」
俺のまとまらない考えを整理する前に八鷹が何かの覚悟を決めたような顔で話はじめた。
「俺は…友達と彼女を、デスゲーム初日に見殺しにしたんだ」
「…」
絞り出すように話す八鷹に俺の胸はしめつけられる。
「酒場であんたらのパーティーを見た時、俺はあんたらを殺したくなる気持ちも湧いたが、俺自身も許せなかった」
「…」
「酒場を出て手当たり次第にモンスターを殺し、俺の番が来るのを願っていた時、アストルさん達に助けられた」
「…」
「だから俺はここで最後まで見届ける、あんたはソロプレイなんかせずにパーティーでしっかりと自分の仲間達を守れよ」
「…そういう事か」
「あぁ、だから早く逃げろ。放置してきたアーロンさんを頼む」
八鷹の心の傷をわかるとは言えない。理解しようとする事はできても、今の八鷹の意志を変えられる言葉を俺は持ち合わせてはいない。
「…ダンスさんのHPがそろそろ無くなる」
「!?」
「そうなると次はリタさんにヘイトが移り、次に俺達だろう。俺が少しでも時間を稼いでるうちに逃げてくれよ」
八鷹はそう言って初めて俺を見て笑った。
鳥肌が立った。
なんなら吐き気もした、なんて顔するんだよ。
「…八鷹が死ぬのが早かったら俺も死ぬじゃないか」
「そうだよ、だから早く逃げるんだ」
「…俺はレベルが低いし、力も無いから誰かを守れるなんて偉そうな事は言えない。だけど死ぬつもりも無いし、誰かを見捨てるのも嫌なんだ」
「あぁ、誰も責めないよ、むしろここまで付き合ってくれてありがとう」
「勘違いしないでくれ、俺は逃げない」
「は?」
「俺は、逃げない!!」
「ば、馬鹿なのか!?」
八鷹の覚悟を決めていた顔が崩れ、顔から血の気が引いている。
「馬鹿なのは八鷹、お前だよ!!
良いから俺の話を聞いて協力しろ!!
俺は俺が生き残れる話をするんだ!!!」
助けは来ない。
ゾンビメタルに追いつかれれば俺も死ぬ。
この作戦が最善なんだ!!
俺は八鷹に作戦を伝え、その時を待った。




