空の上
「大丈夫?」
「大丈夫です。ちゃんと安定していますよ」
「いや、そっちもなんだけど意識の方」
「顔を見ないようにしているので大丈夫です。できればそのまま前だけを向いていてください」
当初の予定通りカリストを連れて空を飛行中。体勢に関してはお姫様抱っこ以外選択肢がないので納得してもらって飛んでいたのだが、カリストが静かなので前を向いたまま声をかけてみる。
前を向いたままなのは抱く前にカリストに言われたからだ。『あなたの顔は私にとって兵器と変わらないのでなるべくこっちを向かないで前を見ていてください』と。
ずいぶん大げさなとは思ったが、後ろでシャーリーも首がもげそうな速度で頷いていたので否定はできなかった。
「静かだから気絶してたのかと思った」
「ああ・・・すいません。なんというか、これが仮想世界だとわかっていても、人の身で空を飛ぶということになんというか感動がありまして・・・言葉が出ませんでした」
「なるほど」
言われてみれば当然か。どれだけ技術が進歩しても、人の身だけで空を飛ぶなんてできやしない。人の体がまず持たないから。
だけどこの世界では空を飛べる。自分の意志で自分の行きたい場所へ。それはとても素晴らしいことだろう。空を飛ぶというのは、人類の夢の一つであったはずだから。
ライト兄弟によって飛ぶこと自体は叶えられたけど、それだって人だけの力ではなかった。
「ルピナスさんも始めて空を飛んだときは感動しましたか?」
「私?私は・・・」
初めて飛んだとき私は何を思っただろうか。確か始めて空を飛んだのはリバーバードからスキルを収穫したときだ。
「目の前が血まみれだったから感動とかなかったかも」
「血まみれ・・・?」
そうだ。私の時は勢いのままリバーバードに突っ込んだものだから、臓物や血で感動とか全くなかった。
なんなら羽がしまえなくて邪魔だとすら思っていたし。
「ま、まぁその話はいったん置いておきましょう。それで、巨イカは見つかりそうですか?」
「もう少し飛び回ってたら見つかるかな」
「わかりました」
経験的にこのまま5分くらいこの辺りをうろちょろしていたら見つかるはずだ。
「カリストが戦ってみる?」
「私は戦う手段がないのでお任せします」
「わかった。とりあえず10体くらい倒そうか」
「お願いしますね」




