泳ぎ
とうとうこいつを着る時が来た。できれば着たくなかったしこれから先も一生着たくないが、ゲームだし、必要だし、周りに誰もいないから着るのだ。
そう、子供にしか許されないこの水着を。
【装備】スクール水着 耐久+10、知力、精神力+30
どこか懐かしさを感じさせる水着。布が薄く、攻撃には注意しなければならない。真ん中に大きく『るぴなす』と書かれている。
はい。これを装備したくないと思う私の気持ちをわかっていただけるだろうか。二十歳超えてるんだよこっちは。許されないだろう、私が着るのは。
体型的に妙にしっくりくるのが腹立たしい。まったく。
「くすぐったい?」
装備をスク水だけにして海に脚を入れる。指の間に入り込んでくる砂粒のせいで少しくすぐったい。
さらに歩いて腰あたりまでつかると、足裏の感触が変わった。柔らかいクッションでも踏んでいるような感覚だ。海水の温度が冷たすぎずちょうどいいのも相まって気持ちいい。
潮風の匂い、押し寄せる波、雑音のない自然に近い場所特有の静けさも相まって動く余力を奪われてしまう。もう少し、このままで。仮想とはいえ初めての海なんだし、もうすこしゆったりしていてもいいでしょ。
特に時間を図っていたわけではないけど、10分もすれば満足した。そもそもまだ泳いですらいないのだ。
まぁ泳ぎ自体は何とかなるだろう。学生時代に授業で泳いだプール以来の水泳ではあるが、人並み程度には泳げていた。
膝を曲げ、力を入れて踏み出す。初めは泳ぐだけだ。潜るのは慣れてから。
少し怖いけど、見えないと困るので目を開ける。異物感とぼやけた視界が気持ち悪いけど仕方ない。1分もすれば多少はましになった。下を見ると大量の砂におそらく小魚のものと思われる骨。それと少し遠くに紫がかった色のぶよぶよした何か。
足をバタバタさせながら何かに近づく。泳ぎ方は適当だ。誰かに評価されるわけじゃないのだから適当でいいだろう。ステータスのおかげでかなりの速さがあるし。
すぐに近くにこれたので見てみても、まったく何かわからない。視界がぼやけてるせいか、〈鑑定〉もうまく機能しないし。仕方ないので一度顔を上げる。
「ブハッ!」
あぁ、よく見える。目に入った水が気持ち悪い、後で何か対策を立てないと。それに仕方ないことだけど、鼻や口に入ってくる水が鬱陶しい。水から上がった瞬間は気持ちいいんだけどね。
とりあえず泳ぎ自体に問題はなさそうだ。ちゃんと進めたし、何ならこちらの方が泳ぎやすいくらい。息も問題ないし。何も苦しくなかった。
「ん?」
息が問題ない?学生以降全く運動をしていなくて外にもほとんど出ていない私が、ステータスがあるとはいえ数分泳いでも息が続くのか?
もしや、ここでも私に楽をさせてくれるのか。〈魔力体〉。




