呪い
おはようございます。16日目。早速領主館に来たんだけどシモンさんが準備中だそうで、その間は応接間で待機だ。流石貴族。ソファーはふかふか、壁に飾られている絵画もおしゃれ、部屋自体もいいにおいがする。
特にソファーがすごい。初めて経験するふかふか度がある。後で何の素材で作られてるかシモンさんに聞こう。マイホームを作った時に置きたい。ただの綿じゃないと思うんだけど。
「ああ遅れてしまったね。すまない。いろいろ調べていたんだ」
「大丈夫。何かわかったの?」
「とりあえず、妻に憑いていた呪いからだな。結論から言うと何もわからなかった。そもそも呪いとはどういうものか知っているか?」
「ほとんど知らない。昨日使った怨念の塊もダンジョンで手に入れただけだから」
「そうか。ではそちらから話そう」
シモンさん曰く。呪いとは簡単に言えばアンデッドを作成するのに使われる思念らしい。特殊な儀式をすることで〈死霊術〉と共に得ることができ、これが生物に侵食しきるとアンデッドになってしまうのだそう。
そのため〈呪い〉とは〈死霊術〉とセットなのだ。そして〈死霊術〉専用のスキル。だがキーラさんにもシモンさんにも、〈死霊術〉を使う知り合いはいないらしい。というか〈死霊術〉は禁忌だから、使えることがばれた時点で即処刑らしい。そして夫妻の知り合いには処刑された人はいないそう。
そもそもキーラさん、ここ数か月エラちゃんのお勉強に付き合っていてお庭以外で外に出ていないらしい。そのためどこで〈呪い〉をかけられたのか不明。とりあえず今は体調に問題がないそうなので、もうすこし様子を見て大丈夫そうなら教会に確認してみるそう。教会には〈呪い〉についての専門家がいるらしいから。
「同じような事例がほかの町でも起きてないか確認しようと思っていてね。これから忙しくなりそうだ」
「あ、それなら私はもう帰った方がいい?」
「まさか。ルピナス嬢は恩人だからね。何かあったらここに来てくれ。できる限りの便宜を図ろう。それとこれを」
そういったシモンさんが出したのは何かの絵柄が書かれた短剣。刃がのっぺりとしてて武器としては使えなさそうなんだけどこれは?
【大切なもの】ぺジオ家の短剣
ペジオ家の紋章が描かれた儀式用の短剣。ぺジオ家の信頼の証。
「我がぺジオ家の紋章が入った短剣だ。ルピナス嬢の身分を証明するのにも使えるから、何か問題が起こったらこれを出すといい。王都にある貴族専用の店なんかにもそれを見せれば入れる」
「いいの?」
「かまわないさ。悪いことには使わないだろう?」
「うん」
「なら大丈夫だ。これでも人を見る目には自信があってね。さて、時間を取らせて悪かったね。たまにでいいからまた来てくれると嬉しい。エラも会いたいといっていたからね」




