頑張れ!運営さん! 2
「すんませんリーダー。やらかしました」
「急にどうした」
とある会社のとある一室で休んでいたリーダーに、何やら不穏なことを言いながら突撃してくる開発の人間がいた。おなじみ『Original magic online』の運営である。
「何したんだ?」
現在『Original magic online』の世界は第一回公式イベントの最中だ。なにやら運営の想定よりも悲惨な状況になったいるようだが、そちらはどうしようもないので気にしていない。そもそも関与のしようがない。
だって運営が水中行動用の魔法を配布するわけにはいかないだろう。それをしたところで面白くもならない。
『Original magic online』は同じ効果の魔法でも創る人によって詠唱が変わるのが面白いのだ。それを運営が魔法を配布して全員共通にしてしまうなんて、興醒めもよいところである。
で、そんな状況なのでこちらの仕事はイベント後のアップデートやメンテナンス、サーバー強化に集中している。そもそも普段から世界管理AIに管理はほとんど任せていてこちらの仕事はないのだが、だというのにミスがあるとは。一体何をやらかしたのか。
「諸々の調整とか大体終わったので雰囲気が緩んでたんですよ。で、新人がチョコを買ってきたんです。終わった記念って言って。それ、だれも気付かなかったんですけどお酒が入ってたみたいで。」
「もう聞きたくなくなったんだが」
「ダメです聞いてください。で、酔っぱらったその一人が『もっと派手にやろうぜ!』と言い出しまして。」
「レイド用の巨イカでも出したか?」
「いえもっとひどいです。第5回くらいのイベントボスとして予定していた『遍く呪いに賛歌と祝福を!』を出しちゃいました」
「何やってんの??」
『遍く呪いに賛歌と祝福を!』は呪いを統べる恐怖の龍として作られたモンスターだ。これからダンジョンや各種イベント等で匂わせて、いざ満を持して登場させプレイヤーを盛り上げる予定だった。それをまだ一回目のイベントで出してしまったとは。
「どうすんだよそれ・・・」
「出すの早めちゃいます?」
「早めて出しても勝てねぇだろ。レベル足りなかったら見ただけで発狂するんだぞ・・・まて、見た奴は何人いる?」
「一人です。出た場所が島の中心だったので、たどり着いているプレイヤーがほとんどいませんでした。ちょうど雲も出ていましたし」
「ならいいか・・・見た奴が一人だってんなら広めようとしても見間違いで済むだろ」
「ちなみに見つけたのはお花の子です」
「・・・本人が配信してるわけでもないし、多分大丈夫だろ」
言わずもがなお花の子とは『ルピナス』のことだ。ゲーム内にルピナスが存在するため、混合しないようお花の子と運営の間で呼ばれ始めた。
「あ、でも『狂乱』のせいでゲームをやめられるのは困るな。大丈夫そうか?」
「むしろ闘争心に火が付いたみたいです。私が倒したいって思ってるみたいですよ」
「ならいいか・・・とりあえずやっちまった奴は反省させんとな。『遍く呪いに賛歌と祝福を!』のことは後で考えるぞ」
「追い込み過ぎないでくださいよ。数年前からかなり厳しいんですから」
「ミスはちゃんと叱らんと成長しないと思うんだがなぁ・・・これも俺が年寄りだからか・・・」




