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第三十二話 決断

『シールドパリィ』


 俺には見えない攻撃をダンスは弾いていた。


「ダンスさん!反撃は!?」

「見えんから無理だッ!!」


 という事は、カウンタースキルを使えてる今は良いが、SPが無くなったら攻撃を受け止める手段が無いと言う事か。


 俺もターンアンデッドを使うにはSPが足りない、無理に使うと気絶してしまう。


 どうするべきか。


 その時、不吉にも死者のカウンターがまた1人増えた。


―――――――――――

DAY【1092/1095】

Time【12:00 】

DEATH【67/1000】

――――――――――― 


「八鷹!ベル!

 アーロンを連れて先に出口まで行ってくれ!」


 ダンスはゾンビメタルを弾きながら叫び、俺も叫んで返す。


「リタさんは!?」

「アーロンを置いたら戻ってきてくれ!!

 それまではなんとか耐える!!」

「八鷹!行こう!!」

「…わかりました!」


 アーロンを八鷹と協力して運ぶが、意識の無い人間を運ぶのはこんなにも大変なのか!?


 途中泥で足をとられながらなんとか出口までたどり着く。


 アーロンをこのまま置いていくのも気になるところだが、攻撃による気絶ならホワイトアウトより回復も早いはず。


 俺達はアーロンを置いてダンスの元へ急いだ。


―――――

―――

――


 向かう途中、また1人死者のカウントが増える。こうも連続でカウントが続くとアストル達ではないのかと疑ってしまう。


「八鷹、辛い事を思い出させて本当に悪いんだけど、1つだけ聞いても良い?」

「…なんだ?」

「パーティーメンバーが亡くなると、パーティー欄の表示はどうなるんだ?」


 八鷹は苦虫を噛み潰したような表情をしながらも答えてくれる。


「…赤く表示されて、しばらく立つと消える」

「ありがとう、何か変化があったら対策をたてながら助けに行こう」

「…そうだな」


 表示が消えるまでにリザレクションをかければ生き返り、表示が消えたら死者のカウントが増えるといったところか。


 放置してきた神丸と梅梅の状態を確認してみると問題なく生きているようだ。


「アストルさん達の無事は確認できてる?」

「…もちろんだ、急ごう」

「了解」


――

――― 

―――――


 ダンスと別れた辺りまで戻ってくると相変わらず金属音が響いているが、ダンスの姿が見えない。


 どこだ?


「…ベル、逃げる準備を」

「え?」


 八鷹は唇を噛み締めながら地下墓地の一角を指差す。そこにはゾンビメタルがダンスの背中に何度も体当たりをしている姿があった。


 あぁ……、どうして、こんな。


「リタさんは?

 まさか、さっきの死者カウントで?」

「いや、ダンスさんに守られてる」


 良く見るとダンスは何かを抱え込むような格好だ。


 カウンタースキルを使うSPがなくなってから、鎧をたよりに耐えながら守ったのだろう。


「くそ…ダンスさんとリタさんのHPは?」

「2人とも半分くらいだ。ベルのSPは?」 


 こんな状態だと言うのに、俺のSPはほぼ回復していない。


「ヒーリング1 回分くらい、八鷹は?」

「俺もほぼ空だ」

「剣でゾンビメタルを倒せる?」

「無理だ…」


 クソ、どうすれば。


 アストル達の帰還を待つ?

 アーロンが目覚めるのを待つ?

 ダンスのHPがギリギリまで待ってみるか?


「ベル、1つ話しておく事がある」

「なに?」

「さっき蘇生してくれたパイクとロードナイト…。あと、アストルさんについて行ったハイクレリック。彼らがさっきからの死者だ」 


 俺はどんな顔をしていただろう。

 八鷹がすまなそうに視線を逸らした。


「動揺させないためにあえて黙っていた」

「え」

「俺だけじゃない、ダンスや皆も同じ意見だった。本当に、あんたを巻き込んですまなかった」


 …ダンスが全員に目配せしていたあの時か?

え、いや、死んだ?死んだのか?


「あんたは、ギルドも違うのに良くやってくれた。だから、後は任せて出口へ向ってくれ」

「え??」

「あんたは、自分の命をもっと大切にするべきなんだ!」


 いや、おま、今そんな事を言う時か?!


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